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■ ユートピアは幻想じゃない、必需品── アイデンティティと対峙する歌姫ビョークが自らつくりだす理想郷 「WIRED(2017.12.9)」より
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世界各地の文化のなかで、歴史のなかで、いつでもわたしたちは理想郷=ユートピアを目指してきた。音楽家・ビョークはユートピアという言葉を、現代社会や集団主義の否定や、理想論の追究の延長線上に置いているわけではない。「トランプ時代」という闇のなかで毅然と歌う、ビョークのユートピアとは。(『WIRED』日本版Vol.30「IDENTITY デジタル時代のダイヴァーシティ」特集より転載)

11月24日に発売されたニュー・アルバム『ユートピア』。2017年はフジロックのヘッドライナーを務め、9月にシングル「the gate」を配信、限定12インチ・シングルレコード(片面のみ収録)でリリースしていた。

2017年夏、都内の喧騒がかき消された静かな部屋に、ビョークは現れた。着物をモチーフにした淡紅藤の服の彼女は、プロデューサーのArcaや仲間と雑談を楽しんでいる。しばらくしてビョークは、明け方にできたという最新作を聴かせてくれた。タイトルは『Utopia』だとささやくような声で言った。

ビョークという音楽家は、技術的に誤解されがちだ。「時代にふさわしい」テクノロジーを用いているため、音楽消費のIT化と制度化を目指す音楽産業のなかで、イノヴェイションとして語られることが少なくない。だが大事な点は、ゼロから何かを創成する「クリエイション」が彼女の理念であることだ。すなわちユートピアさえも「クリエイト」してしまうのである。

テクノロジーがわたしに追いつくのを待ってる

「テクノロジーはソリューションじゃない。それは何度も言ってきたこと。テクノロジーはよいものを生み出せるけれど、お金を稼ぐことも誰かを不幸にすることもできる」

ビョークは、人間らしさや自然な感情をテクノロジーがいかに実現できるかを探っているという。

「技術的な新しさを追いかけ続けることは無駄。テクノロジーがわたしに追いつくのを待ってる。人間らしさを増幅させる力に興味がある。ラップトップは、薄暗くて窓のないスタジオからわたしを解放してくれた。好きな庭や森のなかで、自然を感じながら好きな音楽に没頭できる。これこそ革新的なこと。

『Volta』のツアーから卓上シンセサイザーのReactableやタッチスクリーン・デヴァイスを使ったのも、表現に可能性を感じたから。子どものころ、音楽理論の本を読まされて、まったく心が動かなかった思い出があるの。メロディやハーモニーが物理的すぎたのね。でもタッチスクリーンを使えば、表現や学習に感情と感覚を足すことができる。テクノロジーはもっと人間性とつながらなくてはならない」

こうした技術主義な時代に対するビョークの態度は、最新作『Utopia』において、より政治性を強く帯びてくる。「イデオロギー的と思われがちだけど」と前置きして、ユートピアについて次のように語ってくれた。

PHOTOGRAPH BY TIM WALKER STYLED BY KATY ENGLAND

「ユートピアは世界各地の文化のなかで各々の理想像がある。たとえば中世ヨーロッパ時代の修道院。世界から隔離され、本と知識に囲まれて、ある意味、それはユートピアだといえるかもしれない。社会主義、共産主義、資本主義も、始まりはユートピアを目指していた。歴史上のあらゆるユートピアに関する本を読み漁ったの。ユートピアという言葉は、わたしを前向きにしてくれた。

ポストアポカリプスのなかに居場所を見つけて、ゼロからすべてを見直せた気分ね。いまは、Airbnb、Uber、Skypeが使えて面白い社会になったけれど、だからこそ個人の視点から社会のあり方を考え直す必要があると思う。技術、資本主義、現代社会とは何なのか。右か左かで人のイデオロギーが分類される時代は終わり。そして個人が自らの価値観を定義する時代が始まったの」

ビョークはユートピアという言葉を、現代社会や集団主義の否定や、理想論の追究の延長線上に置いているわけではない。自己のアイデンティティと対峙し、個人が理想とする未来を各々で創造するための意識変化の原動力だという。

「もっと個人の楽観主義を信じる意志をもたなければいけない。多くの人が悲観主義や恐怖心に駆られているの。社会が闇を意図的につくろうとしているから、明るい未来を意識することが大切。『Utopia』は、誰も信任していないトランプ時代と政治に、オルタナティヴなアイデアを示すという意味もある。それがわたしの探す未来の社会だから。

トランプ当選後、空っぽの気分に陥ったわ。地球上で最も強大な政府はもう信用できないって。いったい誰が地球や環境問題を救うというの。だからDIYで行動するしか方法はないと悟った。わたしたち自身が未来をつくらないとたどり着けないの。もうユートピアは幻想じゃない、必需品なの。未来に向けてサヴァイヴするために必要なものよ」

「ポスト・トゥルース」「オルタナファクト」が時代を形成するいま、観念的な未来に期待するのではなく、未来への生き残り方を模索する時代が来たと、ビョークは教えてくれた。

「富の公平な分配を実現できるとすれば、それはインターネットが可能にするはず。貧富の格差は早く止めないと、革命が起こるでしょう。フランス革命規模のインパクトのね。でも、ハッキングやDIYで、新しいポジティヴなことを生みだす時代はもう始まっている」

自らユートピアを創造することが、個人の未来であり、アメリカ的な陽気さに縛られない若者が向き合うべき現代的な問いといえる。そして、それこそが『Utopia』でビョークが仕掛ける、未来への新たな挑戦なのだ。

ビョーク|Björk
1965年生まれ。シンガー・ソングライター、音楽プロデューサー、女優。チベットやコソボにおける独立運動に対する言及でも知られ、2016年には自身のDJパフォーマンスに対する批判に対し、音楽業界におけるセクシズムを告発するかたちでメッセージを発信し、話題となった。17年11月にはアルバム『ユートピア』を発表。本作ヴィジュアルでは、女装アーティストのハングリーらとコラボレーションしている。


■ Björk、新作『Utopia』から着物を着用したタイトル・トラックのMVが公開 「Spincoaster(2017.12.11)」より
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Björkが先月世界同時リリースした待望のニュー・アルバム『Utopia』から、タイトル・トラックのMVが公開された。


本MVは、12月1日(金)より表参道ヒルズにて開催されていた、日本の伝統着物と革新的なテクノロジーを融合させたアート・エキシビション“KIMONO ROBOTO”の会場限定で公開されていたもの。この度全世界にて解禁となった。

エキシビションでは、Björkが今回のMVで着用した、2年の歳月をかけ制作されたという着物など、13点の着物が展示されており、開催初日にはBjörk本人がSkypeを通して記者会見を行なっていた。プロジェクトに参加した理由について彼女は、「着物は以前から着ていて、色んな巡り合わせでコラボレートが実現したと思っています。共通の愛情が生み出した結果です」と話していた。

アルバムからはすでに「The Gate」と「Blissing Me」のMVが公開されており、今回もBjörkらしいファンタジー感満載の仕上がりとなっている。ちなみに「The Gate」においては米Pitchforkの年間ベスト・ビデオ1位を獲得している。



björk 『utopia』
Release Date:2017.11.24 (Fri.)
Label:One Little Indian Records / Hostess
Cat.No.:HSE-6486
Price:¥2,490
Tracklist:
1. Arisen My Senses
2. Blissing Me
3. The Gate
4. Utopia
5. Body Memory
6. Features Creatures
7. Courtship
8. Losss
9. Sue Me
10. Tabula Rasa
11. Claimstaker
12. Paradisia
13. Saint
14. Future Forever

※全14曲収録
※歌詞対訳、ライナーノーツ(新谷洋子)付き














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最終更新:2018年01月02日 16:00
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