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■ 怪しい薬「正露丸」なぜ規制なし? 「二階堂ドットコム(2017.3.14)」より
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http://www.oita-min.or.jp/seirogan.html
+ 引用リンク記事
危険な正露丸の服用|論文・研究発表 大分健生病院・外科・今里真 医師

 14歳の男の子が重症の腸炎で入院しました。軽い食中毒様症状があったので、自宅にあった正露丸でやり過ごしているうちに3日経ち発熱、腹痛を我慢できなくなり、当院受診後入院となったものです。

当院では、食中毒の起炎菌推定,重症度把握、菌体の洗浄回収のため、大腸内視鏡を通常行っていますが、今回は興味深い所見を確認しました。内視鏡所見は、キャンピロバクター腸炎ですが、その炎症所見が極めて強く、腐食様の変化もありました。そして、大腸内に6ミリ大の黒色球状物を認め、その一つをサンプルとして回収したところ、正露丸独特の刺激臭を認めました。正露丸で麻痺した腸管内にキャンピロバクターが異常繁殖し、正露丸の粘膜腐食作用と共に腸炎を悪化させたようです。その証拠に内視鏡で大腸洗浄し正露丸を除去しただけで、翌日から自他覚所見は改善しました。

正露丸の作用は、その毒性の発現用量で現れます。すなわち腸管運動が神経毒によりマヒして下痢が止まり、知覚神経が神経毒により解離して腹痛を感じなくなります。虫歯に詰めると痛みがなくなるのも同じ原理です。

「正露丸」は元々は「征露丸」といって日露戦争に出向く兵隊さんに「極寒の地でもお腹をマヒさせて戦え」という医薬品とは思えないドーピング剤だったそうです。毎年のようにマヒ性イレウス、腸壊死、腎不全などで手術や透析にいたる例など正露丸の例が報告されていますが、テレビコマーシャルは全く使用上の注意事項を知らせません。

医薬品集などで正露丸の主成分クレオソートを調べると「歯内にのみ使用し、口腔粘膜に付着した場合、腐食する場合があるので直ちに洗い流すこと」と記載されており、服用など論外のようです。

一家にひとつはあると言われる正露丸には“注意”しましょう。


これは、今里医師が大分市医師会医学会総会で発表したものです。
また、民医連新聞2002年12月1日 第1294号にて掲載されました。

他にもたくさん、正露丸は怪しいという記述が見られるのに、なんで売ってるんだろう?
厚労省じゃなくて、それなりの権威がある学者が消費者庁に訴えるしかないのだろうか。疑問である。

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■ 正露丸の主成分は解毒剤すら存在しない劇薬! 薬剤師いわく「百害あって一利なし」 「ヘルスプレス(2016.7.22)」より
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 あなたの家にも救急箱があるはずだ。どんな常備薬が入っているだろう? 浅田飴、命の母、宇津救命丸、太田胃散、改源、キンカン、救心、アンメルツ、サロンパス、シッカロール、根治水、仁丹、たこの吸い出し、龍角散……。

 そんな定番薬に混じって、必ず見つかる茶色の小瓶「ラッパのマークの正露丸」。子どもの頃、飲まされたほろ苦い記憶があるかもしれない。

 良薬は口に苦し! 正露丸は110余年もの間、大衆に服用されてきた止瀉薬(下痢止め)。国内の認知度90%以上、市場シェア50%以上を誇る超ロングセラー大衆薬だ。

 だが、正露丸は本当に良薬なのか? その有効性と安全性を検討した実証研究がある。

クレオソートは、がんの発症リスクを高める薬剤

+ 続き
 時間はやや遡る。1999年9月12日、医薬品・治療研究会(代表・別府宏圀)と医薬ビジランスセンターJIP(代表・浜六郎)は、民間の医薬品監視機関である薬害オンブズパースン会議の委託による共同研究を行い、『正露丸の有効性及び安全性(危険性)の評価に関する研究』を発表した。この共同研究は、正露丸の安全性と有効性を以下のように結論づけている。

 最大手メーカー大幸薬品の添付文書によれば、正露丸の主成分は木タールから製造されるクレオソート。クレオソートは、フェノール(14.5%)、クレゾール(16.8%)、グアヤコール(23.8%)、クレオソール(19.1%)、エチルグアヤコール(6.4%)が混合するフェノール系化合物だ。

 クレオソートは、解毒剤がない劇薬のため、細胞や神経を傷害する高濃度の腐食性があり、血液障害、腎障害、がんの発症リスクを高める薬剤とされる。ただしは、腸液の分泌抑制・吸収促進、腸の蠕動抑制などによって下痢を止める作用はあるが、殺菌効果はない。

 添付文書は、服用の注意を下記のように記載する。

①劇薬成分が含まれているので,用法用量を必ず守る。
②5才未満は禁忌。
③小児には喉につかえないように注意し、保護者の指導監督で服用する。
④効能以外の目的には絶対に使用しない。
⑤水または白湯で服用する。
⑥他の止瀉剤との併用は絶対しない。

 ただ、「皮膚に付着したらせっけん及び湯を使ってよく洗ってください」とあるが、皮膚に付着してはいけない薬を内服するリスクの記載は一切ない。

 効能は、下痢、食あたり、はき下し、水あたり、くだり腹、軟便、むし歯痛。アレルギー、肝疾患、腎疾患などの患者、高熱を伴う下痢、血便、粘液便の続く人、妊産婦、高齢者などは、医師や薬剤師に相談のうえ、服用するとしている。

自殺する目的で240粒を服用後、意識消失と溶血が

 正露丸の1日の最大常用量(成人)は9粒。動物実験の結果によれば、成人の中毒量は1日の最大常用量の約2~4倍(18〜36粒)と推定される。

 成人の1日の最大常用量の約4倍を服用したため、麻痺性イレウス(腸閉塞)、腸管壊死、貧血を発症したり、腎不全の手術・透析を行った臨床例がある。また、自殺する目的で240粒を服用後、意識消失と溶血が認められ、透析を受けた臨床例もある。

 これらの症例を放置すれば、患者は死亡した可能性が極めて高い。

 また、消費者は薬が効かないと感じれば、増量して服用したり、1日の最大常用量の約2~4倍を服用するリスクは避けられない。したがって、医師や薬剤師の処方箋を必要としない市販薬としての安全性は極めて疑わしい。

 正露丸の臨床試験は、使った・治った・効いたという「三た論法」の論文だけを根拠にしている。つまり、正露丸を投与しない対照群との二重盲検試験をまったく実施していない。したがって、正露丸の有効性を実証する根拠となり得ない。

 以上の論点から、正露丸の安全性と有効性の根拠はまったくない。長期的にも短期的にも服用のリスクが高いので、一般医薬品としての価値は認められない。つまり、その毒性は許容できず、臨床効果は適切な臨床試験で証明されていないことから、販売を中止すべきとの結論となっている。

なぜ薬剤師たちは、正露丸を飲まない、奨めないのか?

 この共同研究の結果を受けて、薬害オンブズパースン会議は、さまざまなアクションを起こしている。

 たとえば、2001年1月、養護教諭と学校薬剤師宛にアンケート調査を実施したところ、約25%の学校が常備していたことが分かった。日本学校薬剤師会に対しては、学校薬剤師の正露丸への関与についての要望書も提出。一方、学校薬剤師の78.0%は「特に指名・希望がない場合は正露丸を奨めていない」、52.2%は「指名・希望がある場合でも他の下痢止めを奨める場合がある」、87.1%は「自らも正露丸を服用していない」ことが分かった。

 さらに、薬害オンブズパースン会議は、厚労省と大幸薬品に対して、正露丸の販売中止を求める要望書を提出。2001年3月、厚労省は、正露丸との因果関係が否定できない肝機能障害3症例の重篤な副作用を「医薬品・医療用具等安全性情報165号」に掲載し、2002年5月、具体的な症例を情報開示した。

 しかし、大幸薬品は「薬害オンブズパースン会議の要望について」という文書を全国の薬局に送逹。正露丸は年間およそ3億回服用分が製造され、多くの消費者に支持されている薬であり、まれにアレルギー症状(軽度の湿疹)などの軽度な副作用が見られる以外はないと釈明し、「販売は中止しない」と公式に表明している。

 都内総合病院に勤務する薬剤部部長のK氏は、次のように語る。

 「正露丸は、古くから販売されている医薬品という点で、安全性が担保されているという考えもできなくはない。また、どんな医薬品でも量を誤れば、何らかの有害事象(副作用)が起こる」

 しかし、そのような前提があっても、正露丸には「極めて危険だと感じる点」があるという。

 「正露丸は、添付文書に定める用法・用量からわずか2倍量を超えただけで中毒量に当たる医薬品である点、簡単に入手し服用ができ点を考えると、極めて危険だと感じる。これまであまり大きな問題が起こっていないのは、あの独特の匂いや味覚が、服用量を増やしてしまう行為につながりにくいからだけではないか」

 さらに、正露丸を患者にすすめない理由を、以下のように補足する。

 「私自身は、あの独特な匂いはクレゾールから来るものでだと気がついたことや、平成8年に青森のある公園で起こった事件――ネコ除けのために撒かれたクレゾールのため、幼児たちが皮膚やけどや意識混濁を起こしたという事件の記憶が鮮明に焼き付いているので、正露丸の服用はすすめてはいない。現に、医療用医薬品にクレオソートを含有した医薬品はないし、クレゾールを使用するような場面もほとんどなくなっていることからも、百害あって一利なしではないのか」

 いかがだろう? それでも下痢に苦しんだら、やっぱり正露丸?
(文=編集部)


★ 正露丸、36年ぶりに新製品。におい抑えたカプセル型 「ニュースイッチ(2017.2.23)」より
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 大幸薬品は胃腸薬「正露丸」の新製品を36年ぶりに投入する。飲みやすいカプセルタイプの「正露丸クイックC」を今夏にも発売する。国内の止瀉薬(ししゃやく)市場の低迷や競合製品の台頭で、正露丸をはじめ同社の止瀉薬シェアは減少している。「ラッパのマーク」で定着している正露丸シリーズの新製品でテコ入れする。

 正露丸クイックCは同社初のカプセルタイプ。カプセルタイプは正露丸特有のにおいが抑えられ、飲みやすいとみられる。

 1月に第2類医薬品で承認されており、2017年度上期の発売を見込む。正露丸、1981年発売の「セイロガン糖衣A=写真」に続き正露丸シリーズで3品目。

 丸薬と糖衣錠の既存2品と同じ主成分「木クレオソート」の液体をクイックCのカプセルに充填する。主成分が液体のため、異常になった腸内の水分量を早く調整する。腸の動きを正常に戻す効果も期待できる。

 同社の正露丸の16年4―12月期の国内売上高は前年同期比13・7%減の12億円、セイロガン糖衣Aは同5・7%減の14億円。止瀉薬シェアも同2・9ポイント減の47・2%に低下した。
日刊工業新聞2017年2月23日


☆ 外科医も納得"正露丸が効く"理由〔外科医のつぶやき〕 「ダイヤモンドオンライン」より
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 小学生のころのある日を思い出す。学校から帰って冷蔵庫を開け、真っ先に牛乳を飲んだところ、口の中に何かゼリー状の塊を感じあわてて吐き捨てた。「お母さん、この牛乳腐ってる!」という私に「ごめん、ごめん、腐ってた? お口洗って正露丸飲んだら大丈夫、大丈夫」と薬箱から正露丸を取り出す母。

 当時、何か変なものを食べたときやお腹の調子が悪いときは、いつも正露丸を飲まされた。歯痛にも正露丸を詰められた。子どもながら私も、正露丸はよく効く薬だなと感心していた。

 最初の外科研修先だったS救命救急センターに勤め始めて数ヵ月後、私は「先生のお父さんは正露丸を作ってるんだって? あの薬はよく効くな、コレラにだって効いてるよ」とOセンター所長に声を掛けられた。

 さらに「アフリカでの海外医療支援ではスタッフはずいぶん正露丸の世話になってるんだ。何でそんなに効くのかな」と質問が飛んできた。とっさに「主成分の木クレオソートに殺菌効果があるからだと思いますが」と答える私に、「特に腹痛によく効く。即効性があるし。しかし殺菌効果では腹痛を止める説明にはならないな」とO所長はおっしゃる。

 確かに腸内を殺菌して悪玉菌を減らしても、すぐに痛みが収まる理由にはならない。腹痛を止めるには腸の緊張を取り除く必要があるのだ。トイレを我慢しているときに腹痛が起こるのと同じで、腸、特に大腸の運動が高まり、腸内圧が増して腸が伸びたり引っ張られたりすることで内臓神経が刺激され、腹痛を感じる。

 以来私の中で"正露丸はなぜ効いているのだろう"という素朴な疑問が続いた。そんなある日、たまたま開いた学生時代の薬物学実験の教科書の「マグヌステストの模式図」が目に飛び込んできた。小動物から摘出した、まだ生きている腸の両端を生理食塩水の中に紐で固定し、腸が収縮すると上の紐が地震計みたいに腸のゆれを紙に記録する。ここに正露丸成分を少量加えて腸管運動の薬理作用を見れば、腸運動に作用しているかどうかがわかるはずだ。私は即刻、"正露丸を作っている会社"の社長である父に、実験の必要性を伝えた。

 それから数年後のT病院外科外来。

「次の患者さんどうぞお入りください」と私が呼ぶと、カーテンを開き診察用のイスに中年女性のYさんが背中を丸め、お腹を押さえながらゆっくり座った。

「いかがされましたか」と私。

「昨日の夕方から胃が痛んで、夜通し調子が悪くて、朝になるとだんだん痛みが下に下がってきて、刺し込むようになってきました」とYさん。

「お熱はいかがですか」

「朝、熱計ったとき37度2分ありました」というやりとりの後、ベッドに横になってもらいながら、

「お薬は何か飲まれましたか」と私が訊ねると、Yさんは目を見開いて申し訳なさそうな表情になり「実は正露丸を飲んじゃいました、すみません」という。

「正露丸、飲まれたんですか。それはそれは…」とお腹を優しく触診する。

「ここ、痛みますか。正露丸を飲んでもよくならないときは厄介な場合がありますからね」といいながら横にいる看護師に目を合わせると、看護師は含み笑いをしている。そのとき、私の右手の人差し指と中指が右下腹部の硬さを感じた。

 その日、Yさんの急性虫垂炎の緊急手術が行われた。

 木クレオソートは1832年ドイツ人のカールライヘンバッハにより開発され、食肉保存用の殺菌剤として使用された後、外用消毒剤として人体に用いられた。

 スモークサーモンで知られるように、動物の肉や魚肉を保存するために木を加熱してその蒸気を使用した。生活の知恵である。そのスモークのエッセンスを抽出するための工夫として、蒸気を水に閉じ込め、沈殿してくる成分を、重さや蒸留温度で分け、一番殺菌効果のあるものを探そうとするのは誰しも考えることである。木クレオソートはそのようにして作られた。

 腐った肉を食べた人に、医者が木クレオソートを飲ませることを考えただろうことも想像できる。そこで、腹痛と下痢に効果が認められ、医薬品になった歴史が見えてくる。

 まさしく"殺菌剤が腹痛、下痢を改善する"という論理の飛躍が見え隠れするではないか。

 後に抗生物質が開発されるまで、木クレオソートは液剤や丸薬による内服の抗菌剤として欧米を中心に使用され、赤痢や結核など感染症の特効薬として全世界に広まったのである。アメリカの南北戦争では疫病による消化器症状の改善で高く評価されている。

 日本へは、1880年代に、ドイツ留学した森鴎外らにより持ち込まれ、日露戦争を契機に"征露丸"として旧日本軍で大々的に使用された。その後も一般用胃腸薬としてアジアを中心に大きな市場が形成されている。

 O所長に指摘された疑問は、正露丸の正しい薬理効果の解明に大きく役立つ契機となり、父の会社ではあれ以来、正露丸の主薬効、木クレオソート研究が積極的に行われた。

 この数十年の間で、木クレオソートの作用メカニズムの究明が進み、内服では腸での殺菌効果はほとんどなく、腹痛への効果は大腸の過剰運動を抑えること、軟便、下痢に対しては腸からの水分分泌を抑えることが明らかとなった。

 かつては殺菌剤が腹痛、下痢を治すと思っていた外科医の私も、今では頭のもやもやが解け、"正露丸の効くワケを"自信を持って説明している。

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☆ 正露丸は服用させないでください 「かどの三条こども診療所長 奥原賢二」より



















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最終更新:2017年03月14日 15:07