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移民


★ 中国人コミュニティー動揺 カナダ、富裕外国人への移民プログラム大幅見直し 「産経ニュース(2014.4.19)」より
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 カナダ政府は2月中旬、一定額の投資を条件に永住権を外国人に与える移民プログラムを大幅に見直す方針を打ち出した。永住権取得後に資産だけを移し、実際には居住しないなど問題が多いことが背景にある。今後、投資額の引き上げなど条件を厳しくし、受け入れ対象者を制限するとみられるが、申請者の多くが中国人であることから、カナダ国内の中国人コミュニティーには動揺が広がっている。

経済の貢献度低く


 「政府の新方針は、われわれを“狙い撃ち”にするものだ。カナダ政府は昔と違って、私たちに非友好的になっている」。異国情緒あふれるバンクーバーのチャイナタウンで、宝石業者の中国系カナダ人、フランシス・ワン氏(40)は吐き捨てるように語った。

 1986年から施行されているこの移民プログラムは、政府関連事業に80万カナダドル(約7500万円)を5年間、無利子で融資した場合、永住権を獲得できるというもの。取得した外国人は18万5000人に上る。

 目立つのが中国人の富豪だ。97年の香港返還以降増え、最近は経済成長著しい中国本土からの申請も相次ぎ、全体の半数以上(9万7000人)に上る。

 カナダ政府が方針転換に踏み切ったのは、投資家の多くがカナダに実際住まず、期待通りの税収を上げられないほか、企業創設を通じて雇用創出を図るといった実体経済への貢献度が低いことが背景にある。

 申請書の偽造も相次いで指摘され、カナダ紙の2011年の調査報道によれば、移民仲介業22社のうち8割がニセの健康診断書作成に応じる姿勢をみせ、前科を消すことまで約束。議会から反発が起きていた。

 バンクーバーでは中国系住民が31年に80万人、カナダ最大都市の東部トロントでも110万人へとそれぞれ倍増すると見込まれている。影響力拡大への懸念が強まる中、アレクサンダー移民相は「(方針転換は)中国系移民が好まれないという理由では絶対にない」と強調するが、中国系住民の疑心は晴れない。

 ある中国系住民は「カナダは多様な文化を誇る国家なのか。人種や宗教に寛容な国と思ったが失望した」と話す。中国系の移民弁護士、ローレンス・ワン氏(48)も「中国人コミュニティーの成長が鈍化し影響力がそがれる」と懸念する。

 バンクーバーの中国系経済界への打撃を心配する声も絶えない。制度の存続を訴える活動家、ガブリエル・ユー氏(51)は「高級車を売ったり、有名レストランを経営したりする中国系ビジネスマンは苦境に立たされるだろう」と話す。


住宅価格に影響


 政府の方針転換が住宅価格に与える影響も小さくない。中国人約4万人が今後6年以内に住宅を購入すると見込まれ、バンクーバー西郊など風光明媚(めいび)な地域では住宅価格が200万ドル(約1億9000万円)に急騰していたが、「価格上昇はもう見込めない」(不動産業者)との嘆きも漏れる。

 一方、中国系以外の住民からは新方針に賛成の声が出ている。8年前にカナダに移住したインド系のサム・フーダさん(50)は「市内のマンションには空き室が多い。中国の富豪たちが購入したのに住まず、貸し出そうとしているからだ。そんな中、私は日光もろくに入らない地下の部屋を借りている。賃貸価格が早く下がればいい」と期待する。

 11年の永住権申請者の86%を占めたという中国本土の人々に向ける香港系住民の視線も厳しい。9歳のころ、親と香港から移住した女性会社員のスージーさん(29)は「本土の人々は香港に来ると子供に街中で平気で排泄(はいせつ)させるなど、同じ中国系でも香港の人々とメンタリティーが違う。永住権を取ろうとする本土の富豪の中には、汚職で金を得た人々も多くいるはずだ。こうした人々とカナダで(同じ中国系として)ひとくくりにされるのは真っ平だ」と冷たく突き放した。(カナダ西部バンクーバー 黒沢潤、写真も)




 在カナダの中国人 1850年代以降、西部地域のゴールドラッシュや、カナダ太平洋鉄道の建設にともない流入。19世紀後半、人頭税が課され、1920年代には排斥を意図した中国人移民法が成立した。カナダ政府は2006年に謝罪。中国系人口は百数十万人で、全体の3%強。










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最終更新:2014年04月19日 14:47