ANNnewsCH
2023/08/14
4年ぶりの開催となった徳島県の阿波おどりで、異変が起きていました。これまでメインの会場で観客を沸かせてきた老舗の踊り手グループが、今回は出演を認められない事態となりました。一体、何が起きたのでしょうか?
■1人あたり20万円「プレミアム桟敷席」設置
4年ぶりの本格開催となった阿波おどり。会場に設けられた2つの有料演舞場には今年から、新たに設置されたものがあります。
それは、1人あたり20万円の「プレミアム桟敷席」です。
ウナギや阿波牛など地元の食材をふんだんに使った料理を食べながら、踊り連の解説付きの「特等席」で、踊りを楽しむことができます。
利用者の中には外国人も多く、実際に席を利用した人は次のように話しました。
台湾出身 プレミアム席の利用客:「正面からのインパクトがすごくあって、安いとは思いませんでしたが。だけど、価値はあったなと思う」
■老舗踊り子グループ 会場に入れず…なぜ?
今年も多くの観光客が詰め掛け、踊り子の憧れの場である有料演舞場で、ある問題が発生していました。
「本家大名速」連長 清水理さん(75):「もう怒りというよりは、あきれたというか。『あきれた』という言葉が、もう9割ですね」
50年以上、阿波おどりに関わってきたベテランですが、初めての事態に見舞われているといいます。
それは今回、これまで参加し続けてきた2つの有料演舞場などへの出演が認められなかったというのです。
清水さん:「選考があって、159連あったうちの4連だけ選考漏れをした」
1977年に誕生した「本家大名連」は総勢60人の大所帯。殿様や姫、忍者などに扮したユニークな踊りで知られる人気の踊り手グループです。これまで数十年間、有料演舞場への出演を続けてきました。
一体なぜ長年、出演を続けてきた老舗の踊り子グループが、急に参加できなくなったのでしょうか?
実行委員会:「踊り手グループで作る2つの主要団体に所属していることなどの申し込み条件を満たしていないことや、日程が調整できないことなどを考慮し、今回は出演を認めませんでした」
■娘役抜擢の14歳 複雑な胸の内「すごい残念」
実行委員会は、申し込み対象として「阿波おどり振興協会及び、徳島県阿波踊り協会に所属する連」としていましたが、本家大名連はここ数年、どちらにも所属していませんでした。
しかし、清水さんは、「過去に座席の有料化について、疑問を呈したことも影響しているのではないか」と話します。
清水さん:「4日間の中ですべてダメだったっていうのは、この歴史の中で初めてだったので、ちょっと不思議だと思う。約45、46年踊っていますので、ずっとやってますから」
有料演舞場など3演舞場の受け入れ枠は4日間で合わせて400ほどあり、なかには複数回踊ることができる連もあるといいます。
4連だけが出演を認められなかったことに、地元からは疑問の声が上がっていました。
地元の人:「本家大名連さんは有名な連です。4連だったら(調整に)融通が利くと思うけど、これをはめてもらえないのはおかしい」
今年から「本家大名連」の姫役に抜擢(ばってき)され、有料演舞場で踊るのを心待ちにしていた大石菜心美さん(14)は複雑な胸の内を明かしました。
大石さん:「すっごい踊りたかったです。いっぱい人がいてくれるのが一番うれしいので、すごい残念やなぁ」
■本家大名連は会場から離れ…薄暗い公園へ
こうしたなか、迎えた初日。街全体が阿波おどり一色に染まりました。
初めて訪れたという外国人観光客は、次のように話しました。
カナダからの観光客:「素晴らしい。すべて面白い。そして、美しい」
スタートして約1時間が経過しました。辺りがうっすら暗くなってくると、有料演舞場への出演を希望していた時間に本家大名連は会場から離れていきます。どこに向かっているのでしょうか?
一行がたどり着いたのは、会場から1キロほど離れた薄暗い公園の広場でした。
■「世界で一番幸せな男」会場外の公園で踊り
ここでひと息つくのかと思いきや、なんと会場に負けんばかりの勢いで踊りを披露し始めました。
清水さん:「本当の阿波おどりというのは、皆さん方と踊るのが阿波おどりでございます。ただいまからは皆様方と一緒に踊ります」
踊り始めはまばらだった観客が次から次へと増えていき、気付けばあふれんばかりの人の数になりました。
この光景を見た清水さんは思わず…。
清水さん:「世界で一番幸せな男です。もう感無量」
そして、最後には踊り子と観客が一緒に舞い、公園は大盛り上がりとなりました。
清水さん:「やっぱり楽しいね。本当に今回の阿波おどりだけは、心を打ちましたよ。50年やってきたなかで、令和5年8月12日が一番印象に残りました」
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遠藤市長が開幕直前の8月10日に阿波おどり振興協会へ出した“恫喝文書”
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去年までは毎日最後に、1500人の踊り手がおどる「総踊り」がフィナーレとなる名物だったが、今年は突如、中止になった。
このために毎年、初日は桟敷席はどこも満席となるのだが、今年は空席も見られた。総踊りが中止になった理由は、これまで報じられているように徳島市の遠藤良彰市長と阿波おどりの有名連をたばねる、阿波おどり振興協会が対立したためだ。
そして総踊りが中止となったため、有名連(阿波おどり振興協会等に加盟する阿波踊り連33連のこと。卓越した技量を披露するこれらの連は、前夜祭や選抜阿波おどり大会などの大型イベントへ参加)が分散。4つの演舞場で踊る形に変更されたのだ。
これまで総踊りは、阿波踊り期間中、南内町演舞場で午後10時から30分間、阿波おどり振興協会に属する1500人が太鼓、三味線、カネの音に合わせて一糸乱れぬ踊りを披露していた。
だが遠藤市長は、「有名連が分散して踊れば、南内町演舞場以外のチケットも売れるはず。だから総おどりは中止する」との方針を打ち出た。しかし、阿波おどり振興協会の山田実理事長らはこれに強く反発し、こんな爆弾発言が飛び出した。
「遠藤市長は、われわれとの話し合いにすら応じない。強権的な手法で中止を断行した。そんな市長を政治的な思惑で後押ししているのが、地元の徳島新聞と自民党有力国会議員。この問題の背後には阿波踊りの利権がある。このままでは引き下がれない。13日午後10時にわれわれの手で“総踊り”を復活させる」(同協会幹部)
阿波踊りが開幕した12日に、山田理事長らが「遠藤市長にいじめられている、阿波おどり振興協会です」と観客の前でしゃべりだすと大きな歓声。
「どこかで、総踊りができないかと考えている」と訴えると、拍手喝采で総踊りへの期待の大きさ、支持がうかがえた。開幕日には桟敷席からもこんな声が相次いだ。
「総踊りを期待してきたが、ないと拍子抜け。わざわざ足を運んだのに…」
「総踊りがないと聞いて、チケットを払い戻してほしかった。それができないからしょうがなく見に来たが、パッとしないな。総踊りをさせない徳島市の運営はおかしい」
中止が決定している総踊り。阿波おどり振興協会がこだわるには、理由がある。もともと、総踊りは南内町演舞場の集客が芳しくないと、徳島市などから相談を受けて、阿波おどり振興協会が独自に考えて、大きく発展させた経緯がある。
それなのに開幕直前の8月10日、山田理事長ら阿波おどり振興協会の幹部のもとに、<安全、安心な阿波おどりの実施について(通知)>という文書が、阿波おどり実行委員会の遠藤市長から届けられた。
<協会が総おどりと称する大規模なおどりを実施するとの情報を仄聞いたしました><大規模な踊りを実施することは、安全、安心に観点から様々な危険性が生じる><そういった事態を引き起こさないためにも、くれぐれも規律ある行動を>と釘を刺すように記されていたのだ。阿波おどり振興協会協会の山田理事長はこう激白する。
「はっきり言うて、ブチ切れました。情報の出所も示さずに、ウワサ程度に聞いたからと公印まで押した文書をいきなり送り付けてくる。権力を笠に着るやり方ですよ。阿波踊りは日本の皆様がご存知の通り、踊る阿呆に見る阿呆が根本にあります。自由を謳歌できる、そういうお祭りなのです。この文書は、遠藤市長の許可なしに、踊るなという警告、脅しです。ずっとわれわれはいじめられてきた。それでも耐えてきましたが。もう我慢も限界です」
そして阿波おどり振興協会は急きょ、対応を協議。13日夜10時に「総踊り」を挙行することを決めたという。山田理事長は決意をこう語った。
「総踊りとなるかどうかは別ですが、踊る阿呆に見る阿呆、阿波踊りの原点に立って踊りたい。遠藤市長に止める権限はありません。協会の有志で、これぞ阿波踊りと言われるものをお見せしたい」
遠藤市長は、13日夜に総踊り決行との情報を聞き、緊急に会合を持ち、阿波おどり振興協会に中止するように申し入れている。
13日夜が今年の阿波踊り最大の山場となりそうだ。(今西憲之)
開催まであとわずか、だが…
徳島の夏の風物詩である阿波おどりが、主催者である徳島新聞の杜撰な運営によって、実に4億3000万円にものぼる巨額の赤字を積み上げているーー「週刊現代」6月3日号で、阿波おどりの運営に関する疑惑(「この夏、『阿波おどり』に中止の危機〜徳島の地元財界は大騒ぎ!」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51853)が報じられて、およそ2ヵ月が過ぎた。8月12日の開幕まで、残り2週間を切っているなか、なにか状況に変化はあったのだろうか。
近年、問題となっているのが、徳島新聞による阿波おどりの「チケット買い占め」である。まず、徳島新聞とともに阿波おどりの運営にかかわっている、徳島市観光協会幹部に解説してもらおう。
「徳島新聞は近年、人気席を中心に毎年2〜3万枚のチケットを確保しています。そのため、一般発売が始まっても販売直後に売り切れてしまう状況です。しかも、徳島新聞に流れた分は売り上げなどの詳細がわからないので、全てのチケットをオープンに販売する場合と比べて収益が低くなっているのが実情です」
さらに地元では、「徳島新聞が看板広告の集稿・制作を独占し、割高な手数料を取っている」「観光協会が資材を保管する倉庫を徳島新聞が『又貸し』する形になっている」といった指摘も出ている。
地元の市政関係者は、「『週刊現代』の報道以来、徳島は大騒ぎです。その後、フジテレビの『とくダネ!』でもこの問題が取り上げられたこともあり、阿波おどりの運営の実態が全国に知れ渡ることとなりました。7月に入ってからは、関西のテレビ局なども取材に入っています」と話す。
座席配分表を公開する
「週刊現代」に記事が掲載された直後、6月15日の徳島市議会では早速この問題が取り上げられた。すると驚くべきことに、徳島新聞は翌16日の紙面で「阿波おどり事業 累積赤字4億3000万円 演舞場改修など要因」という見出しで、赤字がさも初めて判明したかのように報じたのである。
しかし徳島新聞は、今年の阿波おどりも、運営体制を見直すことなく「例年通り」に実行しようとしている。
筆者は今回、今年8月12日から15日に開催予定の、阿波おどりの座席配分表の一部を入手した。オンラインでのチケット販売を担当する企業が取りまとめ、阿波おどり運営にかかわる関係者の一部で共有されている内部資料である。
阿波おどり本祭は、徳島市街中心部の街頭6カ所と、多目的ホール「あわぎんホール」の計7会場で行われる。特に観覧者の多い紺屋町や藍場浜など4つの桟敷演舞場のチケットは、総数10万枚ほどが用意されている。
屋内会場の「あわぎんホール」で行われるのは、技術レベルの高い「連(踊り子の団体)」のおどりを観覧できる「選抜大会」という枠。下記の座席表は、その某日程のものだ。
「新」と書かれているのが、徳島新聞が押さえている座席。800あまりのキャパシティのうち、実に半数近くの約400席が占められている。
屋外の演舞場を観覧するための桟敷席も、同様の事態になっている。徳島市役所にほど近いメイン会場の一つ、南内町演舞場(一部)を見てみよう。紫色になっているのが、徳島新聞の押さえた座席である。
たった2分で完売、苦情が殺到
徳島市議会で阿波おどりの運営改善を主張する岡孝治市議は、怒りを露わにする。
「全日程・全会場を合わせると、徳島新聞は桟敷席(街中の屋外観覧席)だけで2万席近く押さえています。7月1日の朝10時にチケットの一般販売が開始されましたが、一般向けに割り当てられたチケットが極めて少なかったため、10時2分にはもう売り切れてしまった。おかげでその後、観光協会には苦情の電話が殺到しました」
こうしたことが常態化しているにもかかわらず、近年では実際に阿波おどりが始まってみると、座席に空きがみられることも珍しくないという。徳島新聞は、確保したチケットをいったいどうしているのだろうか。前出の観光協会幹部はこう話す。
「徳島新聞が確保した席は、同社のグループ企業や取引先などに優先的に販売されていると聞きます。また、会場に広告看板を出したスポンサー企業に対して、招待券として配ったりもしているようです。
最終的には、徳島新聞からチケットの売り上げが支払われますが、徳島新聞がどの席を誰にどれだけ売って、何枚売れ残ったのかといった詳細は、毎年明らかにされていません」
岡議員は、今年6月に阿波おどり実行委員会の委員に就任して以降、観光協会から資料を入手して「週刊現代」の記事内容を検証したという。
「2016年度の資料に目を通しただけでも、徳島新聞が人気席のチケットを占有している問題については、報じられたとおりでした」
そのため、岡議員は「阿波おどりの運営に関する悪しき慣習が浮き彫りになった。今こそ改革のチャンス」として、7月6日、実行委員会の米田豊彦委員長(徳島新聞社長)と観光協会の近藤宏章会長に対し「早急に阿波おどり実行委員会を開催するよう要請する」との書面を送付した。実行委員会で改めてチケット配分の実態を明らかにし、場合によっては再検討すべきだと主張したのだ。
しかし、それに対する回答は、「実行委員長(徳島新聞米田社長)の日程調整がつかないので、委員会は7月28日に開催することになった」という木で鼻をくくったような内容だった。岡議員が続ける。
「例年は6月に行われる委員会で、チケットの配分が形式的にせよ話し合われていたのですが、今年はそれさえ行わず、勝手に徳島新聞が配分を決めたのです。7月1日の一般販売に続き、7月15日からは観光協会と徳島新聞社が押さえているチケットの販売が始まる予定だった。
委員会の開催を遅らせ、『チケットはもう売れてしまったので、今年も例年通りでお願いします』と言うつもりなのでしょう。これだけ全国に知れ渡っても、何事もなかったかのように進めようとしているのです」
食い違う主張
阿波おどりを徳島新聞と共催する観光協会内部でも、こうした現状は問題視されている。前出の協会幹部が内情を打ち明ける。
「問題が報じられ、表面化した以上、我々も『一刻も早く実行委員会を開催すべきだ』と主張してきました。しかし、徳島新聞は『米田社長の日程が取れない』の一点張りで、頑として譲らなかった」
挙句の果てに、「7月28日に開催する」と明言していたはずの実行委員会は筆者の取材後、徳島新聞からの通達が出されて中止が決定し、開催されることはなかった。
徳島新聞の煮え切らない態度に対して、岡議員は7月14日、事実上チケット販売の差し止めを求める仮処分命令申立書を徳島地裁に提出している。「徳島新聞が人気席を大量に確保していることなどが、実行委員会の定める事務処理要項に反する」として、事務処理の停止を求めたものだ。
この申し立てが7月25日に徳島地裁に却下されたことを受けて、徳島新聞は翌7月26日から3日間にわたり、「阿波踊り運営に関する徳島新聞者の見解」と題する記事を朝刊社会面で掲載した。
その中には、
「申し立てでは、実行委を経ずにチケットを販売しているとしていましたが、実行委は5月19日に開催しています」「(チケットの確保は)阿波踊りを盛況かつ円滑に運営するのが目的で、一部の報道にあるような社の利益追及、利益還流のためではありません」「今夏は人気のない演舞場の席をあえて大量に確保するなど、主催者としてチケット販売の促進、収益向上に十分貢献している」「観光協会担当者に連絡したところ、(チケットに関する)問い合わせは多いが、苦情はわずかとの報告でした」
などの記述がある。しかし、観光協会関係者にこの記事内容を改めて確認したところ、下記のような反論があった。
「5月19日に実行委員会が開かれたのは事実ですが、そこでチケットの配分は話題に出ませんでした。また、記事には徳島新聞が現在1万4871枚を確保していると書いてありますが、こちらが把握している同社の占有枚数はおよそ2万枚です。一般販売後の苦情も、わずかなどというものではありませんでした」
今回筆者は、徳島新聞に対して「阿波おどりのチケットを大量に押さえている事実はあるか」「『週刊現代』の報道内容が事実に反すると主張するならば、具体的にどこが事実に反するのか」「例年はチケット販売開始前に実施している実行委員会の配券会議を、今年は行っていないが、これは運営綱領に違反するのではないか」などの質問を送付した。
同社からの回答があればそのまま掲載するつもりだったが、「(週刊現代の)阿波おどりに関する記事については、事実に反する内容が多々ある」としたうえで、「個々の案件に関してのコメントは差し控えさせていただきます」「『阿波おどり』に関しましては、主催者として徳島市観光協会とともに協議を重ねながら、適切に運営しているものと考えております」と回答するのみで、具体的な説明はなかった。
グループ企業出身の社長は…
さらに、徳島新聞だけでなく、徳島市の遠藤彰良市長も事態の改善を図る気がないようだ。6月の市議会でも、市議からの阿波おどりに関する再三の質問に対して、市長は答えようとしていない。
「実は、遠藤市長は徳島新聞グループのテレビ・ラジオ局である四国放送の出身なんです。もともと四国放送でアナウンサーをやっていた遠藤氏が市長になれたのも、徳島新聞の支援があったおかげですから、市長には何も期待できませんよ。
それどころか市長は、昨年11月22日に観光協会の近藤会長のところを訪れて、『これは市長として言うが、(観光協会会長を)辞めてほしい』と繰り返し発言し、近藤会長に辞任を迫っています。これも徳島新聞の意向を受けてのものだ、と地元では言われています」(前出・市政関係者)
このままでは、遠藤市長も徳島新聞と共犯関係にあるのではないか、と疑われても仕方がない。
阿波おどりは、県と市から合わせて年間2600万円余りの補助金を受けている。本来であれば高い公益性と透明性の求められる事業のはずだ。徳島が誇る、歴史と伝統ある阿波おどりはこうして、今年も「食い物」にされてしまうのだろうか。
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