/ 抗癌剤 / 癌治療

+ クチコミ検索 #bf
+ ブログサーチ #blogsearch
+ ニュースサーチ

● ニボルマブ〔Wikipedia〕
ニボルマブ(Nivolumab、商品名:オプジーボ)は、悪性黒色腫治療を目的とし、後に非小細胞肺癌・腎細胞癌に適用拡大された分子標的治療薬の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品であり、当時の京都大学医学部の本庶佑博士の研究チームが開発に貢献した。日本においては2014年7月4日製造販売が承認され、2014年9月小野薬品工業から発売が開始された。



■ オプジーポメモ。 「二階堂ドットコム(2018/11/06 08:40)」より
/
m3でのコメント拾い物ですが、へえと思いましたので。オブジーボの治癒率にかんする議論の中でのコメントです。現在の免疫治療の様子がうかがえました。メモ。

免疫療法クリニックで10数年間に渉ってがん患者さんを診ているが、確かに、現時点までの巷で行われて来た樹状細胞、NK細胞を用いる療法では効果を得難く、一方、1970年代にアメリカのNIHでDr.Rosenbergが始めた、Tリンパ球を活用するLAK療法だけが有効性を示す、というのが自身の見解である。因みに、・・・・(※mono....以下略、詳細はサイト記事で)



 本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授のノーベル医学・生理学賞受賞の決定を受けて、注目が集まるがん治療薬「オプジーボ」が11月から3度目の値下げを実施する。当初は患者1人当たり年間3500万円かかる「超高額薬」として批判を浴びたが、4分の1以下の価格に落ち着く。一方、1回の投与で約5千万円の白血病治療薬の承認を間近に控え、米国では1回約1億円の眼病薬も登場。政府は薬の費用と効果を薬価に反映させる議論を急ぎ、医療保険財政への危機に備える。

7割以上の値下げ

 オプジーボは平成26年、画期的な新薬として登場したが、あまりに高額なため「医療保険財政を圧迫する」として非難された。

 当初は皮膚がんの一種である「悪性黒色腫(メラノーマ)」が対象で、予想患者数は470人と予想された。採算が取れるように100ミリグラム当たり約73万円、患者1人当たり年間3500万円と見積もられた。

 適用範囲が拡大されると、「患者5万人が使うと年1兆7500億円かかる」との試算が明らかになり、財政破綻を避けるため29年2月には緊急措置で半分に引き下げた。国内では現在、悪性黒色腫▽非小細胞肺がん▽腎細胞がん▽悪性リンパ腫▽頭頸部がん▽胃がん▽悪性胸膜中皮腫-の計7種類のがんを対象に使用が承認されている。

 薬価は原則2年に1度改定されていたが、オプジーボの登場を契機に、対象患者が拡大して販売額が急増した薬は「新薬が保険適用される年4回の機会を活用して値下げする」などにルールを変更。ルールに沿い、オプジーボは11月から100ミリグラム当たり約17・4万円となり、当初から7割以上の値下げが決まった。

眼病治療には「1億円薬」


 超高額薬はオプジーボにとどまらない。スイスの製薬大手ノバルティスの日本法人は今年4月、オプジーボと同様に次世代のがん治療薬として開発が進む「CAR-T細胞療法」の製造販売の承認を厚生労働省に申請した。

 この療法は、遺伝子組み換え技術を使い免疫細胞を活性化させるもので、若年性の白血病などに効果が確認されている。米国では「キムリア」の製品名で昨年8月に承認され、欧州でも今年8月に承認を取得した。ただ米国では、投与1回当たり47万5千ドル(約5300万円)。厚労省によると、日本での同薬の患者数は250人程度とみられ、市場規模を100億~200億円と見積もる。

 そのほか、米国では、投与1回当たり4200万円のリンパ腫治療薬「イエスカルタ」や、両眼への投与1回当たり1億円近くにもなる遺伝性網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」も出現している。

「費用対効果」の手法、導入へ


 「現在の薬価制度では対応が難しい」。厚労省の担当者は新たな超高額薬の登場にこう懸念を示す。遺伝子組み換えや細胞を改変するこうした「バイオ新薬」は、開発費が大きく膨れ上がり薬価に反映されているという。

 しかし、保険が適用されるため、患者の一般的負担は3割。大半は高額療養費制度が適用され、数千万円の薬でも自己負担は年間100万円程度(所得に応じて異なる)となり、残りは公費負担だ。

 医療財政への懸念から、厚労省は薬の費用がその効果に見合うか分析する「費用対効果」の手法について、来年度からの本格導入を目指している。すでに28年度に試行的に導入され、オプジーボなどが検討の対象になった。

 今月10日に開かれた厚労省の社会保障審議会部会でも、キムリアなど超高額薬への対応の必要性を議論したが、「経済性で保険適用を判断するのは難しい」との意見も出た。

 これに対し、今月9日に開かれた財務省の財政制度等審議会分科会では、「費用対効果評価の活用」を確認し、厚労省を牽制。日本医師会は「費用対効果を用いるべきでない」との立場を示すなど、“命の値段”をめぐって関係機関の思惑が錯綜している。


■ 小林麻央はオプジーポか 「二階堂ドットコム(2017.2.20)」より
/
小野薬品が儲かるだけだな。


★ 夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 「東洋経済(2016.11.19)」より
/
年間3500万円。この超高額の抗がん剤「オプジーボ」(一般名「ニボルマブ」)の公定価格(薬価)が、2017年2月から”半額”に引き下げられることが決まった。11月16日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、2017年度の50%引き上げが了承された。

オプジーボとは、京都大学名誉教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が開発を牽引し、日本メーカーの小野薬品工業が世界に先駆けて発売した、がん免疫療法の治療薬だ。100ミリグラム約73万円で、患者一人につき月額の薬剤費が約290万円、年間なら約3500万円にもなる。これだけの額で、果たしてどれほどの妙薬なのか。医療業界ばかりでなく、世間一般にも注目を集めた。

類似薬がなく、希少性が高い薬

日本の場合、薬は、ヒトでの臨床試験(治験)で効き目や安全性が確認され、厚労省の製造販売承認が得られた後、中医協で薬価が決まる。各薬の薬価算定理由は公開されており、欧米諸国では製薬メーカーと保険者など支払い側の交渉や市場価格に基づいて決まるのに対し、日本では透明性の高いルールがある。それが薬価算定方式で、「類似薬効方式」と「原価計算方式」に大別されるが、前者は既に類似した薬効の薬がある際、それと比べることで薬剤費全体のパイを拡げないよう、キャップをはめる形で決められるのだ。これは社会保障費の拡大を抑えたい政府の意向でもある。

類似薬のないオプジーボは、後者の原価計算方式で決まった。そもそも、生物学的製剤(遺伝子組み換え技術で製造される薬)で、原価は高い。世界で初めて承認を取得したことなどから、平均的な営業利益率(16.9%)の6割増しとなる27.0%まで加算された。

さらに薬価を押し上げたのは2014年7月、まず悪性黒色腫(メラノーマ)という、希少で難治性の皮膚がんの薬として承認されたためだ。メラノーマの発症数は国内で年間1500人弱。オプジーボの適応は、「根治切除不能な悪性黒色腫」で、手術や放射線治療を望めない患者に限っている。当初、発売後5年間の市場規模は、ピーク時の2年目で、患者470人・販売額31億円とはじかれたのである。

+ 続き
一昔前、薬が世に出るまでには、10年余りの歳月と数百億円の研究開発費がかかるとされた。それが今では1000億~1500億円にも膨れ上がっている。新薬、特に難病の薬を開発するというチャレンジをした企業には、それなりの対価を与えないと、開発意欲がそがれ、次の開発につなげられない。オプジーボの薬価は、決して“法外”だったわけでない。

オプジーボを端的に言えば、「免疫チェックポイント阻害薬」という種類の薬だ。人間が持つ免疫細胞にはもともと、がん細胞を攻撃する力が備わっている。本庶氏らはPD-1という分子を発見し、これが免疫細胞の動きを抑えてしまう免疫チェックポイント分子と捉えた。オプジーボの働きは、PD-1を阻むことで免疫細胞を再活性化させ、がんを攻撃するように仕向ける薬(抗PD-1抗体)、と言ってよい。

近年、流行している抗がん剤としては分子標的薬があるが、これは特定のがん細胞の増殖に関わる分子に働きかけるもの。一方、免疫細胞に作用する治療は当初から、がんの種類を問わず効く可能性を秘めていた。

値下げの幅も時期も「特例」の扱い

様々ながんについての臨床試験で患者への投与が試みられてきた。中でも、治療成績のよかった非小細胞肺がんや腎細胞がん(いずれも切除不能の場合)など、患者数の多いがんには次々と適応が広がっていき、同時に、製薬メーカーにとっては売り上げや利益も急拡大している。

とはいえその多くは、”効く可能性”のままで終わることもあり得る。オプジーボの場合、非小細胞肺がんや腎細胞がんでも順次承認されたが、いずれも厚労省の見込みが甘かったわけではない。かつて厚労省で新薬の治験・承認審査、薬価制度の関連業務に従事していた北里大学薬学部の成川衛教授は、「たとえ、半年後にこんなに対象が増えると仮に分かっていたとしても、日本の薬価のルール上は高額になっても仕方がない。いかに機動的に見直すかが重要だ」と語る。

かくも高額な薬剤だが、実際にオプジーボを使う個々の患者にとっては、薬代で身を崩さなくても済む。日本の公的医療保険には「高額療養費制度」という仕組みがあるからだ。例えば70歳以上であれば、収入に応じて、月額の自己負担は1万5000~8万円で済む。医療費の負担で圧迫されるのは、個人ではなく国の保険財政なのだ。

1度決まった薬価は永久に続くものではない。薬剤の価格はすべて、2年に1度の診療報酬改定によって、市場の動向に合わせ見直される。2016年度からは、年間販売額がきわめて大きい品目は、「特例市場拡大再算定」の扱いとなった。対象が拡大したオプジーボは、販売額が1500億円超と算出されたため、特例で最大の50%引き下げとなり、かつ、2年を待たずしての値下げとなった。

ではオプジーボの実力はいかほどなのか。

現状、効き目がある人の割合(奏効率)は、2~3割にとどまる。前述した分子標的薬は遺伝子などを調べて、あらかじめ効くだろうと予測される人にのみ投与することができる。

オプジーボは今のところ、そうした事前診断をできず、やめ時を判断するためのバイオマーカー(血液中などの指標になる物質)もない。臨床現場では「誰に効くか分からない」「(効く人も効かない人も)いつまで使い続ければいいか分からない」という声も聞かれる。また早期から使えず、既に状態の悪くなった患者に用いることも、奏効率を下げる要因につながっている。

例えば、ウイルス性肝炎の治療薬である「ソバルディ」「ハーボニー」(ともにC型肝炎薬)も、月額百万円以上かかる高額薬剤として話題になったが、3カ月服用することでほとんどの人が肝炎ウイルスの排除に至る。オプジーボにはそうした切れ味はない。今後のがん免疫療法は、精密な診断に基づき、患者やがん細胞の状態の差を考慮した”個別化治療”へと向かわなくてはならないのだ。それには遺伝子情報をはじめとする、ビッグデータの解析が不可欠とされる。

薬価にも費用対効果を採り入れる動き

一方で、費用対効果を薬価にも本格的に採り入れようという動きもあり、オプジーボやソバルディ、ハーボニーも、俎上に載せられている。ここでいう費用とは、個人の負担でなく、国全体の負担だ。日本には薬価のルールブックがあっても、そこに費用対効果という視点はなかった。

が、中医協には2012年、費用対効果評価専門部会ができた。2016年4月には7つの薬が検討対象になって、メーカーに対し分析データ提出を求め、専門家が妥当性を検定、次回の薬価改定で価値に見合った価格に是正していくことになっている。

その検証には「質調整生存年(QALY)」と呼ばれる指標を使う。QALYは、薬によって延びた生存年数に、その間の生活の質も加味したもので、英国などで利用実績がある。英国では医療費はすべて税金で賄われ、費用対効果への意識は高いが、医療サービスの内容に地域間格差があったことで1999年に国立医療技術評価機構(NICE)が創設され、薬の費用対効果を測り、使い方の推奨を提言するようになっている。

基準は、「1QALY(健康で活動的に1年生きている状態)当たりの費用が、2万~3万ポンド(約250万~380万円)以下であれば、費用対効果として良好。それ以上なら税金の賢い使い方とは言えない」、というもの。単なる総医療費の削減ではなく、定められた財源の中で、より効率的な治療の提供を目指すわけだ。

日本の費用対効果評価専門部会の参考人でもある国際医療福祉大学薬学部の池田俊也教授は、「日本では、患者や社会にとってどれぐらい価値があるのかという視点で、薬価が定められていなかった」と指摘する。2018年度からは、高額な薬剤や医療機器の価格は、費用対効果指標に基づく見直しが行われる予定だ。

英NICEは最近、高額の抗がん薬を中心に評価し、約半数を「費用対効果の点から非推奨」としている。オプジーボも肺がんについては、原案段階では費用対効果が悪いため「非推奨」となっており、今後、大幅な価格引き下げがない限り、非推奨となる可能性が高い。

現在、オプジーボの投与後に早期に治療効果を判定するバイオマーカーの開発は、京都大学をはじめ盛んに進められている。使い方についても実績が積み上がり、使うべき人やタイミングが分かってくれば、これから奏効率は上がり、費用対効果も向上するはずだ。

がん免疫療法は1950年代末に着想されて以来、様々な努力が試みられてきたが、めぼしい成果は得られなかったところに、オプジーボがその扉を開いたことは間違いない。世界の製薬メーカーは、免疫チェックポイントを標的とした、多くの薬剤を開発中である。

ノーベル賞の山中教授も注目

2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞に先立ち、日本人の受賞の可能性について問われた京都大学の山中伸弥教授は、真っ先に「PD-1」を挙げた。がん治療における抗PD-1抗体の発見は、感染症におけるペニシリンにもたとえられる。iPS細胞発見で2012年に同賞を受賞した山中教授が、「がん治療の新たな光」と評したように、人類への貢献という意味ではプライスレスな薬とも言えるかもしれない。

オプジーボは様々な問いかけをわれわれに投げかけた。日本の国民皆保険制度は世界的にも優れた仕組みだが、限られた財源の中でより効率的な医療を提供するなど皆保険維持のために何をすべきか、国民も考えなくてはならない時期に来ている。


★ オプジーボ 「高いのは日本だけ」 「日本経済新聞(2016.10.6)」より
/
 超高額と言われている小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」の価格を巡る議論が進んでいる。厚生労働省は5日、中央社会保険医療協議会・薬価専門部会を開き、引き下げの方法を取り上げた。「安価にして必要な患者に広く使用できるようにすべきだ」などの意見が相次いだ。こうした声を強く後押しするような事実が明らかになっていた。

 「これほど高い薬価は日本だけ。受容できるわけがない」。医師で構成する全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長は語気を強める。

 保団連は8月、米国と英国におけるオプジーボの薬価を調べた。日本では100ミリグラム当たり約73万円であるのに対し、米国では同約30万円、英国では約14万円だった。同じ薬の値段が米国では日本の約4割、英国に至っては約2割でしかなかったのだ。

 保団連は調査結果を塩崎恭久厚労相に提出、薬価の再考を強く訴えた。住江会長は「海外と同程度まで薬価を引き下げるのが当然だ」と説く。

なぜ、こうなったのか主な理由は2つある。

 ひとつはオプジーボが日本で初めて承認されたからだ。薬価を決めるときに他国の事例を参考にできなかった。もうひとつは最初に悪性黒色腫という珍しい皮膚がんの薬として承認されたことだ。患者が少なくても開発費が回収できるようにするため、高い薬価が付く計算法が適用された。

 薬価の見直しは2年に1度が原則で次は2018年度。現行制度ではオプジーボの薬価を適切なタイミングで修正する仕組みがない。そこで厚労省は緊急引き下げに向けた議論に着手した。

 オプジーボの薬価の引き下げ率は11月には決まる見通しだ。ただ、50%引き下げたとしても、米国の薬価にすら届かない。そして英国では、現行の薬価をさらに引き下げようとする方針がまとまりつつある。日本の薬価の着地点はどこなのか。

 日本の約2割の価格でオプジーボを販売する英国では、さらなる価格引き下げが現実味を帯びている。焦点は患者数が多い肺がん向け価格だ。英国では、NICE(ナイス)という政府機関が薬の費用対効果を計算し、薬を推奨できるか決める。価格に見合う価値があるのか、効果や副作用などのデータから見極める。NICEが推奨しないと、実質的に医療現場で使うことはできない。

 9月時点で英国では、「今の価格ではオプジーボを肺がん向けに推奨できない」と判断されている。

 NICEは患者が少ない悪性黒色腫向けには、日本の薬価の5分の1にあたる14万円強(100ミリグラム)が妥当と判断し推奨している。だが同じ価格では「肺がん向けには費用対効果の基準に達していないと判断された」(東京大学大学院薬学系研究科・特任准教授の五十嵐中氏)のだ。

 もっともオプジーボを心待ちにしている肺がん患者への配慮も必要だ。そのため、NICEは製薬企業とある交渉を行っている。

 英国には製薬企業が政府と交渉し、薬の価格を下げることで推奨を得る「PAS」と呼ばれる制度がある。企業が高額薬を値引き販売したり、売上高の一部を還元したりして薬剤費の負担を抑える制度だ。

 英国でオプジーボを販売する米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)は、このPASの適用をNICEに提案している。

 PASによる値引き幅は原則非公開だ。製薬企業の国際戦略に影響が出るのを避けるためだが、NICEの公表資料などには交渉段階での幾つかの提案が記されている。

 それによると、BMSはオプジーボについて「1年分を超えて患者に投与した薬代はBMSが負担する」、あるいは「最初の半年分、つまり3万1000ポンド(約400万円)を超えた薬代はBMSが負担する」などを提案しているようだ。

 小野薬品工業による臨床試験ではオプジーボの平均投与期間は半年だったが、提案が実現するとオプジーボを長く使う患者の薬剤費は減ることになる。

 もっともNICEはこうした提案に対し、まだ推奨の立場を表明していない。

 大阪府保険医協会の小藪幹夫氏は「NICEは今年1月、たとえBMSが薬価を56%下げたとしても、推奨の基準に達しないとの試算を出している。推奨を得るにはさらなる引き下げが必要ではないか」とみる。肺がん向けのPASの交渉は最終段階で、近く結論が出る見込みだ。

 オプジーボの薬価見直しを検討している中央社会保険医療協議会(中医協)では、外国価格との調整を行うことも視野に入れている。英国での薬価交渉の行方は、国内の薬価引き下げ率を巡る議論にも影響を与える可能性がある。

(企業報道部 野村和博)


いま、一つの薬が国家レベルの議論を巻き起こしている。小野薬品工業が開発した、がんの薬、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)だ。

なぜ、それほど騒がれているのか。医療情報誌『ロハス・メディカル』編集発行人の川口恭氏が解説する。

「オプジーボが話題になっている理由は、大きく分けて2つあります。まず、その効き方の仕組みが今までの薬とまったく違うという点。そしてもう一つは、患者の体重にもよりますが、年3000万円以上かかる超高額薬で、しかも肺がん(切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん)で承認されるなど、多くの患者に健康保険を使って投与されそうだということです」

まずは、その効果のほどを見ていこう。

オプジーボは免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬。通常、がん細胞が体の中にできるとキラーT細胞という免疫細胞が、がんを攻撃する。しかし、がん細胞は攻撃されないように、免疫細胞にブレーキをかけるPD-L1という物質を作り出すことができる。オプジーボはその免疫機能のブレーキを外して、人間の身体が本来持っている、がん細胞を叩く力を発揮させる薬なのだ。

オプジーボによる治療を積極的に行っているプルミエールクリニック院長の星野泰三氏が語る。

「オプジーボを使った治療を始めたのは、去年の5月です。かれこれ30年間、免疫治療に携わってきましたが、これはすごい薬だと本腰を入れることにしました。がん細胞の前にあった『見えない壁』を取り除く画期的な薬、それがオプジーボです。開発者たちは間違いなくノーベル賞を獲るんではないでしょうか」

+ 続き
オプジーボが日本で保険適用になったのは、メラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんの一種が最初('14年)。昨年末に肺がんの一部にも適用が広がり、今後、腎臓がんなど他のがんへも適用拡大される見込みだ。

免疫治療薬は適用外の様々ながんへの効果も期待できるので、保険が利かない自由診療でもオプジーボを使用した治療を望む患者が増えている。星野氏のクリニックでも、適用外の処方が進む。

「末期の歯肉上皮がんの患者さんに使用したところ3ヵ月で完治したのです。こんなに早く治るとは驚きでした。他にも膵臓がん、大腸がん、胃がんなど多様ながんの患者さんが当院にいらっしゃいます。

当然、がんの部位やタイプによっても効き方が変わってくる。膵臓がんではペプチドワクチンを併用して五分五分です。保険適用になっている非小細胞性肺がんの場合、最初に抗がん剤を使ってがんを叩いてからでないといけません。この手の肺がんは広がるスピードが速いので、免疫療法が追いつかないのです」

夢のような、だれもが使いたい薬だが、問題もある。副作用と高すぎる薬価だ。

厚生労働省は7月22日、オプジーボを使った後に別の肺がん治療薬で治療したところ、重い副作用が8例出て、そのうち3人が死亡したとして、注意喚起と情報提供を呼びかける文書を出した。いずれもイレッサなどの上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与後に、間質性肺疾患を引き起こした。

また、メラノーマの治療で使用された患者が劇症1型糖尿病になった例も確認されている。

さらに小野薬品工業は、自由診療でオプジーボを使用したケースで重い副作用が6例あり、1人が死亡したと発表。医療機関に、国に承認された使用法を守るよう要請している。

「うちの病院では副作用には最大限のケアをしていますが、投薬の回数を重ねると甲状腺を悪くする人が頻出します。オプジーボの使用を望む患者さんには、容態が急変しても入院できるよう、バックアップの病院を確保するようにお願いしている」(星野氏)

国の医療費が破滅的に膨らむ

この薬が提起しているもう一つの大きな問題、それが薬価の決め方だ。

「100mg瓶で約73万円、20mg瓶が約15万円、体重60kgの人なら1回180mgなので、約133万円。2週間に1回の投与で1年間使い続けると年間3500万円弱。

しかし、健康保険には患者の負担額を一定以下に抑える『高額療養費制度』があるので、患者が支払う医療費は最大でも年200万円程度、ほとんどの人は100万円かかりません。つまり約3300万円もの額が保険事業者の負担になります」(前出の川口氏)

しかも、現時点では患者に薬が確実に効くかどうかは見分けられない。そうなると仮に5人に1人しか効果がない場合、1人の肺がん患者の延命のために1億6000万円ものコストがかかることになる。人の命に値段はつけられないとはいえ、これではあまりに高すぎるし、国民全体の医療費を急増させ、最終的にその負担は我々一人一人にかかってくる。

オプジーボが保険適用されている非小細胞肺がんによる死者は年間約6万人。彼らの全員にオプジーボを投与すれば年間約2兆円もの保険負担が増える。

日本の医療費は現在、40兆円。そのうち約18%の7兆円強が薬局調剤医療費である。オプジーボを多くの患者が使用すると、ただでさえ高齢化で膨張している医療費が破滅的なスピードで膨らむことになる。

「そもそもオプジーボは、患者数の少ないメラノーマに使用される薬として薬価がつけられました(年間最大470人に投与されると推定)。もし、先に肺がんで承認されていたら、薬価は10分の1以下だった可能性があるのです」(川口氏)

医療保険が圧迫されることを懸念する厚生労働省も動き出した。7月27日、薬価の値下げを柔軟に行える仕組みづくりの検討を始めると発表。オプジーボの価格は年内にも下げられる見込みだ。

だが価格が下がっても、副作用がなくなるわけではない。この薬に飛びついていいのか、判断するにはまだ時間がかかる。

「週刊現代」2016年8月13日号より























.
最終更新:2018年11月06日 17:46
添付ファイル