現在編集中:ジャガー・ランドローバー、アルファロメオ
厳粛で気品のあるインテリア、獰猛なエキゾーストノート、流麗で艶やかなボディ、メリハリの効いた快適な足廻り…それらはまさに美しくも荒々しさを持つ獣の如く……。
世に蔓延る多種多様なクルマ達の中でも一際異彩を放つ、各国を代表するラグジュアリースポーツの魅力をお伝えしましょう。
見出しが赤色 の車種は無印のベース車を持たない専用モデル。ブランドをスポーツ性において象徴する存在として置かれるのが定石であり、多くの場合において概ね快適性がスポイルされたモデルであるため趣旨とはずれるが、便宜上記載させてもらった。
プロローグ
自動車というものは19世紀最大級の発明品でしょう。より多くの人や荷物を載せ、馬車よりも高速で休むことなく長距離を駆け、ハンドルを切るままに何処へでも行ける。人々の生活を便利で豊かにし、人類の新しい道具としての地位を確立するのも当然のことでした。しかし一方で時代の流れによって人民に普及してくると、自動車はそれまでの実用的な道具としての側面だけでなく、実用性とはまた違った新たな価値を獲得していくことになるのです。
それはドライビングプレジャーであったり、ステータスシンボルであったり…
より速く、楽しく走る。自分の立場を誇示する。そのような価値観のもとに進化していったのがスポーツカーと高級車であるのは最早言うまでもないことです。そして今日では、スポーツカーは特急列車より速い走行性能を、高級車はリビングと見紛うような移動空間を手に入れました。ではもし、それらの特徴を併せ持ったクルマが生まれたらどうなるでしょう?いいや、もちろんそんなこと、出来るはずがありません。二兎を追う者は一兎をも得ず、「究極」の融合は不可能ですね。しかし、「究極」とまではいかなくてもそれらをなるべく高次に組み合わせようとする事は出来るはず。この章では、そんな一種の限界に挑戦した、各国の名だたるブランドを紹介しましょう。
閑話休題。事実としてここ半世紀の自動車文化の発展には目を見張る物があり、オーナーの所有欲を満たすという意味で「スポーツ」と「ラグジュアリー」の概念の融合は幾度となく試みられている。ポルシェやフェラーリといったスポーツカーブランドは、内装の設えをより丁寧で上質にし、メルセデスやキャデラックといった高級車ブランドは、足廻りやエンジンの走行性能を向上した。二者の間の絶対的なギャップは埋まりつつあるが、完全に同一にならない点が一つある。それは「快適性」である。車体が如何に理想的な走りをするか、乗員が如何に快適な時間を過ごせるか、これだけは完全な二律背反である。理由は簡単。人と自動車では住む世界が違うからである。最高速度300キロ以上を誇る圧倒的性能を持つ自動車、一方の人間はそんな自動車に比べればせいぜい数百分の一程度の力しか持っておらず、必ずどちらかが歩み寄る必要がある。かたや人がクルマに歩み寄るか、あるいはクルマが人に歩み寄るか…
そういう意味において前者の価値は、このwikiを訪れている方なら概ね漏れ無く理解されていることだろう。なぜならそこにはモータースポーツの真髄が宿るからである。一方の後者、つまり高級車はというと、意外と本当の価値を理解されにくと考えている。最後までスポーツを追求せず、半端に終わっていると思う人も居るかも知れない。
しかし考えてみて欲しい。高速度で安定した巡航が可能なシャーシやエンジン、乗員に快適な空間を提供するシートやサスペンション。これこそ本当の意味での「グランツーリスモ」の姿ではなかろうか。このページでは、各国の高級車ブランドが打ち出すハイパフォーマンスモデルを紹介する。自動車の究極形の一種ともいえるラグジュアリースポーツの魅力を見て、知って、現代に息衝く「グランツーリスモ」の精神を感じてもらいたい限りである。
メルセデス・ベンツ
皆さんご存知、日本における高級車の代名詞的存在である。創業は1886年。創業者のカール・ベンツが世界初の内燃機関付き自動車
「ベンツ・パテント・モートルヴァーゲン」 を製作したのは言うに及ばず、世界最古の自動車メーカーの一つである。
エンブレムは「スリーポインテッド・スター」。3つの菱はそれぞれ陸・海・空を表しており、ダイムラー社の全域におけるモビリティの発展に期待を込められていることに由来する。一世紀以上に渡って使われている上、エンブレムに大きなデザイン上の変化がない。メルセデスを象徴するアイコンである。
AMG
▲ロゴ左側の5本線はタイヤのトレッドを表現している。
メルセデス専属のハイパフォーマンスモデルの開発を専門にする子会社「メルセデス・AMG」が手掛けるラグジュアリースポーツ。メルセデスが新車開発をする初期段階の時点でAMG側に車両データを転送。エンジンを含め、AMG側で独自に開発を進めるのが特徴である。メルセデスユーザーの特質故か、エンブレムチューンの個体も多く見かける事ができるが、 正規のAMGモデルはリアウィンドウに正規品を証明する再使用不可なステッカーが貼付してある。
「AMG」の名前の意味は創立者の名前(アウフレヒト)、創業当時のエンジニアの名前(メルヒャー)、創立者の故郷(グロース)からそれぞれ頭文字をとったものである。
20世紀(メルセデス傘下になる前)は過激なエアロや真っ黒なフロントグリルといった威圧的で派手な外装も特徴の一つだった。代表的な装備は4本出しマフラーや300キロスケールスピードメーターである。内装もベース車に比べて比較的豪華になることが多い。価格は大抵、ベース車の乗り出し価格の2〜3倍が一般的。
実は独立チューナー時代には三菱車のチューニングを手がけていたこともある。ギャランAMGとデボネアAMG、記憶にある御仁もいらっしゃるのではなかろうか。さすがはエンブレムが似ているだけのことはある。
SLS AMG
〜孤高のAMGスーパースポーツ〜
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
6.2L V8
最高出力(PS)
571
車両重量(KG)
1620
駆動方式
FR
販売価格(万円)
2490-
公称最高速度
317km/h
0-100km/h加速
3.8s
メルセデスAMGが有史以来初めて一から完全独自開発したスーパースポーツ。デザインモチーフは往年の名車、300 SL。これにより、長いフロントノーズとガルウィングドアを持った独特なフォルムを獲得している。エンジンはG63、C63等に用いられる6.2L V8「M156」をベースに、ドライサンプ化を始めとする専用チューニングが施された「M159」がフロントミッドシップにマウントされる。トルクチューブを介したパワーはリアのトランスアクスルに控える7速DCTを通じてリアタイヤに出力され、最高速度317km/hまでリニアに加速させる。約半世紀の時を超えて、メルセデスのモータースポーツへの精神を体現した一台だろう。
GTにおける収録車種:
SL 55 AMG
ボディタイプ
2ドアコンバーチブル
排気量及び形式
5.4L V8 S/C
最高出力(PS)
500
車両重量(KG)
1970
駆動方式
FR
販売価格(万円)
1680
公称最高速度
300km/h
0-100km/h加速
4.6s
この歴史あるカブリオレは、アウトバーンで996カレラSを置き去りにする運動性能と、リアル・マテリアルと電動コンポーネントで囲まれた至高の室内空間を有している。SL 55 AMGに搭載される5.5L V8 SOHC スーパーチャージドエンジンは、執事の様に気配りの効いた5速トルコンATを介して後輪へ500馬力を捩じ込む。その圧倒的なパワーに耐えうる為に、リアサブフレームはベースのアルミ合金製に対して敢えてスチール製を選定。2トンの重量と500馬力のパワーがタイヤにかける負担は凄まじく、時速300キロという最高速度はタイヤの限界によるものである程。高速域での安定性を確保すべく、バンパーやフェンダーには控えめながら空力制御の工夫も見られる。これらに姿勢制御システム「ESP」が加わり、獰猛な心臓部を
腕の無いドライバーでも制御できる程度まで 宥めてくれる(勿論腕のあるドライバーならOFFにしても良いだろう)。足廻りには前後大径ベンチレーテッドディスクブレーキが備わる他、ボッシュが新開発した電子制御ブレーキシステム「センソトロニック・ブレーキ(SBC)」が搭載され、雨天時の制動力を維持する為のディスク上の水膜除去機能や、急制動準備機能、ピッチ角制御機能(所謂カックンブレーキ対策)といったブレーキアシストが利用できる。新型SL最大のトピックである電動格納式ハードトップ「バリオルーフ」は、コンソールのスイッチを操作するだけで16秒でルーフの開閉を可能にする。
インテリアは本革とアルミパネルで加飾され、AMG専用の300km/hフルスケールメーターが備わったりとスパルタンさと上質感がひしめき合う特異な空間で、ホールド性抜群の本革電動シートは極上の乗り心地を体感できる。インパネにマウントされるDVDナビゲーションはCDチェンジャーを搭載している他、フルオートエアコンやクルーズコントロールも装備。快適性は申し分ない。安全装備も充実している。エアバッグはサイドまで完備。サイドインパクトビームや、コンバーチブル特有の横転・転覆時の危険性を排除したアクティブロールバーシステムを装備して、高級車に相応しい一流の乗員保護性能を確保している。燃費と価格以外に非の打ち所が無いメルセデスのフラッグシップ・SLは、半世紀近くに及ぶその歴史によってその立場を約束されている。かの福沢諭吉は言った。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず、と言へり。」
SLの優位性は、やはりというか新型に移行して尚色褪せることはなかった。
GTにおける収録車種:
AMG Black Series
AMGのブランドスローガン「ドライビングパフォーマンス」の名の下に、極限まで運動性能を追求したスーパースポーツモデル。その全てが限定生産車であり、サーキットでの全開走行に重点を置いた設計はベースモデルのAMGよりも格段に快適性で劣る一方、フェラーリ・スペチオーレやポルシェ・GT3といったピュアスポーツに全く引けを取らない圧倒的なサーキット・スペックを実現している。価格もスーパーカーのそれと同程度か、あるいはそれ以上だ。
SL 65 AMG Black Series
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
6.0L V12 TwinT/C
最高出力(PS)
670
車両重量(KG)
1870
駆動方式
FR
販売価格(万円)
4880
公称最高速度
320km/h
0-100km/h加速
3.8s
AMGがレース部門のワークスチーム「HWA」の精鋭を集結し、一世紀を超えるメルセデス・ベンツの歴史上最強最速のマシンを生み出すべくして開発されたのが、この「SL 65 AMG Black Series」である。ブランド最上級の2シーターコンバーチブル・SLの中でもトップグレードの6L V12ツインターボエンジンを搭載したSL 65 AMGをベースに、一部のボディパネルやインテリアを除くほぼ全てのコンポーネントを再設計。とにかく速さだけを追求した、全世界350台限定のスペシャルモデルなのだ。SLをSLたらしめる、最大の特徴であるバリオルーフは潔く撤廃。ロールバーで剛性を確保したオーバーヘッド部にカーボン繊維製ルーフを被せることで重心を大幅に下げることに成功した。エンジンは形式こそベースの65 AMGと変わらないものの、インタークーラーの容量やエキゾーストシステムの抜けを改善、60馬力近いパワーアップを実現した。そのパフォーマンスは5速オートマチックミッションを以てして全く容量が足りず、意図的にトルク1000Nm程度までリミットがかけられるほど。ボディワークにも大幅に手が加えられ、フロントマスクからボンネット、先述のルーフ、トランクリッドに至るまで、その全てがカーボン製に置き換わり、トレッド拡大に合わせてフェンダーも左右合わせて14センチも拡張された。実用性とのトレードオフでフロントウィングも大型化し、リアのダウンフォースは大型のディフューザーとトランクに仕込まれたアクティブウィングで賄っている。ベースモデルではアクティブサスペンションを装備していた足廻りは重量軽減を理由に通常のコイルサスペンションに変更され、ホイールも前後異径の鍛造アルミ製がインストールされる。ボディの中でも唯一ベースモデルと共用されたアルミ製ドアを開けてインテリアに目を移すと、どう考えても乗用車用とは思えない程に薄く、着座位置の低いバケットシート(なんとサイドエアバッグさえオミットされている)が眼前に飛び込んでくる。
ステアリングホイールは小径のフラットボトムに変わり、ハンドリングをクイックなテイストに仕上げる。360km/hまで刻まれたスピードメーター以外にはインパネに大きな変更点がないのは、メルセデスとしての最後の理性を窺えるが、それにしてもブランドとして大切なものをいくつか失っている気がしなくも無い。運動性能と快適性の共存の至難さを表す好例だろう。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
ベースモデルのSL 65 AMGならスタンダードカーとしてGT4-GT6で収録されている。
AMG GT Black Series
ボディタイプ
3ドアファストバック
排気量及び形式
4.0L V8 TwinT/C
最高出力(PS)
730
車両重量(KG)
1650
駆動方式
FR
販売価格(万円)
4170
公称最高速度
325km/h
0-100km/h加速
3.2s
AMGが専用開発した第二弾モデル・AMG GTをベースに、公道を走れる限界まで手を入れた限定モデル。前作のSL 65とは違い、ベースモデルからして走りに特化したAMG仕様なので素性が良く、車両重量の削減やボディ剛性の確保が容易だったようだ。AMG製4L V8ツインターボエンジンはベアリングを低摩擦タイプに変更し、コンプレッサー容量を増やすなどの小改良でメルセデス史上最強の730馬力を発揮。高回転型に仕上げたパワー特性はリアアクスルに控える7速DCTと完全に共鳴する。何と言ってもカーボン製トルクチューブを介したトルクは、今度は抑圧されることなく満足行くまで後輪へ推進力を与えるのだ。激しく唸るエンジンには時代の進歩が実現した高性能コンピューターユニットが鞭を打ち、ドライバーは本来の能力を超えて車体をコントロールできる。専用のトラクションコントロールシステムは9段階のスリップ量設定が可能。設定次第では余計な邪魔が入ることのない全開アタックも純正でサポートしている。更に、それでもスリップが起こってしまった時には電子制御デフがアクティブトルクスプリットを実行し、一瞬たりともパワーの低下を伴う事無く姿勢制御を試みる。4輪全てに鍛造アルミ製ハブキャリアを採用したダブルウィッシュボーンサスペンションは、スプリングストラットと独立した減衰力可変ダンパーを搭載。ブレーキにはカーボンセラミックディスクと専用パッドを採用し、曲がる、止まるといった能力を極限まで高めている。エアロダイナミクスはGT3由来のモータースポーツ直系の技術が多数投入されている。フロントスプリッターは手動調節も可能で、ラゲッジゲートを突き抜けてボディに直接マウントされた大型リアウィングはアクティブエアロ機能を搭載し、必要に応じて400キロ近くダウンフォースを増加させる事が可能だ。更にはインテリアを侵食するロールケージや、4点式シートベルト付きのフルバケットシート、レザーに取って代わって採用されたアルカンターラトリム等、内外装何処を見てもスパルタンな雰囲気がコレでもかという程出ているが、この車は事実としてニュルブルクリンク北コースの市販車最速ラップ(6:43.616)を叩き出しており、更にFRということも考慮すると、文字通り右に出る車がいない状況となっていた。正真正銘の公道最速マシンである。
GTにおける収録車種:
Future of AMG
アウディ
ドイツ御三家のエレガント担当にして十八番の4WDでの技術を活かした車作りが知られるメーカー。
創業は源流のホルヒに遡ると1898年。創業者のアウグスト・ホルヒはベンツから独立した過去を持つ。ヤナセの広告戦略のお陰で若干影が薄いが、「Quattro」に代表される優れた駆動技術と控え目で上品なデザインを持つ、立派なプレミアムブランドである。現在はフォルクスワーゲングループの一角を担っている。コーポレートスローガンは「技術による先進」。駆動系から電装系まで、時代の先駆者であり続けようとするアウディの気概を感じざるを得ない。
エンブレムは「フォー・シルバーリングス」。アウディの創立期には分離や合併といった波乱万丈があり、アウグスト・ホルヒが遺した「ホルヒ」「アウディ」、とドイツの「DKW」「ヴァンダラー」が合併して「アウトウニオン」(直訳:自動車連盟)を名乗り、この特徴的な四つの環で左から順にアウディ、DKW、ホルヒ、ヴァンダラー四社の結託を表現した。1985年の「アウディAG」への社名変更で現在の形になった。
S
1990年登場のS2クーペ以来、ベース車の延長線上のハイパフォーマンスモデルとしてアウディが手掛けるモデルである。アウディの車名は「A」「Q」といったボディタイプに「4」「6」といったセグメントを合わせて表記するが、Sシリーズの場合は「『A』の場合はSに置き換え(Ex:A6>S6)、他の場合はSを付け加える(Ex:Q3>SQ3・TT>TTS)」という命名法則を持っている。コレは後述のRSシリーズも同様。
Sの場合は強力な足廻りやチューンドエンジン、カーボン調トリム等が奢られるが、最大の特徴は全車標準搭載されるアウディ・Quattroシステムだろう。車種によって機構の違いはあるものの、(ハイパフォーマンス)ラインナップの全てが駆動方式としてAWDオンリーというのはアウディの唯一無二のアイデンティティと言える。また内装はAMG同様、目に見えて質感が向上する。ベース車では金属調だったパネルがリアルアルミに置き換わったり、アルカンターラシートが採用されたりと満足度も高くなるだろう。
価格設定はベース車の乗り出し価格の1.5倍程度だが、通常モデルにも「S line」なるトリムレベルが用意され、足廻りが少し固められたり、外装がスポーティになったりする。
TTS クーペ
ボディタイプ
3ドアファストバック
排気量及び形式
2.0L I4 T/C
最高出力(PS)
310
車両重量(KG)
1410
駆動方式
F4WD
販売価格(万円)
768
公称最高速度
250km/h(Limited)
0-100km/h加速
4.7s
「ツーリスト・トロフィー」に名の由来を持つこのクーペは、アウディとしては極めて高いドライバビリティ(
と最悪な後席居住性 )を持っており、R8の登場以前から高い人気を誇るスポーツモデルだった。2014年に登場した3代目ではエクステリアに最新のアウディのエッジの効いた意匠が取り入れられたが、歴代のラウンドフォルムは維持。そんな折にハイパフォーマンスモデルとして登場したのが「TTS」であった。チューンアップで80馬力近くパワーを上げた2Lターボエンジンは、6速Sトロニック(DCT)を介してアウディ・Quattroシステムへ駆動力を伝える。TTSに搭載されるQuattroは、スウェーデンのボルグワーナー傘下のハルデックス社が開発したコンピューター制御式センターカップリングシステムとなる(通称ハルデックス・カップリング)。アウディお得意のマグネティックライドはドライブモードやQuattroと連携し、ハルデックス・カップリングが苦手な高速域からのフルブレーキング(後輪への駆動力が完全に絶たれる≒エンジンブレーキがフロントのみに掛かるため)などで抜群のスタビリティを実現する。VW・ゴルフと同じコンパクトなFFプラットフォームでありながら最大限まで運動性能の高みを目指したTTSのドライブトレインは、オールアルミ製のボディが成す1.5tを切る軽量ボディと相まってアグレッシブなドライブを可能にした。初代TTでは(デザイナーの意地で)散々技術陣営を悩ませた、激しいリフト(アップフォース)を伴う奇抜なデザインは、アクティブスポイラーの存在によってその欠点を帳消しにした。120km/hを超えると自動で展開されるバックドア後端のスポイラーが余計な揚力やドラッグをスポイルすることで、TTが持つ高いデザイン性と高速域のスタビリティを両立した。インテリアでは全く新しいアウディの挑戦が垣間見える。かつてMMIのディスプレイがあったであろうインパネのセンターには三連のエアコンレジスターがあるのみである。TTのドライバーズカーとしての性格を完璧に反映した新技術「アウディ・バーチャルコックピット」は、メーターフード内に備わる12.3インチのTFT液晶ディスプレイを通じてドライバーが求める様々な情報を一度に、高い視認性を以てして提供する。
グランドツーリングでは二眼メーターを縮小してセンター部にナビゲーションや車両情報などを表示したり、スポーツドライビングではコンベンショナルなセンタータコメーター配置の視認性の高い表示にしたりなどと、実用性は意外に高い。操作はセンターコンソールのMMIダイヤルやステアリングスイッチで行うが、助手席からは何もできないあたりからも、TTらしさを感じ得よう。助手席は暇を持て余し、後席に至っては人権すら与えられないTTSだが、一度運転席に着けばドライビングという名の最高のエンターテイメントが待っているのである。
P.S. アウディ TTの後席居住性について参考動画
VIDEO
GTにおける収録車種:
RS
ドイツ語の「RennSport」(レーシングスポーツ)に由来するアウディのエクストリームモデル。Sシリーズとの明確な違いは、子会社である「アウディスポーツ」によって専用開発が行われている点にある。外装はなかなかにマッシブな見た目になり、ボディカラーに黒を選べばテールランプとエンブレム以外に殆ど有彩色の無い、なかなかゴキブリ 威圧的な外観を有する。
エンジンも気合の入り方がまるで別物であり、特徴的な直列5気筒を始めとするRSエンジンはそのほぼ全てがリッター100馬力を大幅に超えている。しかしその一方で、パフォーマンスを重視したが故にSシリーズよりは内装が若干質素になっていることも多い。この辺りの塩梅の難しさは冒頭で話したとおりである。
R8 V10
〜常識を疑ったアウディのファイナルアンサー〜
ボディタイプ
2ドアファストバック
排気量及び形式
5.2L V10
最高出力(PS)
525
車両重量(KG)
1565
駆動方式
M4WD
販売価格(万円)
1994-
公称最高速度
316km/h
0-100km/h加速
3.9s
ランボルギーニ社というスーパーカー界隈の雄をフォルクスワーゲングループに迎え入れた21世紀。ムルシエラゴに次いで登場させる「ベイビーランボ」ガヤルドの基本構造の設計を担当したのがアウディだった。同社はスペースフレームやエンジンブロック等のコンポーネントを設計し、それをガヤルドだけでなく自社製マシンの開発に流用しようと考えた。結果、出来たのが「R8」である。コンセプトカー「ル・マン・クワトロ」にルーツを持つ、スーパーカーとしては過去に類を見ない有機的でユニークなデザイン。アウディのお家芸「Quattro」で電子4WD化し、高次なパフォーマンスを発揮する駆動系。マグネティックライドによって快適性との両立を図った足廻り。X線でミクロン単位まで細部を精査する製造工程。その全てが画期的だった。ガヤルドと共に2000年代を代表するスーパーカーと言えよう。2016年には二代目が登場。カーボンファイバーのスペースフレームへの導入によって重量そのままにボディ剛性を大幅に向上することに成功した。
GTにおける収録車種:
RS6 Avant
ボディタイプ
5ドアステーションワゴン
排気量及び形式
5.0L V10 TwinT/C
最高出力(PS)
580
車両重量(KG)
2160
駆動方式
F4WD
販売価格(万円)
1660-
公称最高速度
290km/h(Limited)
0-100km/h加速
4.6s
2008年に登場したAudi A6シリーズ最強モデル。4年のブランクを経て復活し、暫定的に最速だったS6を引き摺り下ろした。6000回転中盤で最高出力580馬力を生み出すR8譲りの5L V10ツインターボはアウディ史上最強のパワーを誇り、オートブリッピングを始めとする専用プログラムを持つ6速ティプトロニックとアウディ自慢のセンタートルセンLSD搭載のQuattroによる圧倒的なトラクションとの相乗効果で総重量2トンを超える巨体を4.6秒で時速100キロの世界へ誘う。そんな大パワーを受け止める為のワイドタイヤを収める、アウディ・クワトロを彷彿とさせる大型のフレアフェンダーはエンジンフードフードと共にアルミ製に置き換わり、旋回時の慣性モーメントの低減に寄与する。獰猛なエンジンとターボを宥めるサブラジエーターとインタークーラーを搭載するためにフォグランプを撤去。DRL(デイライト)機能もヘッドランプユニット下部に収まる10基(10気筒を表す意匠)のLEDに移した。足廻りにはF6ポッドR1ポッドのブレンボ製モノブロックキャリパーを奢ったドリルドローターや、「コンフォート」「スポーツ」「ダイナミック」と三段階のモード変更がが可能な、「DRC」と呼ばれる個別にオイルラインが繋がった機械式可変ダンパーが備わる。また、予防安全装備としてボッシュが専用開発した総合電子姿勢制御システム(ABS・EBD・TCSを含む)が搭載され、「スポーツモード」又は「OFF」を選択すれば限界性能を極限まで引き出した、介入の殆ど無いアグレッシブなドライブが可能。室内に目を向けてみると、ステーションワゴンらしく実用性と開放感のある上質な空間が広がる。ナッパレザーを纏ったスポーツシートに包みこまれるコックピットの視点ではエンボス加工されたフラットボトムステアリングやアルミ製ペダル、RS6のエンブレムとフルスケールが特徴的な専用メーターが目に入る。トリムにはカーボンパネルが多用され、良くも悪くもキリッと引き締まったテイストを醸し出す。デュアルゾーンエアコンは、サンルーフに備わった太陽電池によって電動コンプレッサーを駆動することでエンジン停止時でも作動可能。インパネにはめ込まれたディスプレイはアウディ通例のMMIシステムであり、各種車両装備の設定・調整や、テレビ・デジタルラジオの視聴、DVDナビゲーションの表示が可能。テールゲートを開ければVDA方式で565Lの広大なラゲッジルームが眼前に広がる。 セカンドシートを倒せば更に1660Lに広がる空間は、ちょっとした家具やサーフボードのような長尺物も積み込める。実用性は全く犠牲にせず、それでいて下手なスポーツカー風情なんざ余裕で下せるほどの圧倒的なパフォーマンスまで両立した、まさに非の打ち所がないというべきステーションワゴンであろう。
ちなみに、最新のモデルだと1000万円台はするが、グランツーリスモに収録されている2008年式のような古いモデルなら、中古車で1000万円台以下はおろか500万円台以下でも買える個体もある。
「スポーツカーは流石に無理だけど、家族で乗れる高性能車が欲しい!」というファミリーの方々はミニバンも良いけど、こういう車も探してみてはいかがだろうか。
GTにおける収録車種:
RS e-tron GT
ボディタイプ
4ドアファストバック
排気量及び形式
440KWデュアルモーター
最高出力(PS)
646(定格出力598PS)
車両重量(KG)
2320
駆動方式
4WD
販売価格(万円)
1899
公称最高速度
250km/h(Limited)
0-100km/h加速
3.3s
R8がICEモデルとしての生涯を終え、EVに生まれ変わるその時までアウディ・RSのフラッグシップを担うのはこのRS e-tron GTに他ならない。デザインスタディモデルにあの
アウディ VGT を持ち、エアロダイナミクスを徹底的に追求した結果に得た市販車最高クラスのCd値0.24をマークする流麗なボディの床下には93.4KWhのリチウムイオンバッテリーが搭載された。ローンチモードに移行すれば、システム最高出力646馬力まで一時的にオーバーロードされた2基の同期式電動モーターが3.3秒で時速100km/hまで2.3tの巨体を駆り立てる。アウディ伝統の4WDシステム「Quattro」は、EVでは前後モーターそれぞれの左右トルクスプリット・アクティブベクタリングという形へ姿を変え、対路面応答速度が従来の機械式の約5倍という、新時代にふさわしいアウディのアイデンティティを確立した。アクティブサスペンションは高速走行時には最低地上高を下げ、ダウンフォースを向上。アクティブエアロとの合わせ技でどんな速度域でも最適な空力性能を得られる。インテリアは造形こそ複雑だが、ディスプレイやマテリアルの合わせ方はアウディらしく上質で落ち着いている。熟成されたアウディ・バーチャルコックピットはセンターのMMIディスプレイと連携。多彩な情報を必要に応じて高い視認性で提供し、エアコンパネルといった運転中に使う装置以外はソフトウェアに内蔵したシンプルなインターフェイスも相まってインパネは非常ににスタイリッシュだ。Bang&Olufsen製サラウンドシステムとパノラマサンルーフで包みこまれた5座のシートは電動機構を備えつつ高いホールド性を誇る。更にこれらのシートはオプションで内装素材と共にリサイクル素材で出来たレザーフリーのものに変更可能。アウディが掲げる「カーボンニュートラル」へ向けた施策として、車体自体にも再生素材が多数使用され、製造時に使用する電力もクリーンエネルギーで賄っているという徹底ぶり。半世紀前にホンダが世に送ったCVCCエンジンの様に、四半世紀前にトヨタが世に問うたハイブリッドシステムの様に、数十年後を生きる子供達へ蒼い空を残さんとする巨大企業の熱い努力と、妥協の無い走りを追求するクルマ好きのモータースポーツへの絶えぬ情熱が高次に融合したRS e-tron GT。この夢の結晶が半世紀後へ送る空の色を思えば、EVと言う物も悪くないと思えてくるから不思議である。
GTにおける収録車種:
Future of Audi Sport
BMW
スポーツ性能を全面に押し出したマニア御用達のブランド。創業は1916年、バイエルン航空機製造として発足した後、一年で現在のBMW(バイエルン発動機)に改名。以前はFRと直6へ並々ならぬ拘りを見せ、「駆け抜ける歓び」というコーポレートスローガンまで持つほどに気合が入っていた。2010年台からはさすがにダウンサイジングターボの波にさらされ直6搭載モデルも希少となり、経営と動力性能の高効率化によってボトムレンジはMINI譲りのFFベース、アッパーレンジも4WDのxDriveが標準となってしまったが、それでもドライバーファーストの車作りは死守している(最近ではエンドユーザーが鼻の穴 キドニーグリルの巨大化に悩まされているのはよく知るところ)。大企業としては珍しく創業以来同族経営なのは、意外と知られていない。
エンブレムは発祥の地・バイエルン州の州旗がモチーフになっている。よく言われている
航空機のプロペラ説は誤り である。この俗説の真相は、広告として冗談まがいに打ち出した一枚のポスターに由来する。こちらも殆どデザインの変化はない。
M Performance
通常モデルにスポーティオプションをセットした「M Sports」とBMWの本気である「M」の間に位置するミドルパフォーマンスモデルで、BMW開発車両をベースにチューニングをM Motorsportsが行っている。モデルナンバーはM340と頭にMが付く3桁表記。
M
M MotorsportsがBMW本体のシャーシをベースに開発するハイパフォーマンスモデル。全開走行を想定した設計がなされ、限界性能が社内でもとりわけ高いモデルが集結している。モデルナンバーは例えば3シリーズベースの場合M3となり、一部の例外を除けばMの後に続く数字がベースモデルを表す1桁となる。
M1
〜幻影に消えたシルエットフォーミュラ〜
ボディタイプ
2ドアファストバック
排気量及び形式
3.5L I6
最高出力(PS)
277
車両重量(KG)
1300
駆動方式
MR
販売価格(万円)
2650(現在換算約5300万)
公称最高速度
不明
0-100km/h加速
不明
当時ポルシェが牛耳っていたFIAのグループ4・5(通称:シルエットフォーミュラ)へ殴り込みをかけるべく、BMWが社の威信をかけて開発したスーパーカー。リアミッドにマウントされた、ドライサンプ機構と機械式イグニッションを搭載した3.5L I6 DOHCユニットはグループ4仕様で470馬力をマーク。ランボルギーニが開発したスペースフレームシャーシには、巨匠・ジウジアーロ率いるイタルデザインが造形したFRP製のボディを宛てがった。BMWとして初の試みであった新型ミッドシップ・スーパースポーツの開発は、各界隈の協力によって僅か1年で終了・試作車が完成した。しかし、FIAのホモロゲーション取得の為に必要な生産台数を揃える計画の筈が、ランボルギーニの士気の低さ故に製造ペースは洒落にならないレベルで遅かった。その後製造担当を変更するも、そもそもの量産性の悪さによって相変わらず苦戦。ひどい時には月3台程度と、文字通りスタートラインにすら立てない状況が続いた。BMWはエキシビションレースを企画するなど、必死にM1の存在意義を後付けていき、企画から4年近く経った1980年暮れに規定台数をようやく達成すると早速FIAへ志願。一部条件の不達成を大目に見てもらい、81年からの参戦が決定した矢先のことだった。なんとFIAの車両規定改編に伴うカテゴリの再配置によってM1は本来の行き場を失ってしまったのである。その後はグループBで華々しいプロトタイプカーの陰に隠れつつひっそりとキャリアを積んでいった(一応表彰台の常連であり、実力自体は相応に有していたようだ)。ラリーで連勝を重ねた84年シーズンを最後にM1は表舞台から姿を消した。市販車もホモロゲ取得用ということもあり生産台数は500台を割っている。BMW Mの原点として、会社の期待を一身に背負った幻のスーパーカー・BMW M1が見ることの出来なかった景色は、今日までの半世紀に生まれた後輩達がきちんとその目に焼き付けている筈だ。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
Z4 Mロードスター
ボディタイプ
2ドアコンバーチブル
排気量及び形式
3.2L I6
最高出力(PS)
343
車両重量(KG)
1430
駆動方式
FR
販売価格(万円)
860-
公称最高速度
250km/h(Limited)
0-100km/h加速
5.0s
BMW Mと言えば、その過激なまでのチューニングによって、ドライバーをスピードの向こう側へ永遠に駆り立てるような情熱的な走りが特徴であり最大の魅力とも言えるが、BMWの2シーターコンバーチブル「Z4 E85」をベースにMが化かしたZ4 Mロードスターだけは、その定説から少し離れた特異な「BMW M」となっている。所々エッジを効かせながらも全体的に丸みを帯びた2シーターボディにはM3に搭載される3.2Lのシルキー6がマウントされ、パワードームが膨らんだ専用エンジンフードが備わる。外見上の見た目の違いはフロントバンパーやマフラーエンド位しかないものの、中身は至ってフレッシュ。エンジンと並び、そのクルマが「M」を冠することを許される所以の一つである足廻りには、徹底的な拘りが詰まっている。まずはスポーツ走行に不要なランフラットタイヤを廃し、それによって空いた快適性のキャパシティーは全てサスペンションのタイト化に注ぎ込んだ。ファットなスポーツタイヤを履いた5本スポークホイールの奥に見えるドリルドローター付きブレーキはM3コンペティションからのキャリーオーバーだ。パワーステアリング機構はダイレクト感を重視したが故に電動式を除外し、敢えてエンジン負荷を増やす可変油圧式を採用。硬い脚や重厚な操作感の6MTも相まって、ドライバーの操作がリニアに挙動に反映される素直な走りを手に入れた。とはいえ、ボディ剛性然りエアロダイナミクス然り、クローズドトップのクーペ仕様に走りの面で劣る点は大きい。しかし、コンソールのボタンを操作するだけで約20秒で頭上に出現する外界と共有された空間は、クーペでは得られない様々な体験をもたらしてくれる。シルキー6のグラマラスなサウンドをしっかりした音圧という形で背中越しに感じ、フロントスクリーンから巻き込んでくる風を肌で味わう。クルマと共鳴するような得も言われぬ感覚は、ロードスターの特権だ。運転席に座り、語らずとも己が凄みを訴える300km/hフルスケールメーターを眼前にして、キーを捻って「M」のロゴが輝く太巻きのステアリングを握る。ドライバーに抗わんとするクラッチを窘めてシフトノブをローに入れる。手足が演じる運転動作、目で見るもの、耳で聞く音、肌で感じる空気、それら全てがドライバーのドライビングプレジャーにつながる。絶対的な速さではなく「一体感」を追求したその姿はまさしく、BMWが掲げるスローガン「駆け抜ける歓び」の化身と言えるだろう。
GTにおける収録車種:
M3
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
3.2L I6
最高出力(PS)
343
車両重量(KG)
1560
駆動方式
FR
販売価格(万円)
893
公称最高速度
250km/h(Limited)
0-100km/h加速
5.2s
BMW Mを象徴するスーパースポーツ・M3は、2000年にE46ベースの3代目へ移行した。先代より100kg以上肥大化したボディ、と書くと聞こえは悪いが、足廻りやボディの剛性を大幅に向上した上で内装の質感も確保し、グランドツアラーとしての一面も手に入れた。走りの面では快適性さえオミットした「CSL」なんかには及ばないものの、この"素"M3とて決して馬鹿にできない運動性能を持っている。エンジンはBMWが誇る「シルキーシックス」のスポーツコンバージョン・S54を搭載。強度を担保する為に敢えて採用された鋳鉄製ブロックは新開発の鍛造コンロッドやクランクシャフトを持ち、ヘッドには吸排気共に無段階可変バルブ機構「VANOS」を搭載。6連スロットルバルブやハイフローINマニホールドも相まって、レブリミットの8000回転まで文字通りシルキーに回る軽快なチューンがされている。サスペンションは鍛造アルミが使われ、慣性モーメントを低減した追従性の高い足廻りを実現。広げられたトレッド幅を許容するフレアフェンダーや、デュアルVANOSを収めたパワードーム付きエンジンフードは勿論アルミ製。ドライバーの意思を見事にトレースする高剛性・軽量ボディは340馬力を余すことなく使い切れる。BMWらしくクリーンな室内は、申し訳程度にカーボン調トリムが入っている程度でベースのE46と然程違いはない。これがCSLならメモリー付き電動シートやオーディオが消えるところなので結構なことであろう。インパネセンターがドライバーシートを向いたクローズなコックピットには、如何にも2000年前後の高級車らしくスイッチが仰々しく並ぶ。しかし、革のシートとMDプレイヤーさえあれば気持ちが充足する。革ブーツの付いたシフトノブはカッチリとしたフィーリングを持ち、無機質なメーターはさり気なくクロームリングで飾られる。無闇に同乗者に媚びない、良くも悪くもBMWらしいインテリアこそ、シルキーシックスの味を引き立てる調味料なのかも知れない。バイエルン発動機という社名に恥じない名機にふさわしい、至高のドライバーズカーだ。
ちなみにDセグメントのMはM3クーペ(現M4)が有名だが、M3セダンとM3ツーリング(ワゴン)も存在する。同様にEセグメントのM5セダン/M5ツーリング/M6も存在し、上のRS6同様世界最速ファミリーカーを競う車種となっている。
GTにおける収録車種:
Future of "M"
Vision M Next
M1の後継モデルとして計画されていたスーパースポーツ。BMW iシリーズに採用される電動化技術を用いて1300馬力をマークするパワートレインがトピック。しかし、計画から5年が経った今尚続報はなく、ましてやその後に出た「XM コンセプト」が市販された部分から見ても、市販化は考え辛い。「キャデラック シエン」同様、幻に消えたスーパーカーと相成るだろう。
キャデラック
アメリカが誇る象徴的な高級ブランド。近年はWEC/IMSAでのハイパーカークラスでの活躍や、2026年のF1への参戦の発表とモータースポーツでの話題も多い事で知られる。創業は1899年。かのヘンリー・フォードを擁した会社だったが、ヘンリーは経営陣と揉めて退社。後にフォード・モーターを起こすという興味深い歴史がある。デカいエンジンと魔法の絨毯のような乗り心地、豪勢な内装で羨望の眼差しを浴び続けてきたが、近年ではデザイン言語を「アート&サイエンス」と再定義し、走行性能にも重きを置いた自動車造りに取り組んでいる。
エンブレムは「キャデラック・クレスト」。発祥の地・デトロイトを開拓したフランス貴族「アントワーヌ・ド・ラ・モス・カディヤック」から名前を取った社名と共に、カディヤック家の家紋をリメイクしたエンブレムが使われている。エンブレムの黒は「名声」、赤は「大胆さ」、青は「勇気」、黄は「富」、銀は「美徳」を表現している。複雑な形状故に一世紀ちょっとの間に数十回デザインが変更されてはいるものの、クレストの本質は創業当時から変わらず保たれている。
V
シボレー・パフォーマンス(GMのパフォーマンス部門)が手掛けるキャデラックの高性能モデル。ブランドの発足は2004年と、比較的最近のことである。最大の特徴はスーパーカー顔負けの圧倒的なパワー。アメリカンブランドらしく、伝統と信頼のV8エンジンを広くラインナップ。中でもシボレー・スモールブロックを積むモデルは、世代にもよるが600馬力さえ超えてくるような凄まじいパフォーマンスを発揮する。
「V」の称号の由来は明確に明らかになっていないが、最有力なのは戦後のキャデラックに使われたサブエンブレムであるV字のオーナメントが元になっているという説である。このオーナメントを更に遡ると1939年モデルのエンブレムに行き着く。こちらの「V」もまた、キャデラックがV8のパイオニアであるところから来ている説、あるいはそれ以前の初期のキャデラックに乗っていたボンネットマスコット「ゴッデス」をモチーフにしている説など、確定はされていない。
専用モデルこそ存在しないが、そのパワーを武器に聖地ニュルブルクリンクでクラス最速の座を勝ち得たモデルもあったりと、なかなかの実力派である。価格設定はベース車の乗り出し価格の概ね1.5〜2倍程度なのだが、世界最大級の自動車メーカー故に実現できる圧倒的な量産体制とサプライチェーンにより、価格自体は競合の他ブランドより比較的安い。勿論クルマはパワーだけでは語れないものの、価格÷パワーの式をこのページの車種に当てはめてみると、キャデラックの凄みが分かるだろう。
また、現在ではブランドの細分化に伴って、最強の立ち位置は後述のBlack Wingシリーズに譲っており、アウディ Sシリーズ等に相当するマイルドチューンの方面へ移行した。かと思ったら700馬力のエスカが出るし、どうなってんだよ
XLR-V
ボディタイプ
2ドアコンバーチブル
排気量及び形式
4.4L V8 S/C
最高出力(PS)
469
車両重量(KG)
1750
駆動方式
FR
販売価格(万円)
1360
公称最高速度
250km/h(Limited)
0-100km/h加速
4.6s
エスカレードと共にキャデラックのフラッグシップを担っていた2シーターコンバーチブル・XLRをベースに各部をチューンアップしたモデル。そもそものXLR自体が何を隠そうC6 コルベットと同じGM・Yプラットフォームを採用しており、低重心で前後の慣性モーメントの少ないボディがもたらす高い回頭性や、フロントミッドシップ・トランスアクスルレイアウトによるロール・ピッチの抑えられた動きによって元々の走行性能が高かったのも、XLR-Vを語る上で欠かせないトピックである。さて、同じ「V」を名乗りつつもCTS-Vとの相違点は搭載エンジンの違いにある。あちらがコンベンショナルなシボレー・スモールブロックで馬力を稼いでいたのに対し、XLR-Vはキャデラックのみに使用されてきたDOHC式ハイテクV8「North Star V8」を載せている。オールアルミエンジンで、吸排気可変バルブ機構とダイレクトイグニッションを搭載した最新型のヘッドにスーパーチャージャーで過給。4.4Lながら469馬力と、過給器付きとはいえど大排気量エンジンとしてはかなり高性能なリッター辺り100馬力を達成している。更にフェイルセーフ機能として、冷却水が漏れて完全に冷却系が機能喪失した場合でも、燃焼シリンダーをコンピューター制御で制限することで空冷しながら走行を継続できる「Limp Home」機能を搭載しており、キャデラック故の高い信頼性が窺い知れる。足廻りも徹底的に締め上げられている。サスペンションにはコルベットで採用されたマグネティックライドを搭載。路面状況を即座に読み取り、最適な減衰力を調整することで余計なロールやバンピングを収束する。ブレーキもこれまたコルベットZ51から流用した大径ドリルドVディスクローターに変更され、十分な制動力と耐フェード性を両立した。一方で、メッシュグリルや19インチポリッシュドアルミホイールが専用装備とされた程度で、エッジの効いたエクステリアに大幅な変更はないので空力性能面では若干の不安が残る。それでも、そんなウィークポイントさえ帳消しにしてしまうXLRの大きな魅力はキャビンに詰まっている。
まるでトランスフォームするかのように仰々しくトランクリッドを持ち上げて、30秒でルーフを展開格納する電動ハードトップはフラッグシップの証だ。十分なホールド感とクッション性を誇るキャデラック自慢のフルレザーシートは、電動調節は勿論のこと、ヒーター&ベンチレーター機能まで備えている。センターコンソールやドアパネルには本木目のウォールナットが使われ、モケット地のカーペットも相まってインテリアは最早リビングだ。ダッシュボードにビルトインされたボイスコントロールナビゲーションはCDチェンジャー、XM衛星ラジオ、テレマティクス等が利用でき、BOSE製サラウンドシステムを通じて多彩なエンターテインメントが楽しめる。
キャデラックらしく先進装備にも抜かりはなく、ヘッドアップディスプレイやステアリングヒーターに加えてこの時代には珍しいアダプティブ・クルーズコントロールを搭載している。コルベットの持つ運動性能のポテンシャルを秘めつつ、キャデラックが得意な豪華絢爛な空間を演出したXLR-Vは、悪く言えばどっちつかずだが、実は最高のドライバーズカーの一台だったりするかも知れない。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
CTS-V Coupe
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
6.2L V8 S/C
最高出力(PS)
564
車両重量(KG)
1940
駆動方式
FR
販売価格(万円)
899-
公称最高速度
308km/h
0-100km/h加速
3.9s
キャデラックが「アート&サイエンス」を標榜して投入した新型車の第一弾こそが「CTS」である。仮想敵はCクラスや3シリーズ。ライバルを徹底的に研究し、高性能ブランド「V」の初陣まで切らせたものの鳴かず飛ばず。やむなく移行したこの第二世代で、逆に自身が飛ぶ鳥を落とす勢いで知名度と人気を得ることになった。二代目「CTS-V」はGMが誇るスーパースポーツ「シボレー・コルベット」の最強グレード「ZR1」から受け継いだ6.2LスーパーチャージドV8を搭載するホットモデルである。若干の調整を入れつつも最高出力は驚愕の564PS。それを受け止める足廻りにはF6ポッド、R4ポッドのブレンボ製対向キャリパー付きVディスクブレーキが奢られ、全輪独立懸架サスペンションにはGMお得意のマグネティックライドコントロールの技術が投入されている。これは、パドルスイッチ・全段ロックアップ機構付6速トルコンAT(マニュアル設定もあり)と、姿勢制御システム「スタビリトラック」との協調制御で「ツアー」「スポーツ」「コンペティション」それぞれのドライブモードで、フラットライド感やトレーシング能力を調整し、ドライバーの意思や気分に合わせた最適な走行制御を実現する。
黒曜石調トリムと本革で設えられたインテリアにはアルミ製ペダルやレカロ製電動セミバケットシートが備わり、グレードやオプションによってはマイクロファイバー製ステアリングホイールや電動チルトサンルーフが搭載される。金属製の個別フードで覆われた3連メーターの指針にはLEDトラッカーが追加され、スポーツドライビング時の視認性を向上しつつ、レブリミットでは点滅することでドライバーに変速を促す。キャデラックらしく快適装備にも抜かりはなく、デュアルゾーンエアコンにシートベンチレーションまで搭載される。BOSE製5.1chサラウンドオーディオシステムには衛星ラジオやテレマティクスと接続可能な40GB HDD・VICS付きボイスコントロールナビゲーションが組み合わされる。電制パーキングブレーキやクルーズコントロールも備わり、ドライバーの快適性に重点を置いたベースモデルの特徴がきちんと共存できている。更に、セダン仕様はニュル北アタックで4ドアセダン最速の座を奪っているという事実が走行性能の高さまで裏付けしている。生粋のグランツーリスモと見て間違いない。
GTにおける収録車種:
ESCALADE V
ボディタイプ
5ドアフルサイズSUV
排気量及び形式
6.2L V8 S/C
最高出力(PS)
691
車両重量(KG)
2850
駆動方式
F4WD
販売価格(米ドル)
159995
公称最高速度
200km/h(Limited)
0-100km/h加速
4.4s
21世紀以降の新生キャデラックの顔として、発売から四半世紀経った今尚市販車としてはブランドの頂点であり続けているエスカレードだが、第五世代にしてついにキャデラック・レーシングの血統を継ぐ「V」が登場したのである。とはいっても、エスカレード Vが出たからといって、チューニングについて多くを語る必要はない。なぜならボンネット下にはGMが誇る6.2LスーパーチャージドV8「LT4」が収まるからである。376cui・プッシュロッド・スーパーチャージャーという最早様式美のような構成だが、GMは第五世代スモールブロックにあたって新技術を多数導入し、燃焼効率はかなり向上している。2.7Lスーパーチャージャーを備えたエスカレード専用ユニットは700馬力近いパワーを炸裂させ、車両重量3トンに迫る普通免許ギリギリの巨体(貨物登録すれば完全に準中以上になる)を0-100キロ加速4.4秒という、下手なスポーツカーも真っ青な驚異的な加速力を以てして政府規制の125マイルまで加速するというから驚きだ。もちろんそんな運動量の塊のような力を抑圧するブレーキも相応に強化されている。前後合わせて30インチ近くに及ぶベンチレーテッドディスクにはF6ポッドのブレンボ製キャリパーが組まれる。増加した重量もあって制動距離はベースと殆ど変わらないものの、耐フェード性が著しく向上している。センターコンソールの「V」スイッチを押せばマグネティックライドが締まり、可変エキゾーストのバルブが開き、ステアリングレスポンスとStabiliTrak(GMの総合姿勢制御システム)の限界性能が上がる。あまりに重い為に、決してサーキットマシンにはなり得ないが、このクルマは「エスカレード」であるということが肝であろう。常軌を逸したハイスペックシャーシの上に載るボディには、一世紀以上に渡ってキャデラックが積み上げてきた先進性と快適性のエッセンスが詰まっている。重厚なドアを開くと即座にリトラクタブルサイドステップが展開し、ウェルカムライトと共に乗員をもてなす。エアライドサスペンションとノイズキャンセリングシステムで隔絶された室内は隈無くアルカンターラとセミアニリンレザーで包みこまれ、1・2列目はマッサージ・ヒーター・ベンチレーター機能付きという豪華絢爛ぶり。ルーフ一面に広がるパノラミックグラスルーフはもちろん電動チルト・スライドに対応し、広い車内でどの席の乗員もストレスなく会話できるように発話補助機能が付いた、AKG製36スピーカーサラウンドシステムが備わる。2列目には独立したエンターテイメントシステムが提供され、冷蔵庫まで用意されている。
キャデラックらしく先進装備にも抜かりはない。HUDは言うに及ばず、ナイトビジョンシステムやARナビゲーションが搭載され、それを表示する55インチフルワイドディスプレイはフロントピラー間を埋めるほどにデカいのである。自動運転レベル3に対応すべく搭載された様々なカメラやセンサーが実現する予防安全パッケージと、それが可能にした真骨頂のGMスーパークルーズは、アメリカ全土のほぼ全てのハイウェイで車線変更を含む全ての運転操作を自動化する。最上級のおもてなしととびきりのパワーを手に入れたエスカレード Vが見せてくれる「余裕」の雰囲気こそが、最大の脅威にして最高の優越感と言えなくは無いだろうか。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
V Black Wing
2022年に新設された新たなハイパフォーマンス部門。Vシリーズがベース車との大幅なスペック差を埋めるべく格下げされたために投入され、以前のVシリーズ(概ね4-500馬力以上を発揮するモデル)の立ち位置を継承する。
Future of "V"
LYRIQ V
ボディタイプ
5ドアラージサイズSUV
排気量及び形式
デュアルモーター
最高出力(PS)
615(Vモード有効時)
車両重量(KG)
2713
駆動方式
4WD
販売価格(米ドル)
78595
公称最高速度
不明
0-100km/h加速
3.3s
2026年度よりデリバリー開始予定。キャデラックがブランド初のフル・エレクトリックビークルとして2022年に発売したミッドサイズクロスオーバーSUV「LYRIQ」をベースに、チューンアップされたハイパフォーマンスモデル。2025年1月に詳細が明らかになったばかりの新型車である。
四輪を駆動するデュアルモーターはベースモデルから大幅に強化され、Vモード又はVelocityMAXモードに移行すれば出力を615馬力まで増大し、発進加速ではキャデラック史上最速の3.3秒(CT5-V BWの3.4秒を凌ぐ)という驚異的なパフォーマンスを誇る。フロントブレーキには390mmVローターにブレンボ製6ポッドキャリパーが組み合わさる。可変容量ダンパーやサウンドジェネレーターが搭載され、ドライビングの高揚感とダイナミックな走りを実現した。
26年には同社の「ビスティック」「オプティック」と共に日本国内正規輸入化が予定されている。価格は恐らく1500万を下らないだろうが、右ハンドル仕様でCHAdeMOにも対応する模様。気になる人は要チェックだ。
Opulent Velocity
2024年に発表されたコンセプトモデル。Opulent(贅沢)Velocity(疾走感)の名が示す通り、極上のラグジュアリーエクスペリエンスと至高のドライビングエクスペリエンスを融合すべく開発された。シザースドアを開けると現れる宇宙船の様な空間は、一見4座のシートがあるのみである。なんと自動運転レベル4に対応し、ドライバーは一切の運転操作を委ねることが出来るのだ。そしてその間は乗員の脳をリラックスさせる光と音の演出がなされる。音声コマンドでヴェロシティモードに切り替えると、たちまちダッシュボードからステアリングホイールとペダルが現れる。デュアルモーターが生み出す圧倒的なパワーをアクティブサスペンション・エアロが機敏に動き制御した上で、今度はドライバーに全ての運転操作を一任する。フロントスクリーンのARディスプレイには路面状況や車両情報をオーバーレイ表示。更にサーキットに持ち込めば、ゲームさながらのゴースト機能が利用できるのだ。パワートレインの詳細は明らかになっていないが、GM最新のEV専用プラットフォーム「Ultium」を搭載していることがわかっている。この「未来のグランツーリスモ」を路上で見れる日は、そう遠くないのかもしれない。
レクサス
我が国、日本の技術力を世に知らしめたトヨタの国産高級ブランド。普段のトヨタ車と異なる風格を漂わせているのもまた魅力的。設立は1989年。同年に発売した初代LS(日本名:トヨタ・セルシオ)は優れた信頼性と高い快適性を評価され、国内でも2005年の参入から四半世紀も経たないうちにドイツ御三家に並ぶ強烈な存在感を示した。母体であるトヨタが擁する既存のトヨタ車との部品やプラットフォームの共有が最大の武器であり、コレによって効果的なコストカットを行うことで同格の他社製車と比べて比較的安価な価格設定を実現している。
エンブレムはブランド名である「LEXUS」の頭文字そのままである。こらそこ、ロッテリアに似てるとか言わない
F Sport Performance
アウディのS lineやメルセデスのAMGラインに相当する、主に足廻りや外装を強化した「F Sport」をベースに、パワートレインの換装まで行って総合性能を向上した本格派である。「F」の詳細は後述するとして、パワートレインの性能は「F Sport」の一種とは思えないほどに別物であり、サーキットスペックを体現できるだけの運動性能を持っている。
IS 500 F Sport Performance
ボディタイプ
4ドアノッチバック
排気量及び形式
5.0L V8
最高出力(PS)
481
車両重量(KG)
1720
駆動方式
FR
販売価格(万円)
850
公称最高速度
240km/h
0-100km/h加速
4.4s
あのISが、約10年ぶりにV8を携えて帰ってきた。2007年に発表された「IS F」が搭載していた5L V8は、長年の改良サイクルの中で500馬力に近いまでのパワーを手に入れたのだ。ともすれば諸兄が気掛かりなのはこの車が「F」を名乗っていないところに他ならないだろう。それもそのはず、かつてIS FのライバルだったM3やC63がライバルでなくなったからである。この10年の間にこのセグメントは、キャデラックが台頭するアメリカ勢によってパワーウォーズが勃発し、ドイツ三英傑率いるユーロ勢を主体に空力性能が著しく向上した。つまるところISは進化の波に乗れなかった、あるいは乗らなかったのである。絶対的な速さの追求は辞めにして、あくまで「操る楽しさ」に重点を置いたクルマ、それがIS 500なのだろう。ドイツ車を中心に6気筒ツインターボエンジンが主流になっている中で敢えてのNA V8。ここにIS 500のエッセンスが詰まっている。勿論F Sportである以上、ただV8を積んだだけで終わってはいない(どちらかといえば因果が逆=F SportにV8を載せたという方が正しい)。足廻りには4輪すべてにパフォーマンスダンパーを装着し、専用プログラムのAVS(可変減衰力機構)やVDIM、そしてトルセンLSDによって無駄なロール・ピッチや減速を抑制し、安定してトレーシング能力を維持することができる。ブレーキはRC Fには及ばないものの、大径VディスクローターにF2・R1ポッドのキャリパーが組み合わさり、クラスを超えた制動力を誇る。外装に通常のF Sportとの差は殆ど無いが、V8を主張するボンネットのパワードームや、トランクリッドに付いたスポイラーがスペシャル感を演出する。インテリアは流石に設計が10年前なだけあって、古さが否めない。一応ナビゲーションの様に進化が激しいものはきちんと更新されているが、ステアリングやインパネからは洗練された印象は受け難いだろう。それでも専用装備のマルチファンクションディスプレイ付きTFT式メーターであったり、スエード調のトリムやスポーツシートであったりと、「F」のDNAを彷彿とさせるアイテムがドライバーの感情を駆り立ててくれる。大事なのは、この時代にV8を買う、ということである。台形パターン4本出しエキゾーストや、クロスプレーンの鼓動にV8を感じ、車に促されるでもなくドライバーの意のままにそれを操れる快感は並大抵のものではない。スピードを追い求めた末にアメ車ですら忘れかけているこの世界の面白さを、今日でもIS 500は熱心に伝え続けている。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
RX 500h F Sport Performance
ボディタイプ
5ドアミッドサイズSUV
排気量及び形式
2.4L I4 T/C+140KW デュアルモーター
最高出力(PS)
371
車両重量(KG)
2100
駆動方式
F4WD
販売価格(万円)
901-
公称最高速度
210km/h
0-100km/h加速
5.5s
レクサスのクロスオーバーSUV・RXの中でも随一の運動性能を誇るトップグレードがRX 500hである。同じF Sport Performanceでも先述のIS 500とは何から何まで正反対だ。腰高で塊感のあるボディを駆るパワートレインにはターボとハイブリッドシステムで武装した2.4L I4エンジンを採用。「DIRECT4」と称される4WDシステムは、デュアルモーターのアクティブトルクスプリット・ベクタリングによって4輪の駆動力を自在に制御。4WSと強力なターボエンジンとの協業で、電子制御の猛威を振るうアグレッシブなドライビングスタイルを確立した。IS 500が5L V8 NA+FRという伝統的なパッケージングでドライバーオリエンテッドな性格付けがされている一方で、RXのそれはSUVという原理的に不利な形状の中で極限まで運動性能を追求した、ハイテクマシンといった感じだ。システム最高出力371馬力という数値は車格を考えると物足りない気がしなくも無いが、例えばコーナーへの進入では4輪回生ブレーキとF6ポッドの強力な油圧ブレーキを活かした制動力でスピードを殺し、コーナリングではモーターのトルクベクタリングと4WSで車体を強引に捻じ曲げ、立ち上がりでリアモーターへ多分に駆動力を配分してターボラグを誤魔化しつつ4輪で地面を蹴飛ばす様に加速する…といった、かつての車には考えられないさながら曲芸のような(あくまで比喩的に言えば…)走りができるのだ。変速機にはTHS定番の電気式CVTではなく、トルコンレスの6速ATが選定されている。AVSで足を締め、パドルシフトを使えばたちまちダイレクトな感覚に陥るだろう。勿論RXたるもの、走りだけが華ではない。高級クロスオーバーの元祖が見せる世界は、いつの時代も洗練されている。ウルトラスエードと本革が織り交ぜられたスポーツシートは全席電動調節・ヒーター・ベンチレーターに対応。ステアリングと合わせて、ドライバーを自動認識すると同時にメモリー位置まで自動的に調整する。本木目と本革で造形されたインテリアはアンビエントライティングで囲まれ、上質な空間を演出する。エレクトロニクスも充実している。ステアリングスイッチには静電容量式のセンサーが追加され、ヘッドアップディスプレイと連携して手元で多彩な操作が可能になる「タッチトレーサーオペレーション」が使用できる。それと連携した7インチTFTメーターディスプレイは、「Sport」モード選択時にはレースカーを彷彿とさせる視認性の高いバーグラフ式タコメーターが表示でき、「F」のアイデンティティをさり気なく表現している。最新型のレクサス・セーフティシステム+はアダプティブヘッドライトやミリ波レーダー/単眼カメラ、ブラインドスポットモニター(BSM)、ソナーを備え、一通りの先進安全装備は勿論のこと、BSMを活用して煽り運転を検知し、録画・通報を提案する機能や、電子ラッチとの連携でドアの開閉を制御する機能、ソナーを活用した自動駐車機能、ドライバーの異常を検知して車両を安全に停止する機能等、各種センサーを活用した応用安全機能が多数搭載されている。単にハイパワーなエンジンを積んで足を固めるだけじゃ最早競えなくなった現代において、このRX 500hのような電子機器とソフトウェアの塊の様な車が絶対的な優位性を持っていることに異論を唱える者はいないだろう。それが良いか悪いかはともかく、未来の素晴らしさというものを教えてくれるのには変わり無いのだから。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
F
レクサス・Fブランドの中でもとりわけハイパフォーマンスモデルを擁する。同時に「F」はレクサスの目指す「操る楽しさ」の象徴であり、最高のテクノロジーに基づいた至高のドライビング体験への情熱の結晶ともされている。初出は2007年登場のIS Fと、キャデラック同様後発組である。頂点のLFAを除けば例外なく5L V8 DOHC32バルブ「2UR-GSE」を積んでおり、近年の国産車としては非常に珍しいV8搭載車となる。V8をアピールする台形に配置された4連エキゾーストパイプも「F」を「F」たらしめる特徴の一つとなっており、エアロは控えめながらもしっかり速いという、「羊の皮を被った狼」的演出に一役買っている。
「F」の由来はトヨタのホームコース「富士スピードウェイ」の頭文字から来ている。霊峰富士のお膝元で鍛え上げられたジャパニーズスーパースポーツの称号としてはこの上ないだろう。
▲Fのヒエラルキー。富士山の頂に君臨する唯一無二にして絶対の存在こそがLFAだ。
Lexus "F" Sports Apex(LFA)
〜原点にして頂点〜
ボディタイプ
2ドアファストバック
排気量及び形式
4.8L V10
最高出力(PS)
560
車両重量(KG)
1480
駆動方式
FR
販売価格(万円)
3750
公称最高速度
325km/h-
0-100km/h加速
3.7s
皆さんご存知、日本が世界に誇るスーパーカーであり、現代版の2000GTといっても過言ではない車。既に登場から10年以上も経つが未だにそのインパクトは色褪せない。
レクサス・Fの第一弾として発表されたのは「IS F」である事は周知の事実だが、IS Fの源流である「IS 430」の発案とほぼ同時期に水面下で動き出したプロジェクトがあった。それこそが「LF-A」と呼ばれるレクサス初のスーパーカー、後のLFAの開発計画であった。採算が取れないのは明確だったが、役員の好奇の目を受けて開発は順調に進んでいった。2009年の第41回東京モーターショーでベールを脱いだLFAは、その正式名称として改めて「Lexus "F" Sports Apex」を名乗り、一台3750万という量産国産車としては過去最高額の高額車両であったが、限定500台は直ぐに完売。一日一台ペースのハンドメイドでデリバリーが始まった。しかし数百億円の開発費を注ぎ込んだために、コレほどの高額にも関わらず販売するほど赤字が出るという始末だった。採算度外視もいいとこだろう。カーボンモノコックには6速シーケンシャルミッションとトルセンLSDが組み合わされたトランスアクスルと、専用開発のヤマハ製4.8L V10が搭載される。3連エキゾーストとの位置関係やフロアの音響効果の工夫でヤマハによってチューニングされたエキゾーストノートは「天使の咆哮」という異名が付くほどに甲高くアグレッシブなサウンドと評される。足廻りにはカーボンセラミックブレーキや別室式モノチューブダンパーが採用され、全速度域での最適なエアロダイナミクスの実現の為にアクティブスポイラーが搭載された。このように、560PSのパワーを完全な制御下に置ける、安全かつハイレスポンスな動きを求めて極限まで運動性能を追求した。現在ではあまりの人気故にオークションでの中古車の落札価格が一億円を超えるような事例も確認されている。とはいえ、あのトヨタがそろばんも弾かずに夢中で作り上げた作品である。名車になるべくしてなったも同然、現在の熱狂的な人気ぶりも必然と言えよう。
GTにおける収録車種:
IS F
ボディタイプ
4ドアノッチバック
排気量及び形式
5.0L V8
最高出力(PS)
423
車両重量(KG)
1700
駆動方式
FR
販売価格(万円)
833-
公称最高速度
305km/h
0-100km/h加速
5.1s
レクサス・Fの先鋒として2007年に発表されたのが、同社のコンパクトセダン、ISシリーズをベースに開発されたハイパフォーマンスモデル「IS F」だった。最高速度300km/h前後の高速域での安定性の確保の為にエアロダイナミクスは徹底的に見直され、同時に5L V8の搭載スペースやトレッド幅との兼ね合いからボディパネルはルーフやドア、トランクを除く全てが新規作成された。特にボンネットのパワードームは強力な運動性能を誇示するには程よく派手で見栄えが良い。エンジンは同社のフラッグシップ・LSから流用した5L V8をチューニング。片棒を担ぐ専用チューンド8速トルコン式ATは2〜8段のロックアップ機構は勿論のこと、トルコンATでは珍しいオートブリッピング機能まで搭載している。これによって減速チェンジのスピードがコンマ1秒まで早められている。ブレーキシステムにはブレンボ製F6ポッドR2ポッドのアルミキャリパーを搭載した前後ドリルドVディスクローターを採用。更にホイールには空力面を考慮した為に回転方向指定の19インチ鍛造アルミが選定された。前後異径も相まって4本全てが専用品(ローテーション不可)というスペシャルなものである。足廻りも本物だ。インテリアではシートがサイドサポートが大きく張り出した専用品に交換され(これにより乗車定員がベースの5名から4名に減っている)、フルスケールスピードメーターを擁する専用メーターパネルが奢られる。インパネに鎮座するナビゲーションシステムはマークレビンソン製14スピーカーシステムとG-Linkというテレマティクス機能が追加され、感動の音楽体験やレクサスならではの優れたサービス体系を容易く享受できる。オプションにはプリクラッシュセーフティ(PCS)とクリアランスソナーが用意されており、予防安全性能も時代にしては十分なほどに高い。更にPCS用レーダーを流用した車間維持が可能なアダプティブクルーズコントロールまで搭載される。ハイウェイでゆったりと流すようなシーンで態々気張る必要がないのはこの手の車の特権だろう。
GTにおける収録車種:
RC F
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
5.0L V8
最高出力(PS)
477
車両重量(KG)
1795
駆動方式
FR
販売価格(万円)
953-
公称最高速度
270km/h
0-100km/h加速
4.2s
同社の2ドアクーペ「RC」をベースにモディファイされたハイパフォーマンスモデル。元々エアロダイナミクスやボディ剛性が煮詰められている素性の良い車種であるため、LFAを除けば最もスポーティな成り立ちを持つレクサスと言える。心臓部にはIS F同様に5L V8 DOHCが採用されるが、ヘッドやコンロッドの改良でより高回転向けなテイストに仕上がっている。また、排気カムを遅角に切り替えることで膨張行程を延長し、燃焼効率を高める可変ミラーサイクル機構を採用し、低負荷時の燃費効率の向上を実現した。オプション設定の「TVD」は電子制御トルクベクタリングを実現し、旋回性能を高めている。サスペンションもジオメトリーを最適化した専用品を用い、ブレーキシステムもF6ポッドR4ポッドの対向アルミキャリパーが使われている。ドアやルーフパネルを除いたほぼ全てのボディパネルがIS F同様に新規作成され、トランクリッドにはLFAに次いで速度連動式のアクティブスポイラーが搭載された。一方でオイルクーラーやブレーキ冷却ダクトのために開けられたフロントバンパーの穴や、リアサイドの特徴的な台形配置の4連エキゾーストパイプといった「F」の象徴的なデザインもきちんと再現された。インテリアには4点式シートベルトReadyなハイバック式のセミアニリンレザー製スポーツシートが備わり、ステアリングやシフトノブは滑り止めのディンプル加工や専用カラーのステッチを纏っている。メーターは「F」専用のアナログスピードメーター+TFT式メーター&マルチファンクションディスプレイの組み合わせが新たに設計された。
TFT式メーターはドライブモードによって表示内容を変更し、タコメーター表示時にはLFAを彷彿とさせるスパイ針機能が働く。マルチファンクションディスプレイにはGメーターやラップタイマー、ナビゲーションが表示可能。「F sport」専用メーターとは異なり、メーターが稼働して遮ってしまうようなことはなく、一度に多くの情報を表示することができる。インパネにビルトインされた7インチSDナビゲーションは16年モデル以降では「NAVI・AVS」機能に対応。ナビゲーションが直後に走行するであろう道路のコーナー情報を処理して予め電子制御ダンパーを直接制御する新機構を採用した。上質なインテリアを演出するGPS制御アナログクロックを始めに、リモートタッチや静電式エアコンパネル、ドライブモードダイヤルをインパネからセンターコンソールへ向けて配置。ドライバー主体の違和感のない操作性を追求した。高級車として譲れない安全・快適装備も充実している。シートヒーター&ベンチレーションはもちろん、ステアリングヒーター、レーダークルーズコントロール、オートマチックハイビームといった高級・先進装備が多数採用された上、LEXUS Safety Systemが大幅に進化。ブラインドモニターやステアリング制御付き車線逸脱警報、更にはG-Linkと連携し、エアバッグ展開と同時に緊急通報を行うヘルプネットといった次世代の一次・二次安全装備が用意された。楽しく、快適に、速く、安全に、ドライビングの基礎を発展させた精神が宿る、今尚残る「F」の最終型である。
GTにおける収録車種:
Future of "F"
RZ F
レクサスは、2024年初頭から半ばにかけて米国、日本の順で「RZ F」を商標登録した。おそらくレクサス・RZのハイパフォーマンスモデルの名称だと思われる。レクサス・RZはレクサス初のピュアエレクトリック・プラットフォーム「e-TNGA」を採用したSUVであり、ステアバイワイヤや「スピンドルボディ」を特徴とする。現時点でのトップグレード「450e」は、前後に配置されたデュアルモーターをコンピューター制御で左右にトルクスプリット、タイヤにかかる負荷に応じて4輪全てを独立制御する「DIRECT4」と呼ばれるパワートレインを採用。システム全体で313馬力を発揮する。RZ Fではこのパフォーマンスにさらなるテコ入れが行われるものだと予測される。RC Fの販売終了が決定した今、レクサス・Fのラインナップはフラッグシップ不在というかなり寂しい事になっている。レクサス・FのDNAを継ぐ次世代モデルとして、期待が高まる1台だ。
LFA II
巷でその存在が噂になっており、いよいよ現実味を帯びてきた新型フラッグシップ。「LFA II」はあくまで仮称だが、新たなトップモデルとしてその性能はかなりハイレベル。ハイブリッド機構付き4L V8ツインターボエンジンが推定800-900馬力を発揮するものと思われる。
マセラティ
イタリアに居を構える老舗の高級車ブランド。フェラーリ・エンツォと血を分かつ、同社のスーパースポーツ・MC12が2000年代後半のGT選手権を総ナメにした事実は記憶に新しい。創業は1914年。ハイパワーなエンジンと中庸な足廻り、快適な室内と美しいデザインが売りの、スポーツとラグジュアリーを両立した、それこそ「グランツーリスモ」にカテゴライズされるような車種を中心に展開している。特に1981年に発売された「ビトゥルボ」は、強力なエンジンと豪奢な内装がアッパークラスに受け、大ヒットを記録した。この車によって「高級車=アナログ・クロックを備えた車」と「イタリア車=すぐブッ壊れる」という2つの図式が世に広まっていった。
エンブレムは創業の地・ボローニャの名所「マッジョーレ広場」の噴水に立つネプチューン像が右手に持つ三叉槍、もといトライデントを元に、マセラティ兄弟の中で唯一芸術の道に進んだ五男の「マリオ・マセラティ」によってデザインされたもの。
Gran Turismo S
ボディタイプ
2ドアノッチバック
排気量及び形式
4.7L V8
最高出力(PS)
440
車両重量(KG)
1950
駆動方式
FR
販売価格(万円)
1750
公称最高速度
295km/h
0-100km/h加速
4.9s
クアトロポルテをベースに、大人4人が快適に移動できるスポーツクーペとして企画された「グラントゥーリズモ」だが、ここにフェラーリが持つノウハウを徹底的に注ぎ込んで俊足マシンと化した「グラントゥーリズモS」だと、その雰囲気がほんのり変わる。語弊を恐れず言うならばそれはもう「4シーター・フェラーリ」だ。フェラーリ・F430に搭載される4.3L V8をベースに、4.7Lへボアアップしたパワーユニット(アルファ8Cと共有)はフロントミッドへマウントされ、リアアクスルに組み込まれた6速セミAT「F1マチック」(マセラティ社内では「カンビオコルサ」と呼ばれる)を通じて後輪へ440馬力を伝える。コルベットやGTRといった第一級スポーツカーと同じドライブトレイン・レイアウトは、フロントエンジンながら前後重量配分を47:53という若干のリアヘビーに仕上げている。これにより、標準装備のスチールサスペンションでもフロントの振動数を極端に上げる必要が無く、身のこなしが軽いリニアな操縦感とフラットライドを共存させている。ブレーキシステムはブレンボ製の大径ディスクにアップグレード。特にフロントには6ポッドのカラードキャリパーが備わり、制動力に信頼感をもたらしている。ボディワークにベースモデルと大幅な違いは無いものの、ヘッドライトがブラックアウトした上でサイドスカートやスポイラー付きトランクリッドが備わり、大径2連エキゾーストパイプを奢ったエクステリアは威圧感マシマシだ。本革とアルカンターラを組み合わせた専用スポーツシートに出迎えられてインテリアを覗くと、マセラティ伝統の披針形のクロックが光るインパネから後席センターコンソールにかけてシンメトリーでエレガントな空間が広がる。ドライブモードセレクターを「スポーツ」に切り替えれば、エンジンやトランスミッションのプログラムが変化し、たちまち本性を顕にする。「MCシフト」と呼ばれる、0.1秒での変速を可能にする専用プログラムと、NAながらバブリングを起こすセッティングに切り替わるECUがドライバーを高揚感の境地へ誘うのは想像に難くない。メータークラスター中央に備わるフルカラーディスプレイはF1さながらの視認性を持つシフトインジケーターを表示。車全体で全開走行さえサポートする。優雅なグランドツーリングからサーキットのスポーツドライビングまで、ひたすらに「走り」を追求したその姿を、現代のグランツーリスモと呼ばずして何と呼べようか。
GTにおける収録車種:
トロフェオ
ベースモデルでも非常に高いポテンシャルを誇るマセラティの中でも、より究極的な運動性能を追求したトップモデル。ここ10年で使われるようになった名称で、フェラーリ傘下時代の名残から搭載エンジンに生粋のフェラーリ製V8エンジンを選定(一応、グランドツアラーとしての性格付け及びヒエラルキーの統制を目的に、フェラーリ純血のフラットプレーンクランクではなく、クロスプレーンクランクが採用される)。マセラティの代名詞・3連ベントも赤色のアクセントカラーが加わったりと、エアロこそ控えめながらスポーティな印象を随所から受ける仕上がりとなっている。
QuattroPorte Trofeo
ボディタイプ
4ドアノッチバック
排気量及び形式
3.8L V8 TwinT/C
最高出力(PS)
580
車両重量(KG)
2130
駆動方式
FR
販売価格(万円)
2560-
公称最高速度
326km/h
0-100km/h加速
4.2s
2013年、半世紀の歴史を持つマセラティのフラッグシップ4ドアセダン・クアトロポルテは6代目へ移行した。ダウンサイジングの流れでベーストリムは軒並みV6ツインターボになった一方で、ハイパフォーマンスモデル「GT S」はフェラーリV8を維持。そんなGT Sを更に昇華させたクアトロポルテ・トロフェオこそが、創業以来守り続けてきた「スポーツ」と「ラグジュアリー」の融合、それをマセラティが考える理想に限りなく近い位置で実現した究極のクルマなのだ。トロフェオが誇るフェラーリ製3.8L V8 ツインターボエンジンが生み出す580馬力のパワーを8段トルコン式ATを介して後輪へ伝えるドライブトレインは文句無しのパフォーマンスを披露し、センターコンソールのドライブモードダイヤルを「Corsa」に傾ければ2トン超の重量級ボディをも軽々と振り回す。バネ下重量を減らす鍛造アルミホイールと、全域で抜群のスタビリティを誇る無段階電子制御ダンパーが突き上げ感やロール・ピッチを抑圧したドライバーファーストな走りを実現し、機械式LSDと前後ドリルドVディスクブレーキがアグレッシブなコーナリングを可能にした。決して過激ではないが、凡庸さを微塵も見せないこの走りはこのクラスのセダンでは貴重だ。3mを超えるホイールベースが生み出す広大な室内空間は、どの席の人間にも窮屈を強いることが無い。サイドウィンドウにもアコースティックガラスを使い、外界と隔絶された空間はレザーやメタル、カーボンパネルを惜しむこと無く使った贅沢且つレーシーな設えだ。マセラティの定番とも言える披針形クロックの直下には、デジタル時代の到来を主張する大型スクリーンが備わり、ナビゲーションやスマホ連携機能、各種A/Vを楽しむことができる。ルーフにはチルト・スライド機構付きのサンルーフが、リアウィンドウには電動式ブラインドがそれぞれ備わり、空間の演出さえ自在に操ることができる。電動トランクリッドを開くと広がる530Lもの広大なトランクルームには、驚くべきことにコンパクトながらスペアタイヤも積まれており、あくまで車は人を運ぶものという至上命題にキッチリ則っているように感じるだろう。走りだけでは無く、快適性も犠牲にしない。この精神を余すこと無く体現したクアトロポルテ・トロフェオはベースモデルと共に2023年に生産完了。マセラティ・フラッグシップ・クアトロポルテの60年に及ぶ歴史は幕を閉じた。同時にV8も以降マセラティ車に載ることはなく、これからはV6ツインターボエンジン「ネットゥーノ」がこの座を担う事になっている。時代の進歩は素晴らしいが、草葉の陰からそれを見守る先達もまた、独特の美徳を持っていた筈だ。V8マセラティの精神も、その一つといえる。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
Levante Trofeo
ボディタイプ
5ドアフルサイズSUV
排気量及び形式
3.8L V8 TwinT/C
最高出力(PS)
590
車両重量(KG)
2340
駆動方式
4WD
販売価格(万円)
1990-
公称最高速度
304km/h
0-100km/h加速
3.9s
本記事の冒頭で述べた通り、人類は進化を辞めない車に対して新たな価値観を持ち込んできた。人間の欲望に沿って価値観が細分され、多様化した現代でも、それらをまとめて具現化したような車というものが確かに存在している。このレヴァンテ・トロフェオもその一つだ。イタリアの誇るクラフトマンシップが紡ぎ出す繊細な内装や大胆なデザインを持つクロスオーバーに、マラネロの気概とも言える跳ね馬の心臓が迎え入れられれば、かつて無い興奮と感動が生まれるのは言うに及ばない話だ。とはいえ、FRベースのオン・デマンド式4WDシステムを持つレヴァンテのドライブトレインにフェラーリV8を組み合わせるには一工夫が要ったようだ。結果として8速ATをオーソドックスにフライホイール直後に配置し、必要に応じて前輪へトルクスプリットする3.8L V8ツインターボエンジンは専用チューニングで590馬力を炸裂させる。そのパワーは2.3tもの重量を持つ巨体をものともせず、カイエンターボSを超える最高速度304km/hをマークする。この領域に到達できるSUVは片手で数える程しか無く、ランボルギーニ・ウルスに並ぶ動力性能と言えるのだ。その圧倒的運動量を支える足廻りにはエアサスペンションを採用。室内からの操作で6段階の車高調整や減衰力の調整が可能。ドライブモードに「Corsa」を選択すればロールが消えたアグレッシブな走りに変貌する。ブレーキシステムにはブレンボ製を選定し、F6・R4ポッドの大容量キャリパーとドリルドディスクローター(リアは通常のVディスク)が連続したハードブレーキングと急制動にミスなく応える。更には専用プログラムのマルチchABSがブレーキ制御のトルクベクタリングを実現し、LSDとの相乗効果で高速かつ追従性の高いコーナリングを可能にした。エクステリアには専用装備としてカーボンスプリッターや専用バンパー、4本出しエキゾーストパイプやエアアウトレット付きアルミボンネット等が備わり、細部でその稀有な走りを主張するも、マセラティらしく全体で見れば直線と曲線、柔と剛が組み合わさったエレガントなデザインだ。「ピエノ フィオーレ プレミアム フルグレーンレザー」とかいう、コース料理の様な名前を持つ高級本革で仕立て上げられた鮮やかなロッソのインテリアは、リアルメタルやカーボンパネルとの組み合わせでレーシーかつラグジュアリーな空間を演出する。お決まりのマセラティ・クロックはダッシュボード中央に鎮座し、インパネには8.4インチのインフォテインメントシステムが備わる。マセラティが手にした新たな武器、ADAS(PCS・LDA・BSM・LSA・サラウンドビューカメラ・アダプティブハイビーム等)はここで制御できるようになっている。350キロスケールのスピードメーターとパノラマサンルーフが同居する、グランドツアラー特有の奇怪な室内空間の後方にはSUVならではの大型ラゲッジルームが存在している。電動開閉・トランクスルー可能な580Lもの広大なスペースはちょっとした家具も積めるほど。日常生活では持て余すだろう。無駄、過剰、余計、大いに結構。「マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ」とはそういう車である。その気になればきちんと応えてくれるし、そうでないならば余裕の表情で受け入れてくれる。本革のリアシートへ荷物を投げ出してパノラマサンルーフを開け放ち、7000回転を許容するフェラーリV8をせいぜいタコメーターが「2」を指す程度に回して何処へでも行ける。本当の「自由」とはこういうものだ。
GTシリーズには未だ収録されていない。これからに期待したい。
アルファロメオ
イタリアを代表する高級車であると共に、高性能車を中心にラインナップしたスポーティな性格のブランド。90年代のドイツ・ツーリングカー選手権での暴れぶりなどモータースポーツでの活躍も記憶している方も多いではなかろうか。創業は1910年。草創期からモータースポーツで数多くの栄光を掴んだ。後にスーパーカーの代名詞「フェラーリ」を興すエンツォ・フェラーリを擁していたメーカーであり、彼が自分の名を冠したレースカーでアルファを打ち倒した際に残した「私は自分の母親を殺してしまった」という言葉は有名だ。
エンブレムは創業の地・ミラノの紋章である聖ゲオルギウス十字に、ミラノを長年に渡って治めていたヴィスコンティ家の家紋を組み合わせたもの。この家紋にはイスラム教徒を呑み込む大蛇「ビショーネ」が描かれており、アルファロメオはこのビショーネをブランドのマスコット的な立ち位置に置いている。可愛らしい縫いぐるみも売っているので、アルファ乗りの方は是非とも使わないシートベルトにでも彼らを巻き付けてあげよう。
クアドリフォリオ
アルファロメオのシリーズ中最高の性能を誇るトップグレードのみが冠するグレード名。あるいは、グレード名に「GTA」や「TI」を名乗る車種でも、フロントフェンダーに四つ葉のクローバーのエンブレム(クアドリフォリオ ヴェルデ)があれば、そのクルマはクアドリフォリオの一種と言えよう。
クアドリフォリオの最大の特徴は、他社に類を見ないその「成り立ち」にある。1923年のこと、タルガ・フローリオという格式高いレースに参加する際にアルファロメオは「RL」と呼ばれるレースカーをエンツォ含む4人のドライバーに託した。その中でもエンツォの友人であったヴーゴ・シヴォッチは、技術に定評はあったがとにかくツイてない男であり、自分の運のなさを憂いてマシンに幸運の四葉のクローバー「クアドリフォリオ」のマークを記した。マドニエジオパークを駆ける幸運の四葉を掲げたアルファは順調にレースを進行し、結果シヴォッチは見事優勝。ところが数カ月後、シヴォッチに悲劇が起こる。ヨーロッパGPのプラクティスで訪れていたモンツァでシヴォッチはクラッシュを引き起こし、帰らぬ人となってしまった。この時彼が駆っていたアルファP1には塗装上の問題でクアドリフォリオは付いていなかった。これら一連の出来事でクアドリフォリオの思し召しを無視出来なくなったアルファロメオは、以降自社ワークスのレースカー全てにクアドリフォリオを掲げた。四角形から三角形になったベースマークは、シヴォッチが欠けたことに対する追悼の意を示している。
後にアルファロメオは1963年に発売したジュリア・TIスーパーにクアドリフォリオを刻んだ。幸運の四葉のクローバーはアルファロメオのスポーツマインドを象徴するアイコンとして、今日でもフロントフェンダーで輝きを帯びている。
ジャガー・ランドローバー
ジャガー・ランドローバー共に英国の高級車メーカーである。あのイギリス王室も御用達のメーカーだと聞けばその品格の高さは頷けるはず。ジャガーは1922年のジャガー・カーズ設立以来、ロードカーを中心とするラインナップを展開する一方で、ランドローバーは1948年にローバー・モーターがオフロード用の車両として「ランドローバー・シリーズⅠ」を発表した事に起源を持ち、オフロード向け四輪駆動車を製造していた。同社は20世紀末から21世紀にかけてフォードに買収された後、さらにインドのタタ・モータースに買収され、2008年よりジャガーランドローバーとして合併された経緯を持つ。
ジャガーのエンブレムは文字通り動物のジャガーを模したもの。疾走感や力強さを表現したエンブレムとして、かつてはボンネットに鎮座していたが安全基準への適合により撤廃された。
ランドローバーのエンブレムは緑地にシンプルに文字を配したもの。伝統的にボディ中央からオフセットされるのが特徴。
SVR
編集用
以下【】内テンプレ
【
ここに車名を入力
〜キャッチコピーを入力〜
ボディタイプ
xxx
排気量及び形式
xxxxcc xx
最高出力(PS)
xxx
車両重量(KG)
xxx
駆動方式
xxx
販売価格(万円)
xxx
公称最高速度
xxxkm/h
0-100km/h加速
xxxs
ここに解説を入力
GTにおける収録車種:
】
注意点
最高出力はPS表記。特にBHPとの混同注意!
駆動方式は「エンジン搭載位置」+「駆動輪」の順で記載。
エンジン搭載位置について
F【フロント】:運転席直下以前部。フロントミッドシップのシボレー・コルベットや、キャブオーバーのトヨタハイエースもこれに該当。
M【ミッドシップ】:運転席後方以降から後輪軸まで。横置きの場合はクランクシャフトの位置で決定。
R【リア】:後輪軸後方。
駆動輪について
F【フロント】:前輪駆動。この場合実質的にFFのみ。
R【リア】:後輪駆動。
4WD:四輪駆動。エンジン搭載位置と合わせて記載。フロントエンジンならF4WD等。
販売価格は国内仕様車の新車当時の価格を記載。正規輸入がない場合はグランツーリスモシリーズにおける価格を記載。いずれも該当しない場合は空欄あるいは本国における新車価格を記載(この場合通貨はその国に合わせる)。
公称最高速度はあくまで公称値。ゲーム内の数値や個人計測による数値は望ましくない。
コメント
気が向いたら追加するので、よろしければ好きな車種でも書いていって下さい^^ -- (名無しさん) 2024-12-19 15:02:31
RC Fが生産終了だと知ってショックを受けた -- (名無しさん) 2024-12-21 10:24:22
レクサスの本当の凄さはセダンじゃないと分からないと思うんだけど、あいにくGT7にはない…。 -- (名無しさん) 2024-12-21 18:40:02
IS Fとか復活してほしい。いや、今ならIS500とかかな?何なら350でもいい -- (名無しさん) 2024-12-21 18:52:04
CTS-Vはサブディビジョンサーフェスモデル持ってるんだし、出来ればすぐにでも復活してもらえたら嬉しいんだけどなぁ -- (Ryoki350) 2024-12-29 20:14:47