━━━━━━━━
★ユーロの暗雲
━━━━━━━━
欧州のギリシャで、再び国家破綻の懸念が増している。11月末に中東ドバ
イの政府系企業が事実上の債務不履行を宣言し、新興市場諸国の債券に対する
国際信用が全般的に落ち「次はギリシャが危ない」という見方が市場に出た。
12月8日、債券格付け会社のフィッチが、ギリシャ国債の格付けをAから
BBB+に格下げした。A未満への格下げは10年ぶりで、ギリシャの格付け
はユーロ圏で最低となった。格下げを機に、ギリシャからの国際資金逃避が起
こった。ギリシャ政府は財政緊縮策を発表したが、ほとんど効果はなかった。
12月23日には、ムーディーズもギリシャ国債を格下げした。S&Pもすでに
ギリシャを格下げしている。
ギリシャ政府の財政は今年度、GDPの12・2%にあたる単年度の財政赤
字となる。ユーロ圏諸国はユーロ加盟時に、毎年の財政赤字をGDPの3%以
内におさめることを約束しているが、ギリシャの赤字は上限の4倍だ。ギリシ
ャ政府は、2012年までに赤字をユーロ圏基準の3%以下に減らす計画を発
表した。だがギリシャは以前、同様の計画を発表して守らなかった過去がある
ので、投資家の信用はほとんど得られなかった。ギリシャの財政赤字は、累積
ではGDPの95%まで増えている。
ユーロ圏では、政府の今年度赤字のGDP比が大きい国がほかにもある。ア
イルランド14・7%、スペイン10%、ポルトガル8%などだ。全ユーロ圏
16カ国の平均も6・7%で、赤字率は健全とされる3%を大きく超えている。
最優秀のはずのドイツでさえ6%の赤字で、来年度はさらに増える見通しだ。
(英国も赤字が13%と高く不健全で、政府の赤字削減計画も2013年まで
に5・5%にするという、ギリシャより生ぬるいものだが、英はユーロ圏でな
いので3%ルールが適用されない)
財政赤字の累積額は、ギリシャがGDPの95%であるのに対し、アイルラ
ンドが38%、スペイン67%、ポルトガル75%で、ギリシャより累積赤字
率は低い(イタリア117%、英国69%)。だが、ギリシャの国債に対する
信頼がさらに落ちてジャンクと見なされ、財政破綻に近づくと、信用喪失がア
イルランドやスペイン、ラトビア、ハンガリーなどに拡大するおそれがある。
S&Pは12月9日、スペインの国債格付けを「安定的」から「不安定(ネガ
ティブ)」に引き下げた。
▼米欧量的緩和の終わりがギリシャの終わり?
今回のようなギリシャや南欧、東欧諸国の財政危機の兆しは、今年2-3月
にもあった。昨年9月のリーマン・ブラザース倒産を機に、米国を中心とする
国際金融界は信用収縮が起き、EU内でも高リスクの投資先だった東欧や南欧
からの資金逃避が起こって2月の危機が起きた。だがその後、米英の中央銀行
が、EUや日本の中央銀行も誘って、財政赤字と通貨発行の急増、ゼロ金利策
による「量的緩和」をやって巨額の資金を金融市場に注入したため、資金逃避
に歯止めがかかり、東欧や南欧は、財政赤字を増やしつつ延命した。
今回の危機再燃は今年9月以降、EUや米国の中央銀行が、量的緩和策をや
める方向に動き出した結果、起こりそうになっている。米連銀は先日、景気が
上向きそうだという理由で、来年1月末をもって、市場に資金を膨大に供給す
る主要な量的緩和策をやめると発表した。こうした量的緩和をやめる「出口戦
略」の始動にあわせるかのように、世界から資金を引き上げる動きが再燃し、
11月下旬には借金で大規模な開発を進めていた中東のドバイが事実上の債務
不履行に陥り、それが南欧に飛び火し、ギリシャの財政危機となった。
ギリシャの経済と財政は構造的に脆弱で、以前から経済が政府に依存してい
た。約500万人の労働人口のうち、公務員が100万人、補助金漬けで生産
性の低い農民が80万人、公的な失業対策に頼る失業者が50万人もおり、労
働人口の4割以上が政府の金を頼りにしている。民間経済で食べているのは国
民の6割で、政府はそこから税金をとって、残りの4割の国民を食わせている。
当然、この体制では政府の収支は合わないので、毎年国債を発行し、その8割
近くを外国人投資家に買ってもらっている。また、GDPの3%はEUから
もらう補助金である。主要な産業である海運業や観光業は、昨年来の世界不況
で打撃を受けている。
ユーロ圏内で比較的財政が健全な国の中でも、オーストリアで東欧諸国に資
金を積極融資してきた銀行が経営難に陥り、政府の管理下に置かれるなど、ユ
ーロ圏全体の金融財政が不安定になり始めている。ユーロ圏諸国は、通貨統合
の際、加盟国が他の加盟国に金を貸して救済してはならないという規則を決め
ているが、ギリシャの国債がジャンクになって財政破綻した場合、ユーロ圏諸
国がどのような対策を採るか決まっておらず、混乱が拡大するとの予測が出て
いる。
ギリシャを皮切りに南欧、東欧諸国の国債が次々と格下げされて財政破綻し
ていくとの懸念から、このところユーロが下がり、ドルが復活している。ギリ
シャはユーロ圏を離脱せざるを得ないとの指摘もある。「来年はドル高ユーロ
安になる」とか「来年はあちこちの国債が次々と破綻する」と予測するアナリ
ストもあらわれた。
▼ギリシャよりカリフォルニアの財政破綻が危険?
もし今後、金融財政危機が南欧、東欧からユーロ圏全体へと広がり、ユーロ
が不安定になって国際通貨としての信用を失墜した場合、得をするのは、財政
赤字と通貨過剰発行によってユーロ圏より先に破綻すると思われてきた米国と
英国である。「米英中心主義」と「多極主義」との対立軸で見ると、ギリシャ
の危機は、EUが世界の極として立ち上がることを阻害するとともに、米英中
心主義を延命させる効果がある。以前から米英の破綻を予測してきたフランス
系のシンクタンクEU2020は、今年初来のギリシャや東欧の金融財政危機
について「英米金融界が、ユーロは危ないという話を作ってドルやポンドを守
るために流したデマの結果である」と指摘している。
EU2020によると、ギリシャの経済規模は小さく、ユーロ圏全体の1・9%、
EU全体の2・5%を占めるにすぎない。ギリシャが財政危機になっても、
独仏を中心とするユーロ圏諸国やEUがその気になれば、十分に救済できる。
他方、米国で財政危機に陥っているカリフォルニア州の経済規模は米国全体の
12%で、加州が財政破綻した場合の米国の被害は、ギリシャが破綻した場合
のユーロ圏やEUの被害よりずっと大きい。
欧州は、スペインやアイルランドも財政難だが、米国は全米50州のうち
48州が財政難で、来年から再来年にかけて財政破綻する州が相次ぐと予測され
ている。EUは、世界最大の金保有勢力で、ドルが崩壊して金が高騰しても対
応できる。米英の格付け会社やアナリスト、マスコミが発するプロパガンダを
外して冷静に分析するなら、欧州より米国の方が深い財政危機に陥っていると
いうのがEU2020の指摘である。
対米従属派とおぼしき日本の三菱銀行系アナリストは「来年はドル高ユーロ
安」と予測するが、対照的に「隠れ多極主義」と目されるゴールドマンサック
スは最近「ドル安ユーロ高になる。ユーロは3カ月以内に1ユーロ=1・55
ドルまで上がる」との予測を発表している。(現在は1・45ドル前後)
ギリシャの財政危機は、タイミング的に見ても、EU統合を阻止して解体さ
せたい英国など英米中心主義による戦略のにおいがする。EUは11月、政治
統合を進展するためのリスボン条約を発効し、経済統合から政治統合へと歩み
出した。ギリシャ危機は、その矢先に起きている。今後、政治統合が進むと、
財政統合の話も始まる。いずれ、ユーロ圏諸国が単一のユーロ国債を発行し、
その収入を各国で分配する新体制になり、EUは財政面で今より強くなる。
EUを財政面で崩壊させる企ては、加盟各国が別々に国債を発行している今の
うちに挙行する必要がある。
そもそも第2次大戦後、政治経済の統合(特に独仏の統合)を欧州諸国にや
らせようとしたのは、米国の多極主義勢力である。東西ドイツの和解は、70
年代に米国でニクソン政権が出てきた後に進んだ。冷戦崩壊と同時に東西ドイ
ツを無理矢理統合させるとともに、欧州に経済統合を勧めたのは、レーガンと
パパブッシュの2政権である。
1815年のナポレオン戦争以来、欧州大陸諸国の相互対立を煽って覇権を
維持してきた英国は、米国の多極主義者の欧州統合構想に反対だった。だが、
米国を阻止し切れなかったので、代わりに英国自身がEUに入って内側から統
合進展の足を引っ張り、ポーランドやバルト3国など英傀儡系の諸国をEUに
入れて独仏に楯突くよう仕向ける戦略をとっている。先日、英ブレア元首相を
EU大統領にする話が独仏の反対で潰れたが、もしブレアがEU大統領になっ
ていたら、EU統合を中から崩す戦略を隠然と展開しただろう。
▼ギリシャ危機への対策がEUを強化する
ギリシャや南欧、東欧諸国の財政危機は、EUの危機ではあるが、EUがう
まく対応すれば、財政難に陥った加盟国の緊縮的な国家運営をEUが行い、
EUが加盟国の国家主権を制限する体制が作られることで、むしろ「超国家
組織」としてのEUの権限を強化する結果をもたらす。ギリシャの財政破綻は、
EU強化の好機であるため、大方の予想に反して、EUがギリシャをユーロ圏
から追い出すことはないだろう。
今のEU(ユーロ圏)は、通貨はユーロで単一だが、国債は各国が別々に発
行し、財政的な体質も各国で差がある。糞真面目な禁欲主義や節約が好きで緊
縮財政を得意とするドイツや北欧諸国と、楽しくなければ人生でないと言って
放漫な国家運営をやりがちな南欧諸国が、通貨を共有しつつ国債を別々に発行
し続けるのは、構造的に無理がある。ギリシャ政府が、財政支出のうち防衛費
を過小に計上し続けてきた(隠れ防衛費を持っていた)ことが、EUの会計当
局(Eurostat)によって04年に暴露されるなど、南欧諸国はウソでごまかす
詐欺師の傾向もある。
南欧諸国が財政破綻するのを好機として、ドイツなどEU中枢が「財政破綻
した国は、財政の決定権をEUに渡す」という協約もしくは不文律を作って運
営することで、EUは加盟国の財政政策の監督権を持つことができる。英国の
新聞は、EUが来年、この新体制への劇的な移行をするだろうと書いている。
この流れは、EU内部でまだ議論が始まったばかりだ。EU議長のスウェー
デン首相は「ギリシャの財政危機は、ギリシャの内政問題で、ギリシャ国内で
対策を決定すべきことである(EU全体の問題ではない)」と述べている。
「だらしない南欧諸国の放漫財政の面倒など見たくない」という北欧の本音が
かいま見える。
だがEUの主導権を持つドイツのメルケル首相は「ギリシャの問題は、ユー
ロ圏諸国全体の問題である」と宣言し、ギリシャの財政危機がもっとひどくな
ったら、EUとして何らかの決定をする方向性を示した。メルケルは危機対策
を口実にEUを動かし、ギリシャ議会の頭越しにEUがギリシャ政府を制御し
て財政緊縮策を行わせる新体制を来年やるつもりだという指摘もある。
▼英国の傀儡としてのギリシャ
EU当局がギリシャなど加盟各国から国家権力の一部を奪っていく場合、最
大の抵抗要因となるのは、加盟各国の「ナショナリズム」である。各国の議会
は、国民に「EU当局が、わが国の国家主権を奪おうとしている」と呼びかけ
つつ抵抗するだろう。労組など政党傘下の国民組織が動員され「EUの超国家
的支配を許すな」というナショナリズム運動が拡大しうる。すでに、リーマン
倒産後の世界不況でギリシャ東欧の財政破綻の懸念が高まりだした昨年末から
今年初めにかけて、ギリシャを皮切りに、南欧、東欧の各国に暴動が急拡大す
る事態が起きている。
今回の財政危機の再燃で、ギリシャ政府は公務員の大幅削減をせざるを得な
くなっているが、公務員の労組は大規模なストライキを予定しており、すでに
労組による政治集会が開かれ、予想を超える多数の参加者が集まっている。格
付け会社のムーディーズは「来年は、財政赤字を抱える世界各国で、財政破綻
と暴動、社会混乱の同時発生が次々と起こるかもしれない」と予測しているが、
それはギリシャから南欧、東欧に広がる形で拡大するかもしれない。
財政破綻国の国家主権を制限しようとするEU当局と、財政破綻した国のナ
ショナリストとの対立が、バラバラに展開している限り、最終的には金を出す
側であるEU当局の主張が通るだろう。だが、各国のナショナリストが連携す
る動きをしたり、連携を誘導する勢力がいたりすると、話は違ってくる。すで
に見たように、ギリシャから東欧南欧への財政危機の拡大は、EU統合を進ま
せたい多極主義者と、阻止したい米英中心主義者との暗闘の一幕に見える。米
英中心主義者の側は、ギリシャなど欧州各国のナショナリズムを扇動すること
で、EU統合を妨害することができる。
昨年末から今年初めにかけてのギリシャの暴動では、ギリシャの公安当局が
アナキストのふりをして破壊行為をやって暴動の拡大を扇動していたと指摘さ
れている。また、ギリシャで起きた暴動が短期間に他の欧州諸国に伝播し、拡
大感染の早さも異様だった。「インターネットの普及」だけが理由とは考えに
くい。
歴史をひもとくと、近代ギリシャは、もともと英国の世界支配の道具として
建国されたことがわかる。18世紀後半に産業革命を起こした英国は、18世
紀末にフランス革命を起こして軍事的に強い国民国家という新システムを編み
出したフランスを、ナポレオン戦争で1815年に破り、欧州(つまり世界)
の覇権国となった。その後、英国は東方のオスマントルコ帝国を潰して影響圏
を拡大する作戦を開始し、1820年代にトルコ帝国下のギリシャ人やセルビ
ア人、ブルガリア人などのキリスト教諸民族のナショナリズムと独立運動を扇
動し、その流れの中でギリシャは1829年にトルコ帝国から独立した。海軍
力で世界を支配した英国にとってギリシャは、トルコの西進と、ロシアの南進、
ドイツの東進を防ぐための、東地中海の地政学的な要衝だった。
その後、ギリシャではロシアやドイツの影響も強くなったが、2度の大戦で
は何とか英国側につき、第二次大戦終結時の米英ソの談合では、ソ連はギリシ
ャに手を出さないと米英に約束した。ギリシャ国内では左翼が強かったが、ソ
連の助けを得られず弱体化し、代わって英米の肝いりでギリシャ軍内の右派将
軍たちがクーデターを起こし、冷戦下で軍事政権が作られた。米国は多極主義
ニクソン政権からの70年代に冷戦終結の準備を開始し、ギリシャに国民投票
で王制を廃止させ、軍事政権をやめて左派の民主政権の樹立を認め、政治の近
代化を図った。ギリシャ系米財界人のオナシスらによる海運業の振興などで、
経済発展も進められた。
米国は、英国にも東地中海からの撤退を求めたが、英国はキプロス島でのギ
リシャ系とトルコ系の紛争を扇動し、紛争を仲裁する「平和維持軍」の名目で
国連から金を出させてキプロス島の英軍基地を維持した。米国の肝いりで、ギ
リシャは政治経済を近代化し、81年にEUの前身であるECに加盟したが、
キプロスの現状に象徴されるように、今も英国の影は残っている。英国と米軍
産複合体の諜報ネットワークが働き、EU統合を妨害する欧州各国のナショナ
リズム扇動が来年にかけてひどくなっても不思議ではない。
▼フランス革命を一歩進める
人類が「国民国家」の国家システムを持ったのはフランス革命がきっかけだ。
欧州は、国民の結束を利用して軍事的・経済的に国家を強化できる国民国家の
システムを活用し、国力を急増して世界の中心となり、英国は欧州の国際政治
を操って覇権を維持した。欧州では、国民国家システムをバージョンアップし
た「全体主義」や「社会主義」のシステムを考案して試行し、国家システムの
試行錯誤について世界の最先端を進んでいた。欧州は、長い歴史を持つ多くの
民族がひしめき、国家間の競争ないし談合が非常に重要だ。だから国家システ
ムの試行錯誤や、国家談合としての外交術、外交を駆使した英国覇権体制の
権謀術数などが欧州で磨かれたのだろう。
かつて国民国家システムを発明した欧州が今、国民国家を超越するEUとい
う超国家組織を作り、諸国家の統合を進めていることは、フランス革命からの
歴史をさらに一歩進める動きとして興味深い。EUは、フランス革命からの
200年の試行錯誤の成果であり、欧州人だからこそ発案できたものだ。欧州
諸国のナショナリズムを煽って欧州の国際関係を操作してきた英国は欧州統合
を妨害するが、英国の覇権を崩したい多極主義的な米国は、国際連盟や国際連合
といった超国家組織の樹立によってナショナリズムを超える国際体制の形成に
協力し、EU統合に加担している。
欧州のEU統合と、ニクソンからオバマまで断続的に続く米国の隠れ多極主
義の世界戦略が成功すると、EU型の国家統合と超国家体制の構築は、欧州以
外の世界の各地域にも普及するだろう。それは、フランス革命から第二次大戦
までの150年間に国民国家制度が世界中に普及した時と似た流れになる。当
時より今の方が、交通通信の発達や経済基準の統一によって、世界の一体感が
強い。国民国家の普及には150年かかったが、EU型国家統合の普及は30
年ぐらいで完了するかもしれない。
江戸の幕藩体制下の日本人には、明治の国民国家体制が想像もつかなかった
だろうが、実際には、明治維新の政治転換は25年ほどで完了した。同様に、
今の日本人には「東アジア共同体」で日本と中国、韓国が何らかの国家統合的
な動きをすることが想像もつかないが、10年後にはどうなっているかわから
ない。その意味で、今の欧州で起きていることは、日本にとっても非常に重要だ。
EU統合や世界の多極化は、この数年でかなり進んだが、このままずっと進
むとは限らない。ギリシャや東欧南欧の財政危機に対するEUの介入が、反EU
的な各国のナショナリズムの高まりによって阻止され、ユーロの体制が解体
していく展開になれば、EU統合を皮切りとする世界の地域統合も進まなくな
る。しかしその場合でも、国際政治経済における中国などBRICの台頭は続
く。中国は来年、上海などの不動産バブルの崩壊や、鉄鋼やセメントなどの生
産設備の過剰によるバブル崩壊が懸念されているが、中国経済は上海と広東、
華北と華南が別々に動く多様な体制で、これまでもバブルの拡大と崩壊を繰り
返しながら高度成長してきた。中国が来年、全体的な経済崩壊をする可能性は
低い。
欧州が沈没しても、中国やインド、ブラジルの成長と台頭は続くだろうから、
米英中心の政治経済体制が多極化していく流れは変わりそうもない。むしろ、
東欧南欧の財政破綻がユーロ圏全体の弱体化につながった場合、それが英米の
財政破綻へと拡大波及していくおそれの方が強い。逆に、東欧南欧の経済破綻
でEUの超国家権力が強まれば、その後のEUは財政面で強くなり、むしろ
財政が弱い英米から資金が逃避する流れになる。短期的にはドル高ユーロ安
かもしれないが、中期的にはドル安ユーロ高になる。
欧米の先進各国で財政危機が伝播すると、巨額の財政赤字を抱える日本も危
ないという見方が強まるが、日本政府は財政赤字の85%を国内の金融機関に
買わせており、国民の預金が政府に回っている。国債を外国の投資家に買って
もらっている他の欧米諸国とは構造が違うので、日本の財政は破綻しにくい。
メールアドレス、パスワードなど会員情報の変更と、支払い状況などの確認、
田中宇への連絡は、以下のURLからログインする「会員メニュー」で行えます。
田中宇プラスを購読できる日数は、あと 116日あります。
最終更新:2009年12月25日 09:10