★ 人の言葉分かる馬に深キョン、胸キュン 「偉大なる、しゅららぼん」深田恭子 「産経ニュース【私の時間 シネマ】(2014.3.14)」より
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 31歳。モットーは年相応であること。「同世代の役を演じることも多いから、実年齢よりマイナスではいたくない」。大きな瞳をまっすぐに向ける。「だから同世代ができることは、なるべく、できるようでありたいんです」。かわいらしい少女は、美しく聡明な大人の女性になった。

 そんな彼女が出演した映画「偉大なる、しゅららぼん」(主演・濱田岳、岡田将生)が公開中だ。作家、万城目学氏の小説を映画化。代々、“不思議な力”で琵琶湖の町を牛耳る一族、日出(ひので)家の跡取りの淡十郎(濱田)と、同家へ修業に来た分家の涼介(岡田)が、世界を揺るがす大事件に対峙する様を描く。


もし「特殊能力」を持っていたら…

 彼女の役は、「グレート清子」と呼ばれる淡十郎の姉、清子。並外れた能力を持つゆえに社会生活になじめず、自宅の城に引きこもり、城内を赤いジャージー姿で白馬に乗って走る、毒舌で勝ち気な女性だ。

 「とにかくインパクトが強い役。設定もせりふもすごくて。どんな役になっちゃうんだろうと」と笑う。

 清子は、「あたしがフルボッコ(全力でたたきのめす)にする」など毒舌を吐く。が、彼女の振る舞いには隠された理由がある…。「能力を持った悲しみなど人間味あふれる部分がある。不思議な話だけど、完全にファンタジーではないから、難しかったですね」

 もし役柄のような特殊能力を持ってしまったら、と考えた。「やっぱり外に出たくないだろうし、人と話すことは怖くなってしまうと思う。どんな(特殊)能力を持っても、良い面と良くない面があるでしょうし」としみじみ。

 昔に戻ってやり直したい、という人もいるが、彼女は時間を戻す力も欲しくはない。「昔より、良くする自信がない。だって、その時はそれで精一杯だったはずだから。過去を否定せず、そのときの自分を受け止めたい」。が、強いて言えば、一つだけ欲しい力がある。「飼っているワンちゃんの寿命をなるべく延ばせたら」と笑った。

慣れない乗馬シーン

 役柄のようなタイトなジャージー姿は好きで、自宅や運動する時に着るが、それで演技をするとなると…。「体が楽すぎて不安になっちゃう。はかま姿やマレー号(白馬)がいると大丈夫なんですけど。ジャージー姿で湖に立つ場面ではなんかスースーして不安で、ポケットを引っ張っていた」と苦笑い。

 初体験の乗馬は、時間をかけて練習してから、撮影に挑んだ。「最初は怖かったけど、今は馬に乗りたくて仕方がない。馬は人の言葉が分かるんです。感情も表に出すので可愛い」。多くの人がいる町中や強風下の琵琶湖での撮影時、緊張して彼女に頼ってくる馬の様子に「キュンとした。乗馬が好きになりました」

 乗馬は事前に練習をしてから、撮影に挑んだ。「琵琶湖の強風下での撮影で、馬が緊張していてキュンとした。感情があって可愛い。乗馬が好きになりました」


滋賀でのロケ、「ひこにゃん」とも対面

 幅広い世代の役者が揃った現場はみな仲が良く、よく集まって食事に行った。彼女が清水寺に行ったことがないと知った濱田と岡田が仕切り、有志で撮影が休みの日に京都観光へも。

 「仕事仲間とお友達のような時間も過ごせて、いい思い出です。個性的な俳優たちが個性的な役を演じている作品なので、楽しんでほしいですね」

 今作はオールロケ。一部を三重県で撮った以外は、すべて滋賀県で撮影した。「こんなに長く滋賀県にいたことはなくて、楽しかった」。近江牛に舌鼓を打ち、彦根城では「ひこにゃん」と対面もした。「琵琶湖もエメラルドグリーンですごく美しかったです」

 幅広い世代の役者が揃った現場は仲が良く、みんなで食事に行った。「何時集合、と言って集まって、徒歩で移動する。楽しかったですね」。撮影が休みの日は、有志で京都観光へも。彼女が清水寺に行ったことがない、と知った濱田と岡田が仕切った“観光ツアー”だった。

 「お仕事の仲間とお友達のような時間も過ごせた。本当にいい思い出です。個性的な俳優たちが個性的な役を演じる、いろんな要素を持った作品なので、自由に楽しんでほしいですね」


全ての人と誤解なく良い時間過ごしたい

 中学2年の時、知り合いの勧めで所属事務所のオーディションに応募、グランプリを獲得して芸能界入り。「芸能界に興味があったわけではなかった。こんなに深く、自分の人生に関わるとは」

 芸能生活が、“普通の女の子”として生きた年数を超えたとき、改めて生涯の仕事とする覚悟を決めた。

同時に「自分がしっかりしていないと『本来の私』がいなくなっちゃう。人としての生き方も考えました」

 自身を心配性、と称する。「楽しいことがあり、調子に乗ると必ずバチが当たるから。いい時ほど、真面目に生活しなきゃと思う」。人との関係にも気を遣う。「すべての人と、誤解なく良い時間を過ごせたらと思うので。なるべく言葉をたくさん伝えます」。人にも、自分にも真摯でありたいと願う。

 それゆえ、常に感謝の気持ちを忘れない。恥ずかしがり屋である自分が人前に立てるのは、スタッフのおかげという。「きれいな洋服や美しいメーク、照明さん、監督らいろんな方々に輝かせてもらっているから、今の自分がある」


忙しいと野菜を切りたくなる!?


 プライベートでの、豊かな生活も意識する。周囲の先輩や女友達は、仕事を持ってしなやかに生きる。「仕事だけで手一杯になってはいけない。私も頑張ったらこうなれるかなと。色々質問し、教えてもらっています」と話した。

 おいしいものを食べることが大好きな彼女は、料理好きで自炊もする。「仕事で実体のないもの(演技)を作っているから」。目に見える、形あるものを作りたいのだという。「特に、正確な形に野菜を切るのが好き。無心に切って、キレイに切れるとホッとする」。多忙なときは、野菜を切りたくなるとか。

 まだ肌寒い今の楽しみは湯たんぽ。寝る前に湯を入れて好きな場所に置く。「ああ、温かいな。お湯ってすごいなと。気持ちがほっこりとするんですよ」。女優として、女性として豊かな日々を歩む。









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最終更新:2014年03月14日 22:25