プロローグ
異なるもの同士が手を組んでひとつの事をやる……そんなコラボレーション、というべきものはクルマ界にもある。
特に異なるメーカー同士が共同開発を行うケースもある。「あのメーカーとこのメーカーが持つ技術を一つにしたら……?」そんな妄想も膨らむのも共同開発ならでは。
そんなリスクもある共同開発やクルマ界のコラボを見ていこう。
日産×アルファロメオ=アルファロメオ・アルナ
80年代前半、日本メーカーの雄の日産とイタリアの雄、アルファはかつてタッグを組んで開発した事もあった。
このタッグが生む車は「信頼性のある日産製のメカニズムを積んだ、アルファの美しいイタリアンデザインの一台」だと予感させた…。
しかし、出来たのは「欠陥も多いアルファロメオ製のメカニズムと没個性でダサい日産のデザインを持つ車」になった。そう、合体事故だった。
市場からはもちろん支持されるわけもなく、兄弟車であるチェリーヨーロッパを合わせても5年間の販売台数は約4万台と低迷。今でも「醜い車ランキング」といった感じのヨーロッパ部門で必ずと言っていいほどランクインしてしまうようなモデルとなってしまった。
このタッグが生む車は「信頼性のある日産製のメカニズムを積んだ、アルファの美しいイタリアンデザインの一台」だと予感させた…。

市場からはもちろん支持されるわけもなく、兄弟車であるチェリーヨーロッパを合わせても5年間の販売台数は約4万台と低迷。今でも「醜い車ランキング」といった感じのヨーロッパ部門で必ずと言っていいほどランクインしてしまうようなモデルとなってしまった。
とはいえ、何も収穫が無かった訳ではない。アルファロメオにとっては、合弁企業設立当時に課題だった工場の稼働率や生産効率の悪さ、貧弱な電装系や錆び易いソ連製鋼板の使用によるボディの腐食といった問題が日産の技術支援や作業効率の改善指導で飛躍的に改善された。この時に導入された機器や技術は現在でもアルファロメオの工場で活かされている。日産にとっても、ヨーロッパ進出の足掛かりになった上に、アルナ開発時に、アルファロメオ側の妥協無き足回りの設計(*1)を目の当たりにしたことで、ヨーロッパ車の優れた足回りの設計を学ぶことができた。このことは後のVW・サンタナのノックダウン生産や、延いては901運動で高い評価を受けるきっかけにも繋がったのだ。
マツダ×フィアット・アバルト=アバルト・124スパイダー

一方、こちらは成功例。マツダのND型ロードスターをベースにフィアット・アバルト側のエンジンやエクステリアを取り入れたもので、生産はマツダが行う「和製イタリアン車」に。
ロードスターよりもパワーのあるエンジンを積んだ分重量は増したものの、それでもスポーツカーとしては軽い方である上に元のロードスターとも差別化されているため大した問題では無かった。
相手側もマツダの技術を信じて取り入れていた事も、合体事故に終わったアルナとの違いだろう。
トヨタ×スバル=トヨタ・86、スバル・BRZ

その後もモデルチェンジしつつも長ーく生産されており、2台ともキャラクターの違う車として存在している。「1+1=2どころか、4となった」いいケースだ。
トヨタ×BMW=トヨタ・GRスープラ、BMW・Z4

こちらも成功例のひとつ。BMWとトヨタが協業した理由は、スープラ復活にあたって必須ともいえる「直列6気筒と後輪駆動」というパッケージングを実現するためだった。
本車の特徴はエンジンやプラットフォームを共通にした後に主要部品を共同開発、その後からはトヨタとBMWで別々で開発するというスタイルを採ったこと。そして共有できるものは共有すること。これによって両車のキャラクター性を引き立てることにひときわ役立っているほか、互いのフィードバックにより品質や性能向上にも一役買っているのだ。
一方でスープラは共同開発で生まれてしまったが故に「Z4の姉妹車」だの「BMW製」だのと揶揄されてしまうこともあり、それを嫌って敬遠する層も多い。このケースは共同開発がイメージ面に影響を及ぼしてしまう一例ともいえる。
シボレー×スズキ=初代シボレー・クルーズ、シボレーMW
初代シボレー・クルーズがスズキの初代スイフトをベースとしたが、正直ちょっとシボレーらしさが物足りずスズキ要素が勝ってしまっている感が強い。
また、スズキワゴンRをベースとしたMWの方も、「エンブレムをシボレーに付け替えただけのワゴンR」そのものになってしまった結果となった。
何でも混ぜればいいもんができるわけじゃない、という教訓を教えてくれる一台と言えよう。

今後もコラボレーションは起きるのか?
特にEV車では異業種の参入も相次いでいる事から、それらとのタッグもあり得る。より車の開発コストもかかる中、共同開発したりしてコストの増加による負担を抑える目論みもあるのだ。
今後も様々なメーカー同士のコラボレーションも起こり得るであろう自動車業界。我々は今後もそうした動きに注目していきたいところだ。