私は刻久悠
現在20歳だがノスフェラトゥのおかげで11歳のときの姿から見た目は変わっていない
こんなことになったのは今から12年前、私が8歳のときだ
両親が以前勤めていたG.E.H.E.N.A.の職員に希少なレアスキルであるカリスマ持ちという理由で拉致され監禁
様々な強化を施され道具として3年間扱われてきた
私は元々のポテンシャルが高かったため付与されていった能力に対して拒絶反応を起こさず全て自分の力として順応させていった
その際欲をかいた職員が危険なノスフェラトゥまでもを私に付与した
一瞬拒絶反応を起こしたが私はそれに適応
スキラー数値が自分でも把握出来ないぐらい上昇した
カリスマはラプラスとなり付与された数々の能力のおかげでサブスキルは全てレアスキルとまではいかないもののそれと同等の力を使用することが可能になり
おまけに記憶操作という異能まで手に入れてしまった
こんな規格外の少女が普通の人間と呼べるだろうか…
私は施設の人間によって人であることを辞めさせられたのだ
でもそのおかげで私は地獄から抜け出すことが出来た
抜け出す前に覗いたデータベースに私の家族に関するデータを発見した
両親と妹…刻久 悠依だ
私が拉致された1年後に両親はゲヘナ関係の組織に殺害され、妹はその光景を目撃、ユーバーザインを発動させ抵抗するものの組織の幹部淡島によって拉致、以後殺しの道具として働かされていることが判明した
私はG.E.H.E.N.A.関係の組織を片っ端から潰して回った
まだ生きている残されたたった1人の家族である妹を地獄から救い出すために…
そんな日々を過ごして半年が経った頃、ようやく妹が所属している組織の情報を手に入れた
私は今すぐにでも妹を救い出したかったが突入した際に妹と鉢合わせて戦闘になることは絶対に避けたかった
なので私は妹が任務に出撃してる隙を狙って組織に乗り込むことにした
入口付近に大柄な男が2人立っている
私は姿を消し近付きCHARMで首を跳ねて一瞬で無力化した
建物に入るとすぐ警報がなった
どうやら警備に関してはとても厳重だったようだ
1階に人の気配は感じない
恐らく2階で待ち構えているのだろう
私は2階へと上がった
踊り場を越えた先で組織の人間たちが待ち構えていた
「おいおい、こんなチビが組織を潰し回ってる悪魔だって?笑っちまうぜ!」
私の姿を見たやつらは一斉に笑い出した
「あら…?首を跳ねられて笑ってる余裕があるんですね…」
「え…」
私は最前列にいた数人の男の首を跳ねた
「やっちまえ!!!!」
その掛け声と共に私に向かって一斉に銃弾が放たれる
私は銃弾を全て弾きその場にいたやつらおよそ50人を1人残らず無力化した
その後も遭遇した組織の人間を無力化していきようやく7階にある淡島の部屋まで辿り着いた
体は返り血で真っ赤に染まってしまった
部屋の前に立つと
「入れよ」
と中から声をかけられる
私は部屋の中へ入る
部屋の奥に椅子に座って煙草を吸っている男がいた
「ごきげんよう、貴方がここの責任者かしら?」
「そうだ、俺がこの組織を任されてる淡島ってもんだ。随分派手にやってくれたみたいだな、まぁ座れや」
淡島が椅子に座るよう促してくる
私はそれに応じた
「お前リリィだな、それもかなり強化されてる」
「あら…貴方は強化リリィに関して詳しいのかしら?」
「まぁな、前に施設で警備をしていたから知識はある」
なるほど…
この男は姿を消した悠依の力を知っていて、それを利用して悠依を道具として使っていたということね
「私の要件は…」
「俺が使ってるガキのことだろ」
「察しがよろしいのですね」
「お前とあいつの容姿は似てねぇけどその気に食わねぇ目はあのガキによく似てる、姉妹か何かだろ」
「そうですわね、姉ですわ」
「まぁ大人しくしてりゃ姉妹揃って俺がこき使ってやるから安心しろよ」
「あらあら…貴方は立場が分かっていないようですね?私を部屋に入れた時点で貴方は終わっているのですよ」
私は淡島をバカにしたような言い方で挑発した
「なんだと?ガキが舐めてんじゃねぇぞ!!!」
淡島が私に蹴りを入れてくるが私はそれを同じモーションで蹴りを放ち止める
「て、てめぇ…!!」
逆上した淡島が銃を撃ってくる
私は銃弾を躱して淡島に近付いていく
「く、くるな!!てめぇナニモンだよ!!!」
「私は刻久悠、施設で様々な強化を施されて人間を辞めさせられたリリィ…。さて本題に入りましょうか、あの子はいまどこにいるのかしら?」
「お前みたいなやつがいるなんて施設からは何も聞いてないぞ!!!なんなんだお前は!!」
「ワタクシが聞いてるのはあの子がどこにいるのかということなんですけど、答える気がないのならその何もない頭を切り開いて脳を直接調べることになるかしらね…」
ガチャ…
扉が開く
怯えた表情で少女が中に入ってくる
悠依だ…
それに気付いた淡島が悠依に向かって何か叫んでいる
「うるさい…」
ヒュン
私は淡島の首を跳ねて黙らせた
淡島の首が悠依の元へ転がっていく
「こ、来ないで!!!」
悠依の姿が消えた
気配察知…
そこね
私は悠依に向かって歩いていく
「悠依…いままで怖いことをさせてごめんなさいね…私がもっと早く気付いてあげていたら……」
「お、おねえ…ちゃん……?なんでお姉ちゃんが…?だって…お姉ちゃんは……!」
悠依はずっと行方不明だった私が突然目の前に現れたことによって混乱していた
「悠依…あなたはもう何も考えなくていいのよ、いまはゆっくりおやすみなさい…」
私は悠依の額に手を当て意識を閉じる
この子はこの数年間地獄のような日々を送ってきた
もうそんなこととは無縁になってほしい
今までの記憶を封印しよう…
自分の名前以外の記憶を全て…
私は悠依のこれまでの記憶を全て封印した
そして悠依を抱えて組織を後にした
組織を潰し回っていた際少しの間お世話になった孤児院に悠依を連れていき保護してもらった
ここの人たちなら安心だろう
だってここは反G.E.H.E.N.A.派の孤児院だ
それに設立者夫妻はとても良い人たちだった
あわよくば悠依を引き取って貰ってこの闇とは無縁の世界で育てて欲しい…
そんな願いを胸に秘めて私は孤児院から旅立った
これから先はどうしよう…
悠依を救い出すのを目標にしてきた私はこれから何をすればいいんだろう…
その時1羽の鳥が私の目の前を横切っていった
あぁ…あの鳥は凄く自由に空を駆けていく…
なんのしがらみもなく自分の好きなように…
そうか…私もこれからは自由に過ごしていいんだ…
やりたかったこと全部やっていこう
それから私は8年間各地を旅して回った
その間にも色んな幸不幸を見てきた
性別が変わり人生を楽しんでいる子、大切な人を亡くしてリリィとして覚醒した子、祖父の病に最後まで付き添い泣いている子…
あの子はいまどうしてるだろうか…
私は悠依のことを思い出し孤児院を訪れることにした
どうやら悠依は私が願った通り夫妻に引き取られて大切に育てられているようだ…
良かった…
あの子のあんな笑顔がまた見れるなんて…
この世界には色んな悩みを抱えた子がいる
私はそれを間近で見ていき、救ってあげたい…
あらゆるリリィを保護するガーデン…百合ヶ丘女学院
今後はここを拠点に私は生きていこう
そして悠依と似たような過去を持つ子たちと過ごし、その過去を乗り越える手助けをしてあげよう…
私はその覚悟を胸に百合ヶ丘女学院の地へと足を踏み入れた
|