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非国民通信の記事からコピペ(黒背景に白字はとても読みにくいので)

全然、逆襲になってないと思う
2010-01-26 22:57:22 | ニュース地盤沈下の労働市場で始まった ワーキングプアの「静かなる逆襲」(週刊ダイヤモンド)

「働かざる者食うべからず」と言われたのも昔の話。今や働く者でも満足に食えない時代になった。そんな世相を象徴するのが「ワーキングプア問題」だ。ワーキングプアというキーワードがメディアを賑わすようになって久しいが、労働環境は一向に改善される気配を見せず、むしろ景気の低迷と共にますます深刻化していく懸念が強い。そんななか、企業や行政に頼らずに、“あの手この手”を講じて立ちあがる労働者が増え始めたのを、ご存知だろうか?

 さて、その馬鹿っぷりを前にしては産経新聞すら裸足で逃げ出す週刊ダイヤモンドの記事を取り上げます(産経新聞ならテレビ欄や天気予報欄など信頼できる記事も載っているのに対して、週刊ダイヤモンドに信頼できる記事が載ったことなど……)。まず「働かざる者食うべからず」と言われたのも昔の話と記事は始まっていますが、むしろ昨今の方が強く言われるようになった気がしませんか? まぁ私はそれほど昔の人ではありませんので、昔の方が寛容だったのかどうか実体験を以て知るところではありませんけれど、少なくとも「働かざる者食うべからず」とは今も盛んに言い立てられていることであり、決して克服済の過去ではないと思います。

 「ワーキングプア」と呼ばれる立場にある人を探すことが、これほど簡単だとは思わなかった――。

(中略)

 たとえば、国税庁の調査による「平成20年・給与階級別の給与所得者数・給与額」をひも解けば、全国の労働者のなかで、年収200万円以下の個人が全体の約31%を占めていることがわかる。

 数年前、格差社会を象徴した「年収300万円時代」という言葉が流行したが、現状はそれどころではない。昨今の大不況に追い討ちをかけられ、低収入に喘ぐワーキングプアが続出する段階に移っている。

 この辺の現状認識は間違ってはいません。何しろ週刊ダイヤモンドですから、「どこの国の話だよ」と言いたくなるような日本とはかけ離れた「設定」に基づいて社会/経済を語る論者が当たり前のように居並んでいるわけです。そのダイヤモンド社の水準からすれば今回の記事はかなりマシな方と言えるでしょう。しかるに見出しにはワーキングプアの「静かなる逆襲」とあります。ふむ、追い詰められたワーキングプアがいかに「逆襲」を始めたのか、見てみようではありませんか。

|発想を転換して人生をリセット? 自分の身は自分で守る時代が到来|

 正社員としての被雇用者が減少傾向にあるのは憂慮すべき現状だが、一方でこれを逆手に取る発想もある。これまでの生活をリセットし、物価が高い地域から低い地域へと、生活圏そのものを変えてしまう方法だ。

 故郷の兵庫県から2年前に沖縄県へ移住したSさん(46歳・男性)は、「正社員で職を得ようと考えなければ、中高年がやれるアルバイトは結構あります」と語る。

(中略)

 もちろん、将来に対する不安はつきまとうが、物価の高い本土で派遣社員やアルバイトをするのと比べれば、低賃金でも現時点での生活水準は安定しているという。

 これも週刊ダイヤモンドの言うワーキングプアの「静かなる逆襲」なのだそうです。いったい、誰に逆襲しているのでしょうか? そもそも日本国内でそんなに物価に差があるか疑わしい、家賃などはともかく電化製品や家財道具、通信料金や書籍代が安くなるはずもなく、食料品にしたって安売り店が軒を連ねる都会の方が実は安いのではないかと推測されるわけです。まぁ仮に地方に移住して生活費が安くなり生活が安定したのが事実だとしても、それで「逆襲」を受けた人など誰もいないでしょう。おかげで人件費が浮いたとほくそ笑む人はいるかも知れませんけれど……

 都会と地方で何よりも相場が違うのは、やはり人件費ではないでしょうか。都市部の方がビジネスには好都合ですが都会では人を安く買いたたきにくい、一方で顧客と直接接する必要がない部門は地方においても問題ないので地方に設置される傾向があります。例えば本社は東京なのにコールセンターは沖縄に設置したりするケース等ですね。本来なら田舎の住人にも都会の住人と同等の給料を要求する権利があるはずですが、なんとなく田舎は給料が安くて当たり前、物価だって安いのだから~と流されがちな部分もあるのかも知れません。ここに挙げられた「Sさん」のように、わざわざ都会から田舎に移って低賃金の仕事を請け負ってくれる人は、結局のところ低賃金の労働力を欲しがっている雇用主の需要を満たしているだけで、「逆襲」を果たしているどころか余計に貢いでいるだけにも見えます。

 最も「逆襲」という言葉が相応しい行動を挙げるとしたら、怠業でしょうかね。低賃金労働を拒否する、賃金に見合った範囲でしか労働力を提供しない、適正な賃金が支払われない限りは働かない、一方的に搾り取られてきた労働者が雇用側に一太刀浴びせてこその「逆襲」でしょう。そういう意味での「逆襲」が始まった、使い捨てにされるばかりの労働者が反旗を翻すようになったのであれば、ちょっとした希望とも言えます。特にツッコミどころもなかったので省略しましたが引用元の記事には「キャバクラユニオン」等も取り上げられており、これならば「逆襲」に繋がる動きではあります。しかるに、反旗を翻すどころかわざわざ地方に移ってまで、より低賃金の労働を受け入れるようになった人もいる、「逆襲」とは反対方向へ突き進む動きもまた活発のようです。
最終更新:2010年01月27日 21:10