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■ 米国で共感を呼ぶ「修理する権利」と、歩み寄るメーカーの思惑 「WIRED(2019.07.16 TUE 10:00)」より
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ユーザーが保有する機器を「修理する権利」を求める運動が米国で広がっている。すでに19の州議会で法案が出されているなど、修理に必要な情報や部品、コストに関する決定権をメーカーが握っていることに、多くの人々が反発を強めているのだ。そもそもなぜ「修理する権利」が重要なのか。そしてメーカーの思惑は──。米消費者権利団体US PIRGの「修理する権利キャンペーン」ディレクター、ネイサン・プロクターによる寄稿。

TEXT BY NATHAN PROCTOR
TRANSLATION BY RYO OGATA/GALILEO


初めに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうしてわれわれは勝つのだ──。マハトマ・ガンジーは、そんな有名な言葉を遺している。

この言葉をわたしは、これまで14年かけて取り組んできたさまざまな運動のなかで、何度も耳にしてきた。保育園の利用推進や公平な徴税、プラスティック汚染問題などにおいて、まとめ役を担ってきたからだ。

壁に突き当たったときや、敵対勢力のほうが優勢に見えるとき、運動をリードする人々はヴォランティアたちにこの言葉を伝える。過去に多くの人々が困難に直面し、乗り越えてきたことの象徴としてだ。

実際にガンジーの言葉通りになることは多い。しかし“敵”のなかには、もっと抜け目なく別のやり方を選ぶ者もいる。その場合、ガンジーの言葉の最後がこう変わることになる。

初めに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。だが、最後の手段として“懐柔”してくるのだ──。

こちらの言い回しやメッセージを相手はとり入れるが、実際にはこちらの要求のわずか1割くらいにしか応えない(まったく対応しないこともある)。1歩にも満たないようなステップを鳴り物入りで持ち出してくるのだ。

相手がそうやって懐柔してくるときには理由がある。運動の決定的な部分においてこちら側が「勝利」しており、その問題に関する世論が形成されつつあるのだ。

決定権がメーカー側にある現状
「修理する権利」の運動は、現在この状態にある。だが現状について語る前に、まずはこれまでの経緯を説明しておきたい。

企業は人々の修理する権利を妨害するために、さまざまな戦術を使うようになってきている。修理用の部品を売らない。売る場合も、かなり高価なものにする。マニュアルや図面といった修理に必要な情報は公開しないし、オープンソース化もしない。

そしてメーカーはソフトウェアを“修正”し、許可されていない修理をユーザーが行うとデヴァイスにロックをかける。そしてメーカーがロックを解除するまで使えないようにするのだ。

そうなると、客はどんなトラブルにおいてもメーカーに頼るしかない。そしてメーカー側は、コストを好きなように請求できる。修理が有料かどうか、どんなときに有料になるのか、そして金額はどの程度なのか──。そういった判断のカードを、すべてメーカー側が握ることになる。

共感を呼ぶ「修理する権利」
結果として、壊れたら修理せずに新しいものを買うことが増えている。

国際連合と循環経済加速化プラットフォーム(PACE)による最近の報告書によると、いま廃棄物のなかで最も増えているのが電子廃棄物だ。それだけではない。電子廃棄物は鉛やクロム、有害な難燃剤などを含んでおり、毒性がかなり高いことが多い。

だからこそ、修理する権利を求める運動は人々の共感を得ている。600ドルのデヴァイスの修理見積額が500ドルだったり、最新のアップデートでスマートフォンの動きが遅くなったりといったことがあまりに多いのだ。そして農家は農業機械を修理するためにディーラーにお金を払い、農機を動かすソフトウェアのロックを解除する必要があることに、ずっとうんざりしている。

全米で議論が噴出
「修理する権利」に関する法律が、いま全米各地で議論され始めている。修理に必要な部品やサーヴィスの情報を人々が手に入れやすくするようメーカーに求める法律が、2019年の現時点ですでに19の州議会で提案されているのだ。ネブラスカ州、ハワイ州、オレゴン州、ニューハンプシャー州などで人々が求めているのは、単に自分の所有物を修理したいということである。

動きは速いとは言えない。修理する権利について本会議場で投票をした州議会はまだない。メーカー側はあらゆる手を使って修理に関する疑念を流布し、不安をあおっている。

われわれは価値総額の合計がとんでもない額になる企業たちを日々相手にしているが、前進はしている。それに、話をしてくれる企業内部の人たちによると、素っ気なかったメーカー側も、いまでは不安になってきているという。

だからこそ、修理する権利を取り込もうとするところが出始めているのだ。

歩み寄るメーカー
農機メーカー各社は18年に、修理する権利に関して“妥協”することで、ディーラー各社と合意に至っている(つまり業界として合意がとれたわけだ)。これを受けて業界団体として設立された「R2R Solutions」は、制限付きではあるが、顧客が農機の修理に必要なものを入手できるようにする自主協定に基づくものになる。

その際に、わたしたちが提起しているメッセージとストーリーを流用しているが、修理対象をメーカー側がコントロールする構図は変わっていない。条件については、やはり向こうが決めるのだ。

サムスン電子は、利用できる「メーカー認定」の修理事業者の数を増やしている。ユーザーにしてみれば、修理の際の選択肢が増える。それでも主導権はサムスンにある。サムスンは特定の製品やバグについては、ユーザーの「修理」をブロックすることができる。また、サムスンの公式リソースにアクセスできないショップは依然として多い。

業界のリーダーであるアップルはどうか。アップル以外の技術者がバッテリーを交換した場合はサーヴィスを提供しないという同社のばかげた慣習は、最近になって停止された。

「そうしてわれわれは勝つ」と言えるまで
真の改革に向かうなか、各社からこうした小さな歩み寄りがもっと出てくることを期待している。全米の大部分で州議会の活動がピークを迎えるなか、そうした歩み寄りが見られるかもしれない。

修理と選択肢のさらなる拡充に向けた歩みの一つひとつが重要だ。アップル、サムスン、農機大手のディア・アンド・カンパニーなどが提供する修理の選択肢が増えることは、無価値なわけではなく大切なことだ。修理の権利を主張するわたしたちの取り組みが有効であることの証拠でもある。

しかし、いま求めているのは、何を誰が修理するのかをこちら側で決められるようになることだ。メーカーがユーザーに修理に関する本当の自由を与えることなく、うわべのメッセージだけ取り込もうとしているのは、メーカー側もわたしたちの主張の正しさを理解していることを示している。

わたしたちの活動が、ここで立ち止まることはない。「そうしてわれわれは勝つ」と言えるところまで、今後も進んでいきたいと考えている。

ネイサン・プロクター|NATHAN PROCTOR
米国の消費者権利団体US PIRGの「修理する権利キャンペーン」ディレクター。Twitterアカウントは@nProctor。


■ 【まとめ】修理する権利 Appleが自ら問題提起した権利 法整理に向けた動きの加速 「@ゲームスタイル(2018-03-11)」より
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iphoneが急に動きがカクついて画面がタッチを受け付けなくなったり、勝手に電源が落ちるようになってから早1年が経ちました。問い合わせを4~5回、修理を2回行っても一向に良くならないまま、初期不良の Wi-Fi 接続不良も直らないまま僕のiphone6+は8に置き換わっていました。

僕がこの「修理する権利」という言葉を耳にしたのは3年前、2015年に遡ります。日本ではあまり聞きなれない言葉ですね、具体的に何を指す言葉なのでしょうか?

(※mono....中略)

通常、電化製品にはサポート期間というのが設けられています。これは通常、テクノロジーの進歩に製品性能が遅れをとったり、老朽化で発火する恐れがあるという理由で買い替えを促すための施策であることが知られています。メーカーにとっては、いつまでも古い製品のパーツを製造し続けることは膨大なコストを生み出すことになります。なので7年から長くて15年程度で部品の製造は終わってしまいます。その期間を過ぎても使い続けたい製品がある場合、自分で修理せざるを得ないというのが現状です。

しかしメーカー側はこの「自分で製品を修理する」ということを好ましく思っておらず、これは洋の東西を問わず同じであるようです。ここ1~2年の間で、こうした「修理する権利」についての法改正運動が拡大しているとともに、Apple社への批判の声が高まっています。2017年末、世界中のiphone端末で電池劣化によるクロックダウン、つまり計画的陳腐化を消費者に対して秘匿していたとして批判が相次ぎ、捜査当局が調査に乗り出す事態になりApple社が謝罪しました。我々が使っている製品は常にこのような事態を引き起こす可能性を孕んでいます。計画的陳腐化は新製品の購入促進につながるため、ユーザーシェアの高い企業ほど効果的に働きます。Appleのように製品のクオリティが高く世界中にユーザーをもつ企業がこのようなチープな不正手段を行うに至った経緯が非常に気になります。そしてもう一つ、Appleは今回のテーマである「修理する権利」について全社を挙げて猛反対しています。

なぜメーカーは「修理する権利」を毛嫌いするのでしょうか?答えは利権です。電池が発火する怖れだのユーザーが怪我をするだのといって修理する権利を拒む企業側の回答は信憑性を欠いています。利益最大化と合理化を旨とする大企業にとってはユーザー保護が優先課題にはなり得ない、すでに著作権保護で守っている製品部品詳細図や分解用マニュアルを公開すると、そこに付帯した高額な修理サービスを価格競争に巻き込むことになり、収益率が下がってしまう。「修理する権利」の法案撤廃に向けて何億ドルも費やして潰しにかかる本当の理由はここにあります。

廃案のためのロビー活動については別記事にまとめようと思っています。

Apple社にしてみれば本当は3500円で十分な利益が出る電池交換を9500円もぼったくっています。しかもほぼ強制的にデータ消去するというオプションつきです。ちょっと部品が壊れただけで数千円から数万円と高額な修理費用・部品代を請求されます。やっぱり強制的にデータ消去を行うオプションがもれなくついてきます。これが独占状態が緩和されることによって市場競争力により安価でよりよいサービスに変化するでしょう。

(※mono....中略)

修理とは企業が提供するサービスの一部です、なにも反対するのはApple社に限ったことではありませんし、農機具メーカーや家電メーカーなど、製品を製造販売している会社は反対します。誰でも直せる状態にすることは企業にとってマイナス面が大きいからです。修理マニュアルを開示すると思わぬ問題をユーザー側に指摘されたりする可能性もあります。「修理する権利」の法制定をめぐって、アメリカ国内ではすでに18の州において法案が提出されました。権利者団体とAppleの衝突が年内に本格化してマスコミの注目を浴びる日も近いでしょう。

我々ユーザにとってみれば、自分が購入して所有している物を自分で修理したり、好きなところに依頼して修理してもらうのは当然の権利といえます、それも至極真っ当な権利です。これを否定しにかかってるのならば、製品を購入した時点で分厚い契約書に沢山サインさせて、権利の一部を部分所有するくらい企業側がしないと成り立たないような話です。それって購入というよりもレンタルに近いですね。

法案が可決されれば、各メーカーは時代に先立って物品の所有からレンタルへと舵を切るかもしれません。
















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最終更新:2019年07月18日 14:26