★ ヘミングウェイの孫娘「一族の呪い去った」 親族7人自殺を克服…希望の映画 「msn.産経ニュース(2013.2.8)」より
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 ボクシングや闘牛を好み、男のダンディズムを感じさせる作風でいまも根強いファンを持つ米国を代表する作家、アーネスト・ヘミングウェー=写真。本人を含めて親族計7人が精神疾患による自殺で人生を終えた悲劇の血族としても知られる。そのヘミングウェーの孫で女優のマリエルさん(51)が主演し、名門一族の悲劇をマリエルさんがいかに乗り越えたかを描く米ドキュメンタリー映画「ランニング・フロム・クレイジー」(狂気からの逃走)が注目を集めている。経済の低迷が続く米国で、自殺者が出た多くの家族に希望を与える作品といえそうだ。(SANKEI EXPRESS

サンダンスで上映
 「山を見上げ、川の流れに耳をそばだてているときだけが唯一、私が正常でいられるときなの。家の中ではすべての物が死んでいる感じがする。時々、氷の張った冷たい川に飛び込みたくなるのよ…」
 バーバラ・コップル監督によるこの作品は米ユタ州で開かれたサンダンス映画祭(1月17~27日)で初上映され、ドキュメンタリー作品の目玉として高く評価された。マリエルさんが服のまま激しい流れの川に漬かり、前述のように述懐する場面は、米誌エンターテインメント・ウイークリー(電子版)が映画祭に先立って伝えたものだ。

 米業界誌ハリウッド・リポーター(電子版)やCNN(電子版)などによると、酒乱だった両親の結婚生活の不和が生んだ家庭内の混乱や、1996年7月2日、薬物の大量摂取により42歳で自殺した姉で女優のマーゴさんら精神疾患により自殺を遂げた親族7人への思いなどが切々と語られる。また、トランポリンに興じる祖父など、家族の未公開秘蔵映像も含まれている。公開は今春以降の予定という。

 さらに、2000年に77歳で亡くなった父親のジャックさんが、マーゴさんと長女ジョアンさんに性的虐待を加えていた新事実も暴露している。マリエルさんはCNNに「記憶はないが、性的虐待があったと信じている。母は幼い私たちを父から守るため、常にわれわれとベッドを共にした」などと語った。

人生は変えられる
 マリエルさんはCNNやロイター通信、AP通信に「われわれの家族は呪われていた。精神疾患という呪いに。私自身はその呪いを感じなかったが、普通の生活を切に願っていた」と話した。実際、マーゴさんが自殺したのは、35年前に祖父が猟銃自殺を遂げた日と同じだった。

 そして「誰にでも人生を変えるためのライフスタイルの選択肢がある。私にとってそれはバランスのとれた食生活を続けることだった」と説明。さらに「この作品の製作作業が心身の治癒に大いに役立った」と述べ、「狂気は去った。狂気と並走したこともあったが、今は人生が面白く、それを楽しんでいる」と明るく振る舞った。

 研究者の調査結果によると、米国の自殺率は08年のリーマン・ショックを受けた景気低迷以降、急上昇しており、失業率の上昇が米国人の心の健康をむしばんでいる。

 マリエルさんはロイター通信に「(自殺につながる)精神疾患は今も米国社会のタブーだ。この作品を機に人々が精神疾患について率直に語り合えるようになることを望む」と述べた。

 Ernest Hemingway 1899年7月、米イリノイ州オークパーク生まれ。マーク・トウェーン(1835~1910年)と並ぶ米文学界最高の作家。もともと新聞記者で、簡潔な文体を駆使する名文家で知られた。代表作は「日はまた昇る」(26年)、「誰がために鐘は鳴る」(40年)、「老人と海」(52年)など。53年に米ピュリツァー賞、54年にノーベル文学賞を受賞。生涯に4回結婚した。2回の飛行機事故に遭い、奇跡的に生き残った経験を持つ。鬱病を患い61年7月2日、猟銃で自殺した。61歳だった。








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最終更新:2013年02月21日 21:16