+ ニュースサーチ〔健康診断〕




★ 健康診断見直しへ 厚労省、女性疾患追加やX線廃止検討 「日本経済新聞(2023年9月3日)」より
/
厚生労働省は働く人が会社で受ける健康診断の内容を見直す。女性に特有の疾患を問診に加える。結核の把握を目的に始まった胸部エックス線を廃止し、心電図は年齢が高い人のみの受診に絞るといった方向で議論する。女性就業率の上昇や疾患の変化に対応し、効果を高める。

今秋に新たな検討会を立ち上げる。健診項目は省令の1つである労働安全衛生規則に定められており、早ければ2025年度から項目を順次変える。見直しは07年以来で、廃止の検討は労働安全衛生法の施行以来初めてという。医学的根拠やデータをもとに審査し、追加や廃止、縮小を決める。

追加を目指すのが女性疾患に特化した検査だ。月経困難症や更年期障害に関する事項などを想定している。症状に個人差があることから、まずは医師の問診に追加する方法が有力だ。高年齢者向けに骨密度の測定を追加することも議論する。

胸部エックス線は廃止を議論する。結核の可能性を見るために1972年の同法施行時から行ってきた。肺炎や肺がんの有無も調べているが、もともとの目的である結核が大きく減り、予防の観点での意義は乏しいとの見方がある。
+ ...
不整脈や心筋梗塞の恐れがないか見る心電図検査も、若い世代では異常が見つかるケースが少ないと指摘されている。今の健康診断は基本的にすべての年齢で同じ検査をしているが、心電図など一部の検査は一定の年齢以上を対象とすることを議論する。

健康診断は事業者が実施しなければならず、労働者は受ける義務がある。正社員に近いパート・アルバイトも対象となる。総務省の労働力調査によると正社員は2022年に3588万人で、毎年これ以上の人数が受診しているとみられる。

日本では女性や高齢者の働き手が増えている。健康診断は病気を早期に見つけて従業員の健康を保つために実施する。働く人の変化や疾病の移り変わりに応じて見直す必要がある。

政府は女性の健康課題について「社会全体で共有し解決していく必要がある」(加藤勝信厚労相)として対策を進めている。24年度には女性特有の疾患の治療・予防研究を担う「ナショナルセンター」を設立する。健康診断での検査が広がれば、女性疾患への社会的な認知が高まる期待もある。

企業による健康診断を義務付けている国は世界でも珍しい。一方で特に20〜30代には結果を確認しない人も多い。年齢で検査項目を変えたり女性疾患を加えたりすることには、個人が健康を顧みるきっかけを増やす狙いもある。

ニッセイ基礎研究所の村松容子主任研究員は「企業に義務付けているからには、より効果があるように見直すのは必要なことだ」と話す。村松氏によると生活習慣病につながるメタボリックシンドロームを判断する腹囲の数値基準が女性では甘く、早期発見に寄与していないという。









.
最終更新:2023年09月06日 18:07